・・・ e発明塾通信 vol.782(2020年11月30日号)
「「「 サステナブルな道路を「バイオ」「自己修復」で実現する知られざる日本企業 「「「
おはようございます、「発明塾」塾長の楠浦です。
本日は、過去に発明塾や本メール講義で取りあげた
「エッジ」
が効いた情報(エッジ情報)の続報、関連情報を取りあげます。
ご紹介したいのは、會澤高圧コンクリート という企業です。
業界では著名な企業ですが、ニッチな業界ですので、知られざる、といたしました。
非常に「オモロい」企業です。
以下記事をご参照ください。
道路補修工事がなくなる!?「自己治癒するコンクリート&アスファルト」のすごい効果
https://emira-t.jp/special/14802/
自己治癒する材料は、自己修復材料、などと呼ばれ、例えば最近では、クルマの塗装に使われています。
簡単にいうと、
「キズがついても、元に戻りますよ」
という塗装です。
しかし、自己修復材料という言葉を聞いたことがあるよ、という方も
「コンクリートやアスファルト」
で、というのは初めてかもしれません。
コンクリートの製造過程では、実は、大量のCO2が出ます。
また、建造物の維持管理にも、大量のエネルギーが必要です。
こういった課題を解決するために、生み出されたのが、自己治癒するコンクリートです。
どのようなものか、見てみましょう。
以下、記事からの抜粋引用です。
「研究によって生み出されたバクテリア「Basilisk HA」(以下、バジリスクHA)は、普段、胞子に包まれコンクリートの中で休眠している。しかし、コンクリートにひびが入ると目を覚まし、周辺にある乳酸カルシウムを分解して石灰石を生成していく。」
分かりやすく説明すると、コンクリートの成分である石灰石を作り出してくれるバクテリアを、コンクリートに入れておく、というものです。
バクテリアは、水と酸素に触れると目を覚ますそうですので、コンクリートが無傷な時は休眠しており、ひびが入ると目を覚まして補修してくれる、そんなウソのような本当の話を実現した、ということです。
既に、一部実用化され、販売されています。
もっと詳しく知りたい方のために、パンフレットと特許のURLを以下に記載しておきます。
「自己治癒型補修モルタル」のパンフレット
https://www.aizawa-group.co.jp/home/wp-content/uploads/2016/03/Basilisk_MR3.pdf
関連特許
https://patents.google.com/patent/JP2016034898A/
特許は、共同研究先であるオランダ・デルフト工科大学の Jonkers 博士のものです。
上記特許の
「被引用」
に、Biomaison 社の特許が多数出てきます。
Biomaison 社は、コンクリートの修復ではなく
「コンクリート製造を、細菌の力で行う」
という
「バイオファブリケーション」(細胞や細菌を使ってモノづくりをすること)
の企業です。
修復ができるのだから、製造もできるはず、と思ったら・・・案の定ですね。
バイオファブリケーションについては過去の配信でも取りあげています。
e発明塾通信 vol.578(2019年2月18日号)
バイオファブリケーションの時代 ~ 細胞プリンティング研究者が興した「バイオ人工皮革」ベンチャーに何を見るか
配信では、細胞を培養して作る人工皮革を取りあげました。
培養レザー商品ブランドZOA誕生。実際の動物の革と“ほぼ全く同じ”な培養レザーは動物にも優しい
https://www.gizmodo.jp/2017/10/lab-grown-leather-zoa.html
「それは流石に・・・」
と思っていたものが、次々と、バイオプロセスで
「細胞」
「細菌」
から造られる時代が来るでしょう。
「細胞農業の時代」
と、私は呼んでいます。
「CO2排出をゼロにする」
「循環型社会の実現」
に向けた、
「大きな流れ」
の一つです。
少し脱線しましたが、
「アスファルトの自己修復」
の方も、見ておきましょう。
以下、先の記事からの引用です。
「まず、新たに道路を敷設する際に、アスファルト混合物(舗装用材料の総称)の中にアスファルト(接着剤の役割)を再活性させるカプセルとスチールファイバーを混ぜる。再活性カプセルの中には、アスファルトを柔軟にするオイルが入っており、小さなひび割れなど初期の劣化は、このカプセルによって修復される。」
こちらは、細菌ではなく、カプセルに封入したオイルにより、アスファルトを柔らかくして修復するようです。
記事では、 本格的な修復の際には
「路面を加熱する車両」
を用いて、修復を行うとしています。
補修が必要なところへ移動して、自己修復アスファルトを塗布して、加熱補修する。
この先はそんなロボットになるのでは、とイメージが湧きます。
「道路を修理する自走式プリンター/工作機械」
のようなイメージもできます。
未来のインフラ修理ロボットは、プリンター・工作機械とロボットの融合ですね。
いずれにせよ、従来の路面修復工事に比べ大幅に工事が簡略化されます。
渋滞の解消はもちろん、インフラ維持コストの低減に大いに役立つでしょう。
発明塾では、 インフラに関して
「スマート化」(スマートシティへの対応)
だけではなく
「レジリエント化」(レジリエンスは、復元力・回復力を意味する)
の視点でも、発明や新規事業を検討しましょう、とお話ししています。
発明により、自分たちが創りたい未来を創る。
新規事業で、自分たちの「よりよい未来」を、自分たちで切り拓く。
それが、発明塾の考え方です。
仕事とは、そういうものだ、というのが私の、そして、発明塾の考え方です。
皆さんも、自分たち、そして、後に続く世代の明るい未来のために
「スマートで強靭な都市・インフラ」
について、考えてみませんか。
楠浦 拝
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