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人とくるまのテクノロジー展2024_事前調査レポート

人とくるまのテクノロジー展2024事前調査レポート ~デンソー・ボッシュなど出展企業の脱炭素・循環型社会への取り組みを紹介

5/22-24にパシフィコ横浜で開催予定の「人とくるまのテクノロジー展2024」は、公益社団法人自動車技術会が主催する自動車技術の専門展です。2024年の展示会では「カーボンニュートラル、その先の循環型社会へ」がテーマになっています。注目の出展企業について事前調査を行ったので、まとめてご紹介します。

特許情報などの参考情報も充実させたので、これから展示会に参加される方の情報収集に役立てば幸いです。今後も展示会速報を弊社のTwitter(X)で出すので、最新情報をキャッチしたい方はぜひフォローしてください!

①自動車メーカーによる脱炭素・循環型社会実現の取り組み

まずは、最終製品である自動車を製造・販売するメーカーを紹介します。

◆トヨタ自動車 ブース:N14

2023年5月のニュースイッチの記事によると、トヨタグループの企業は、昨年の展示会で例えば以下の内容を出展していたようです。

  • アイシンが開発する高効率モーター向け技術
  • トヨタ合成の水素タンクなど、燃料電池車(FCV)向けの技術
  • トヨタ車体が開発する植物材料など、部品製造のCO2排出量削減に関連した技術

脱炭素化に向けた技術を幅広く展示していたことが分かります。今回の展示会でも、脱炭素化や循環型社会の実現に向けた技術が広く展示されることが予想されます。

トヨタの統合報告書2023では、循環型社会に関する近年の取り組みとして以下の内容が記載されています。

  • リチウムイオン電池のエネルギー密度向上
  • EVやFCV開発で培った技術を利用した蓄電システムと再利用の仕組みの構築
  • 北米ではRedwood Materials社、Cirba Solutions社と協業し、電池回収・リサイクルに取り組む

バッテリーに関して、トヨタは2024年3月のリリースで、プライムアースEVエナジー株式会社(PEVE)を完全子会社化することを発表しています。PEVEはパナソニックとの共同出資で設立された企業でしたが、今後はトヨタの子会社としてバッテリーの量産体制強化を進めるようです。

PEVEは電池のリサイクルに関する特許出願も行っており、例えば JP2015103387A「使用済み二次電池の選択方法、及び、組電池の製造方法」などが知られています。

◆本田技研工業(ホンダ) ブース:N15

ホンダの2023年5月のニュースリリースによると、昨年の展示会での主な展示内容には、以下が含まれます。

  • 安価で耐久性の高い次世代燃料電池システム
  • 着脱式可搬バッテリーの「Honda Mobile Power Pack e:」の活用事例として、小型電動推進機や電動二輪スクーターなどを紹介
  • レジャーや災害時などに電源として利用できる充電・給電器

循環型社会の実現に向けたホンダの取り組みとして、樹脂のリサイクルに関するプロジェクトも進められています。2023年9月のリリースによると、ホンダは東レと共同で、自動車から回収した樹脂部品を分解して再利用するケミカルリサイクル技術の開発を進めており、2027年ごろの実用化を目指しているようです。東レは関連特許として JP7400993B2「ε-カプロラクタムの製造方法およびポリアミド6の製造方法」などを権利化しています。

◆ヤマハ発動機 ブース:N04

ヤマハの2023年5月のニュースリリースによると、昨年の展示会では例えば以下の内容が展示されたようです。

  • ドローンなど小型電動モビリティの航続距離や運用時間を飛躍的に拡大する「航続距離延長ユニット」の「αlive RX」
  • 水素エンジン技術の「αlive H2E」
  • 電動モーターユニットの試作品やエンジン技術など

また、2022年6月のリリースによると、ヤマハは環境技術開発を加速するため、自社ファンドを設立しています。同社の設立した「ヤマハモーターサステナビリティファンド」は運用総額1億ドル、運用期間は15年のファンドで、環境分野の課題解決に取り組む企業へ出資を行うようです。スタートアップ支援によるエコシステムの拡大も進めており、今後の展開が楽しみです。

②自動車部品メーカーによる脱炭素・循環型社会実現の取り組み

続いて、自動車部品のサプライヤーとして世界トップを走るデンソー、ボッシュの2社を紹介します。

◆デンソー ブース:383

デンソーの2023年5月のニュースリリースによると、昨年の展示会では例えば以下の内容が展示されたようです。

  • 電動車向けインバーターと、インバーターに使用されるSiCパワー半導体
  • 地面に埋め込まれた送電装置によって、電動モビリティに自動給電するシステム
  • QRコードとブロックチェーンを利用したトレーサビリティ技術
  • 水素製造のための水電解装置「SOEC(Solid Oxide Electrolysis Cell / 固体酸化物形水電解装置)」
  • 広角画像センサーやイメージングレーダーなど、周辺環境を高精度に認識するためのデバイス

2023年8月の日経クロステックによると、蓄電池の情報を電子的に記録する「電池パスポート」が2026年に義務化されることが予定されています。デンソーはQRコードをトレーサビリティシステムを2017年から開発しており、ブロックチェーンとの組み合わせたシステムの構築にも取り組んでいます。関連する特許として、WO2022149501A1などが出願されています。

また、デンソーは近年、自動運転や運転支援に関する特許出願も加速させています。例えば JP6597690B2「運転支援装置」では、前を走る車との衝突のリスクを警告するシステムについて記載されています。

