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e発明塾通信 vol.801(2021年2月15日号)ぶつかっても壊れないクルマができる~「虫」と「シャコ」に学び「耐衝撃」素材を生み出せ!

e発明塾通信・・・ e発明塾通信 vol.801(2021年2月15日号)

 

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おはようございます、「発明塾」塾長の楠浦です。

今回は、801号です。

気持ちを新たにして、引き続き、お届けしていきます。


今回は、

「軽くて、強い」

を実現する新素材のお話しです。


過去、強くて軽い材料について、以下の配信で取りあげています。


e発明塾通信 vol.687(2019年12月9日号)
「生物」に学ぶ「3Dプリンティング」スタートアップ~ 3Dプリンター「でしか」できないこと
https://note.com/ehatsumeijuku/n/ncf4bff328282


今回取りあげるのは、以下の記事です。
昆虫の画像が掲載されていますので、虫嫌いの方は、ご注意ください。


自動車にひかれても潰れない甲虫! 外骨格の頑強さの秘密を農工大等が解明
https://news.mynavi.jp/article/20201025-1434382/


研究成果が発表されている論文誌「ネイチャー」の動画サイトには、

「トラック」

にひかれても、びくともしない甲虫の様子が紹介されています。


この虫をヒントに、

「ぶつかっても、壊れないクルマ」

ができるかもしれません。


甲虫とは、カブトムシのような、かたい殻をもつ昆虫を指します。

記事で紹介されているのは

「ゴミムシダマシ」

という甲虫です。


概要がわかる部分を、記事から抜粋引用しておきます。


==抜粋引用、ここから

自動車や航空機などの乗り物は省エネルギーの観点から、軽量であることが求められる。

しかし、単に素材を薄くしたり材料の点数を減らすだけでは強度を維持できないため、軽量かつ頑強な新素材と構造が求められている。
このような矛盾する要求に対する参考として、生物から学ぶ生体模倣技術が近年注目されている。

この軽量かつ頑強な素材や構造を開発するのに、参考としてうってつけの生物が、カブトムシやクワガタムシに代表される甲虫だ。

現在、甲虫は地球上に35万種以上が存在するといわれ、それぞれ厳しい自然環境に適応するため、進化の過程で多様な構造や物性を持つ外骨格を発達させてきた。
この外骨格が、新規の材料デザインの宝庫として注目されているのである。

==抜粋引用、ここまで


カブトムシ(?)の研究が

「軽量高強度な新素材」

の開発につながるとは、、、オモロいですね。


ゴミムシダマシの強さの秘訣は、一つは、殻の接続部の構造にあるのですが、

「材料」
「組成」

にも、秘密があるようです。

材料に関する部分を、以下に抜粋引用しておきます。


==抜粋引用、ここから

外骨格に含まれる有機物の組成の解析も行われた。

すると、異種の甲虫である「ニホンカブトムシ」(Trypoxylus dichotomus)と比べ、タンパク質の割合が約10%多く含まれていることが確認された。

この組成が、外骨格に頑強性を与えている理由だと考えられるという。

また、特殊な構造の形成そのものにもタンパク質が関与している可能性があるとした。
P.diabolicusは、進化の過程で防御手段としてこのような特殊な構造や組成を持つ外骨格を発達させてきたことが考えられるとしている。

==抜粋引用、ここまで


「タンパク質」

が多く含まれることで、他の甲虫よりも強くなっている可能性があるとのこと。

タンパク質自体が固いわけではないでしょうから、面白い現象ですね。


この研究をしている研究者の方に、興味が湧いてきました。

調べると、

「David Kisailus 教授」

が、今回の研究成果のキーマンだとわかりました。


大学のHPに、

「省エネルギー、あるいは、エネルギー貯蔵のための新素材」

に関する、UNESCOプログラムのメンバー、とあります。

私も、大学院で

「エネルギー工学」

を専攻し、金属材料の研究を行っていましたが、昆虫を研究するところまでは
思い至りませんでした。


Googleで論文を調べると、他にも、類似の研究成果が発表されていることがわかります。

David Kisailus 教授 の論文リスト
https://scholar.google.com/citations?hl=ja&user=aDscrHYAAAAJ&view_op=list_works&sortby=pubdate


