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三井化学のSDGs戦略

三井化学のSDGs戦略 ~化学の力の強みを活かした新規事業の創出事例

本記事では、SDGs(Sustainable Development Goals, 持続可能な開発目標)に関する企業の取り組みとして、三井化学の事例を紹介します。
同社は新規事業創出のスピード感でも投資家の間で評判になっており、社会課題を解決する事業の立ち上げを積極的に行っているようです。

本稿では三井化学の取り組みについて、SDGs目標達成に向けた戦略と、具体的な新規事業創出の事例、両利きの経営など経営戦略の観点から見て優れた点を順に解説します。

<参考:三井化学株式会社基本情報>
証券コード:4183
創立年月日:1997年10月1日 (設立年月日 1955年7月1日)
資本金:125,414百万円(2021年12月20日時点)

三井化学が取り組むSDGsのテーマと「化学の力」の強みを生かす戦略

三井化学が取り組むSDGsの目標と関連する価値基準のイメージ(三井化学HPを参考に自作)

三井化学が取り組むSDGsの目標と関連する価値基準のイメージ(三井化学HPを参考に自作)

 

Vision2030で示された、社会課題の解決を軸とする経営方針

三井化学は2021年を起点とした2030年までの長期経営計画「VISION 2030」をつくり、自社の強みである材料開発力など「化学の力」で社会課題を解決しながら、持続的に成長し続ける企業グループを目指す方針を打ち出しています。

特に「循環型社会」や「健康・安心にくらせる快適社会(QOLの向上)」を実現するビジネスモデルを志向しており、それらはSDGsの17目標の「12. つくる責任・つかう責任」や「3. すべての人に健康と福祉を」などと密接に関わります。

Blue Value, Rose Valueによる環境・社会貢献の見える化

一方、目標に向けて一歩ずつ進むには、進捗を把握する指標が必要です。三井化学では、環境貢献価値の指標「Blue Value」とQOL向上貢献価値の指標「Rose Value」を独自に設け、2030年までにそれらの指標に合致した製品の売上収益比率を40%以上にすることを目標に掲げています。

また、三井化学のESGレポートによると、社内の大型投資の申請プロセスでBlue Value, Rose Valueなど社会課題視点での機会とリスクの記載を義務化しています。会社のお金を使う際に、社会課題解決への貢献を考えることが必須になり、SDGsにも貢献する新規事業が生まれやすい仕組みを整えているようです。

続いて、SDGs目標の「12. つくる責任・つかう責任」に関連した具体的な取り組みとして、三井化学における新規事業創出の事例を紹介します。

 

SDGs達成に向けた三井化学の新規事業創出事例

IPA法によるバイオポリプロピレン製造の事業化に向けた取り組み

循環型社会の実現に向け、植物など再生可能な資源を使ったプラスチックの開発は重要なテーマであり、多くの材料メーカーが取り組んでいます。三井化学は、植物を原料としたポリプロピレンの製造について、IPA法と呼ばれる独自の技術を開発しています。

ポリプロピレンは日本で生産されるプラスチックの20%以上を占める重要な素材で、バイオプラスチック化が進めば環境負荷低減への大きな効果が期待できます。三井化学のバイオポリプロピレン事業は、2019年の環境省の委託事業にも採択されており、スケールアップに向けた実証試験が進められています。

ブロックチェーン技術を活用した資源循環プラットフォームの構築

また、循環型社会の実現においては、製造だけでなく、流通・回収までサプライチェーン全体の管理が必要になります。三井化学は2021年の4月に日本IBMと協業を開始し、ブロックチェーン技術を活用した資源循環プラットフォーム構築を進めています。

具体的には、IBMがブロックチェーン技術を活用した履歴管理の仕組みを、三井化学が素材のリサイクルに関するノウハウを提供することで、材料や製品が「いつ、どこで、誰の手に渡って来たのか」を関係者が追跡できる仕組みを実現しようとしているようです。

2021年8月の三井化学ニュースリリースによると、野村総合研究所も取り組みに参加し、資源循環型社会の実現に向けたコンソーシアムの設立が合意されており、オープンイノベーションによる仲間づくりが進んでいるようです。

※他社とのオープンイノベーション成功のためのアライアンス戦略については以下の記事もご参照下さい

アライアンス戦略の考え方と成功事例 ~P&G・マイクロソフトに学ぶ契約のコツ

三井化学のSDGs達成への取り組みは「両利きの経営」とも合致した戦略の事例

ここまで、SDGsに関連した三井化学の取り組みについて、全体的な戦略と、貢献度の見える化の仕組み、循環型社会の実現に向けた新規事業創出の具体例を紹介しました。
SDGsのようにグローバルな目標の達成には仲間づくりが重要ですが、IBMなど海外企業とのオープンイノベーションも進んでおり、今後もエコシステムが成長することが期待できそうです。

先述のBlue Value, Rose Valueなど貢献度の見える化の仕組みは、変革の必要性を社員が認識し、新規事業に取り組みやすい雰囲気づくりにもつながります。これは、新規事業と既存事業の両立による継続成長を目指す「両利きの経営」の考えにも合致しており、「社会課題」を「自社の持続的な成長」につなげる戦略の事例として参考になります。

「両利きの経営」を実践する企業として、三井化学と同じ材料メーカーであるAGCも良く知られています。以下の記事でAGCの事例を解説しているので、両社の戦略の違いを理解したい方はぜひご参照ください。

 

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
発明塾東京一期生。現在は企業内発明塾™における発明創出支援、教材作成に従事。
個人でも発明を創出し、権利化を行う。

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