◆ボッシュ ブース:394

ボッシュの2023年のニュースリリースによると、昨年の展示会での主な展示内容には、以下が含まれます。

  • 車両の電気システム全体の安全を管理する「パワーネットガーディアン」と呼ばれるコンセプト
  • 自動運転や自動駐車に向けて開発された環境の監視システムや運転操作システム
  • 燃料電池による駆動システム
  • クルマの運転支援やバッテリーの寿命管理などを行うクラウドサービス

ボッシュは2023年5月のリリースで、自動車関連の事業再編を発表しています。新設される事業セクターの「ボッシュ モビリティー」の研究開発に関わる従業員の50%がソフトウェアエンジニアで、自動車用ソフトウェアの開発をさらに加速させる体制を整えています。

また、ボッシュは循環型社会に関連した取り組みにも力を入れています。例えば同社のHPによると、古い車のスターターに使われる樹脂を、超音波センサーのハウジングとして再利用するプロジェクトが進んでいます。

プロジェクトメンバーのStefan Apelt氏は関連特許も出願しており、例えば WO2020187534A1では、使用済みプラスチックを再利用するシステムについて記載されています。

③材料メーカーによる脱炭素・循環型社会実現の取り組み

最後に、材料メーカーの注目企業を紹介します。循環型社会の観点では、材料の再利用まで含めた仕組みの構築が重要になります。

◆出光興産 ブース:260

2022年5月のMONOistの記事によると、出光興産は2022年の人とくるまのテクノロジー展では、自動車用ガラスなどの代替になるガラス繊維強化ポリカーボネートを展示していたようです。

出光は循環型社会に関する取り組みも進めています。2023年2月のリリースによると、出光は持続可能な航空燃料のサプライチェーンや、プラスチック資源循環の仕組みの構築に向けたJ-オイルミルズとの協業を開始しています。

また、トヨタとの協業による全固体電池の開発にも注目が集まっています。出光が開発する固体電解質は新規の材料であるため、リサイクルシステムの構築についてもハードルがあり、今後の開発動向に注目が集まっています。

今回の展示会で全固体電池に関する技術の紹介があるかは分かりませんが、出光の固体電解質については弊社コラムで詳しく解説しているので、ご興味のある方はご参照ください。

◆三井化学 ブース:168

三井化学のHPによると、昨年の展示会では例えば以下の内容が展示されたようです。

  • 植物由来のフィラー材や、バイオマスナフサを利用した環境配慮型の樹脂材料など、CO2排出量の削減につながる材料技術
  • 金属と代替可能な樹脂材料など車体の軽量化につながる技術
  • ブロックチェーンを利用したプラスチック再利用のトレーサビリティシステム

プラスチック再利用のためのブロックチェーン技術開発に関して、三井化学はIBMとも協業しています(2022年2月のリリース参照)。リサイクル管理システムに関する特許出願も進めており、例えば WO2023276975A1「樹脂屑の管理方法及び回収方法、並びに、リサイクル管理システム」などが知られています。

◆旭化成 ブース:285

旭化成の2023年5月のニュースリリースによると、昨年の展示会での主な展示内容には、以下が含まれます。

  • 新素材『連続繊維強化複合材料 LENCEN™』を用いたバッテリーカバー部品など、電気自動車に関連した材料技術
  • 自動車の静音化など、乗車体験の向上に役立つ音響関連技術
  • バイオエタノールを利用したエチレンやプロピレン製造技術など、持続可能なものづくりに関する技術

2021年5月のリリースによると、旭化成も三井化学と同様に、IBMと共同で、ブロックチェーンを利用したプラスチック資源の管理システムを開発しています。関連特許の権利化も進めており、例えば JP7320682B2「認証方法、認証システム及びプログラム」では、ブロックチェーンを活用したリサイクル樹脂の認証システムが記載されています。

また、旭化成は既存技術を生かして脱炭素分野でも活躍しています。例えば、旭化成のコア技術の1つが「膜を使った分離技術」で、次世代燃料としての水素製造においても膜技術が活用されています。

このように、既存事業で育てた技術の強みを生かして新市場を開拓するマーケティング戦略は「技術マーケティング」と呼ばれます。

まとめ

以上、人とくるまのテクノロジー展2024の出展企業について自動車メーカー、部品メーカー、材料メーカーの注目企業を紹介しました。循環型社会の実現を考えると、単にクルマの性能を上げるだけではなく、材料も含めたリサイクルや消耗品管理の仕組みが重要になります。各社がうまく協調して持続可能なシステムが構築されることが期待されます。

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
大阪大学大学院工学研究科 招へい教員
半導体装置の設備エンジニアとして台湾駐在、米国企業との共同開発などを経験した後、スタートアップでの事業開発を経て現職。個人発明家として「未解決の社会課題を解決する発明」を創出し、実用化・事業化する活動にも取り組んでおり、企業のアイデアコンテストでの受賞経験あり。その経験を会社の仕事にも活かし、「起業家向け発明塾」では起業に向けた発明の創出と実用化・事業化を支援している。

あらゆる業界の企業や新技術を徹底的に掘り下げたレポートの作成に定評があり、「テーマ別 深掘りコラム」と「イノベーション四季報」の執筆を担当。分野を問わずに使える発明塾の手法を駆使し、一例として以下のテーマで複数のレポートを出している。
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