目に留まった論文の一つに

「シャコ」

についてのものがあります。

Modulation of impact energy dissipation in biomimetic helicoidal composites
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2238785420319104#fig1

非常に興味深い記載がありますので、お付き合いください。

例によって英語ですが、ご安心ください。
後で日本語解説いたします。


==抜粋引用、ここから

Some possible alternatives include traditional polymer fibers that have high extensibility and provide sufficient toughness. Notably, aramid (e.g., Kevlar) or high-density polyethylene (e.g., Innegra) fibers are featured in armor vests that effectively stop low caliber bullets from handguns (i.e., NIJ complaint Type IIA – IIIA)

Many of these composites use a traditional quasi-isotropic design, which features a stacking sequence of [0/−45°/45°/90°]3s. However, this fiber and stacking sequence often lacks sufficient toughness for applications that require prevention of through thickness damage.

==抜粋引用、ここまで


「防弾チョッキ」

の素材として、

「アラミド繊維」

と呼ばれる、高強度な繊維(要するに糸です)が使われています。


難しい話をしても仕方ありません。

防弾チョッキの中には、アラミド繊維の

「糸」

が詰め込まれている、とお考え下さい。

こうすることで、軽さと強さを持たせているのです。

防弾チョッキですから、身につけて、動き回れないといけません。


ご参考のため、

「防弾」

素材が掲載されたHPを、一つ紹介しておきます。

防弾パネル
https://www.roechling-industrial.com/jp/%E8%A3%BD%E5%93%81/%E8%A4%87%E5%90%88%E5%93%81/gfrp-cfrp/%E9%98%B2%E5%BC%BE%E3%83%91%E3%83%8D%E3%83%AB


防弾性能がある

「木材」

も、あるんですね。

映画などでよく、銃撃戦をテーブルでかわす、なんてシーンがありますが、これなら、
長時間の銃撃戦にも、持ちこたえられそうです(笑


防弾用途に限らず、一般的に

「繊維強化プラスチック」

と呼ばれる、強い糸と樹脂を組み合わせて、軽量高強度な素材を作る場合、
均一な強さを持たせるために、糸を

「縦、横、斜め」

に配置するとよい、とされています。

最近では、

「炭素繊維強化プラスチック」(CFRP)

が、航空機や自動車に広く用いられるなど、用途はどんどん拡大しています。


ただ、課題があるようです。

それは

「厚み方向の衝撃吸収の能力が弱い」

ことだ、と論文に書かれています。


それを解決するヒントが

「シャコ」(甲殻類です)

にあります。

シャコの

「腕(うで)」

の部分は、

「軽量、高強度、耐衝撃」

を兼ね備えた構造になっています。


ちなみに

「シャコのパンチ」

は強烈だそうです。

脅威の破壊力を持つシャコパンチを繰り出すシャコの秘密に迫る
https://www.excite.co.jp/news/article/Karapaia_52294111/


こうなると、シャコの腕が壊れない理由、つまり、耐衝撃性の秘密が、ますます知りたいですね。

耐衝撃性の秘密の一つは、

「構造を強化する繊維が、らせん状に配置されている」

ことのようです。

詳細は割愛しますが、この

「らせん構造」

により、繊維強化プラスチックの衝撃吸収能力が高まることが、論文で示されています。


また、シャコの腕の表面を覆っている

「アパタイト」

のナノ粒子にも、秘密があります。

衝撃を受けたときに、ナノ粒子が巧みに

「ずれ」

をおこし、力を吸収するのです。


「材料」

を組み合わせ、

「適切な構造」

に配置することで、

「軽く、強く、丈夫な」

素材ができる。

そういうことです。


実は発明塾では、10年ほど前に、投資ファンドの要望を受け、防弾チョッキなどに
使える、超軽量・高強度・耐衝撃素材の発明に取り組んでいます。

当時も、生物模倣の考えは取り入れており、魚の鱗など、生物が巧みに、かつ、自然に
作り出す構造が参考にならないか、調べていました。

その時に、ゴミムシダマシや

「シャコ」

のことを知っていれば、、、そう思いました。


そして、私が大学時代に専攻していた

「破壊力学」
「ミクロ組織と強度」

のお話しと、前職で研究していた

「ナノテク」

が繋がった瞬間でした。


このように、いろいろな情報・知識が

「繋がって」

発明は生まれます。


楽しいですね。

楠浦 拝

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