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企業の姿はIRと知財の両輪から見えてくる ~経営戦略が確実に現場に落とし込まれているか?

IRは経営サイド、特許は開発現場サイドからの情報

投資活動において、企業の姿を知る1次情報は大きく分けると二つあります。一つは企業がオーソライズして公開しているものという意味で一番大きいIR情報。そしてもう一つは特許情報です。

IR情報というのは、基本的にはお金や経営に関することがメインの情報で、経営サイドから出てきているものですね。
一方、特許情報というのは、技術についての情報です。正式なドキュメントにしているのは知財部だと思いますが、元は全部、それを開発したり考えたりしている技術開発の現場から出てきているものです。

企業勤めの方なら経験があるかもしれませんが、会社って意外と経営サイドと現場サイドってかみ合ってなかったりしますよね。なので、投資活動においては、IR情報と特許情報両方から上手く読み解くという作業をするわけです。そうすることで経営サイドが考えていることや、それが現場に降りて予算がついて、研究開発してどうなっていくのかという一連の企業の活動サイクルが見えてきます。
そして、どう現場に落とし込まれているか落とし込まれていないのか、上の人間が知っているのか知らないのか、IRの人間が知っているのか知らないのかなど、読み取った情報と併せてうまくヒアリングしていくと、その会社の実態が分かると思います。

 

特許情報は公開が遅いから意味がない?

IR情報は、決算後、速やかに報告することになっているので、四半期ごとに公開される情報です。
でも、特許は、出願から1年半経たないと公開されません。ここが一つ注意点です。早期審査請求とか早期公開とかいろいろな制度もあるので、必ず1年半後じゃないと公開されないということではありませんが、基本的には出願されてから1年半で公開されて、3年後までに審査請求される、という流れになっています。

このことから「特許はちょっと情報公開が遅いよね」とおっしゃる方もいますが、少なくとも、ここまでに、どういう企業で、どういう人が、どういうことをやってきたかを読み取る上での材料にはなります。それに研究開発は、基本的にやり始めてから短くて3年、長ければ5年10年を経てようやく世の中に出てくるので、1年半後でも情報の使い方によっては意義がある場合もあります。

特許には出願日、Googleで言うとプライオリティーデイという日付が検索できます。だから気にするとしたら、公開された日付を参考にするのではなく、それ、いつ出たの?という出願日のところです。その出願日の前、何カ月前か、何年前かに始めたことが特許になって出てきたんだな、というような流れで考察することです。

 

特許情報の中で注目したいのは「人の情報」

先ほど特許は技術についての情報だとお話ししましたが、もう少し詳細を説明すると、特許情報というのは3つの情報が載っています。「技術の情報」「人の情報」「権利情報」です。

そもそも特許制度とは、一定期間、独占させてあげるから、情報公開してくださいね。公開された情報に基づいてみなさんがもっと先の技術を考えてください、という技術の発展を促す仕組みです。だから本当は企業としては、競争の源泉である大事な部分だから隠しておきたいんだけど、特許にしてくれるならある程度は書きますよ、と公開してくれるものなんですね。なので、技術の情報と、どこを守ってもらいたいかという権利申請書の部分がまずあります。

そして、あまり特許業界の人は注目してないんですけども、僕がもっとも重視しているのが「人の情報」です。その企業の中で本当は極秘にしたい重要な技術をやっている人は誰なんだってことですよね。これが分かることが一番大きいと思っています。
当たり前ですが、特に技術系の企業は、技術によって付加価値を生み出しています。でもその技術は人から出てきますよね。設備から出てくるわけじゃないんです。設備は多分買えばいい。設備が競争力だと言っている会社があったとしても、その設備を作っているのは人ですからね。

 

IR担当者に開発者のことを質問しよう

例えば、朝日インテックは、ワイヤーのより機というのを自社開発しています。それを作っている子会社を完全に買収して自分の会社にされました。ということは、そこがめちゃ大事だっていう意思表示なんです。それが分かったら、それやってんの誰なんだ?ってことを調べるわけです。

そこまで調べたら、「その人、今、その会社にいるんですか?」ということを朝日インテックのIRの方に聞くべきです。それで、例えばですよ、「出世して技術本部長になっています」と言われたら、やっぱりいい技術だったんだと確信できますよね。「お宅の会社もいい会社ですね、いい発明した人にちゃんと報いているんですね、どんどんやってください」なんて話ができるわけです。
逆に「その人辞めました」とか、「中国の会社に引き抜かれました」なんて多分言わないと思いますけど(笑)、そんな答えが返ってきたら、それって技術漏れてんじゃないかと考えられますよね。

結局、誰がその大事な仕事をやっているか、その人たちにいい環境が与えられていて継続的に技術開発がされているかを見ないと、次も、その次も良い製品が出るかどうか分かない。僕はそう考えます。
だから、持続的にイノベーションが起こる仕組みが会社の中にあるかどうかを判断するための手がかりとして、特に投資家の方には「人の情報」にぜひ注目してほしいと思います。

語り:楠浦崇央(弊社代表)
構成:鈴木素子

 

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