「特許」という言葉は広く知られていますが、「実際に読んだことがある」という人はまだまだ少ないのが現状です。
一方、先見の明がある一部の投資家の方は、長期投資に特許情報をフル活用しています。本記事では、「なぜ特許が投資に使えるのか?」と「特許情報を投資にどう使うか?」を解説します。
他の人がつかんでいない情報をつかんで、投資・仕事の成功に活かしたい方はぜひご参照ください。
※誰にでも伝わるように心がけて書いておりますが、本記事の内容は2024年11月10日(日)に行われた 『山本潤×楠浦崇央「特許情報による”株式投資”の新・成功方程式」出版記念セミナー』 の振り返りをかねて作成しております。セミナー動画をご覧頂くと、より深く理解して頂けます。動画視聴の方にはセミナー資料も提供しておりますので、ぜひご利用ください
特許には他では読めない貴重な情報がたくさん含まれています。例えば、特許の発明者をトレースすると、
「その企業で、誰が、どのくらい熱心に開発してるか?」
がわかります。
経営者目線ではなく「現場の動き」が分かるので、平たく言えば「口ばっかりの企業なのか、実質を伴っているのか」も特許からあるていど読み取れるわけですね(※)。
また、特許は技術に関する「権利」を取るために出願するものなので、
・「その企業は、どの技術を絶対に守りたいのか」
・「その企業にとってコアになる技術をちゃんと守れているのか」
といったことも見えてきます。
※セミナーでは、「IPOの時点で妥当と思われる特許の数は?」といったご質問にもお答えしました。分野にもよるので一概には言えませんが、「明らかに実質が伴っていない企業」の見極めには特許情報が活用できると思います
「コアになる技術をちゃんと守れているのか」、「知財戦略がしっかりしているか」という点について、実は多くの企業では不十分な状況と思われます。少なくとも、弊社が過去にヒアリングした多くの企業では、「知財・特許まで手が回らない」という方が多くいらっしゃいました。
つまり、特許が戦略的・体系的に出せている企業は、仕組みがしっかりしている優良企業である可能性が高いと考えられます。
その裏づけとなる企業として、海外では3Mやジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)、日本では花王などが知られています。いずれも「配当」を毎年増加する「連続増配」の年数で記録を持つ企業で、「配当貴族」として投資家の間でも人気の企業です。
3Mや花王については、他社が「参入する気を無くす」くらい徹底的に特許を出す仕組みができていることを、弊社で分析して確認しています(※)。
※セミナーでは弊社書籍のChapter6で書いた「花王の特許の請求項の話」が読めるようになれば一人前、という話もしました。長期目線で、ぜひチャレンジしてみてください
特許は読みやすい情報ではないので、「使いこなせるようになる」のは時間がかかります。
最初からしっかり読もうとすると挫折しがちなので、まずはGoogle Patentsなどのツールを使って、「自分が調べている企業がどんな特許を出しているのか?」を見るところから初めてみましょう(※)。
例えば、企業にヒアリングする際に、特許を元に以下のような質問をしてみると良いかもしれません。
・意外と~に関する特許も出しているようですが、これからこの分野にも進出を考えているんですか?
・この特許は~社と共同で出願してますが、一緒に開発しているんですか?
・~さんがこの分野でよく特許を出されているように見えますが、開発をリードされてる方なんですか?
一般の投資家の方で、企業へのヒアリングまでする方は少ないかもしれませんが、「展示会で聞いてみる」くらいならハードルは低いと思います。ぜひお試しください。
※ツールは特にこだわりませんので、J-PlatPatの特許・実用新案検索でもOKです
ちょっと応用的な使い方として、特許の「分類」を利用して、企業どうしを比較する、という方法があります。
上図は「殺虫剤メーカー」の例ですが、Google Patentsで出てきた特許分類の「ランキング」を並べて、差分になる分類を抽出しています。簡単な比較分析ですが、このような作業に少し時間をかけるだけで、企業へのヒアリングで得られる情報量が圧倒的に増えることがわかっています。
できる範囲で少しずつ使って頂くと、長い目で見ると投資のスキルも大きく改善すると思いますので、ぜひじっくり取り組んで頂けたら幸いです(※)。
※セミナーではより応用的な分析もいくつか解説しています。それぞれの分析について、PDF資料にリンクを入れてあります。興味のある内容から1つ1つ見て頂くと、長期間の鍛錬のよいお供として使っていただけると思います
ここまで、「なぜ特許が投資に使えるのか・どう使うのか」について簡単に解説しました。
勘のよい方はお気づきかもしれませんが、特許には「企業のまだ知られてない情報」が多く書かれているので、投資に限らず活用できます。例えば、以下のように使っている方がいらっしゃいます。
・顧客や協業先について理解を深めるために特許を読んでいる
・新規顧客の開拓のために、事前に顧客の特許を調べてから営業に行く
・転職先で、自分のやりたい開発テーマをやっているかを調べてから面接に向かう
「自分でもやってみたい」という方は、まずはセミナーをご視聴頂くか、弊社書籍をご一読いただけたら幸いです。ご質問がある方は、書籍巻末に掲載した「特典ページ」にアクセスして頂くと、感想・質問フォームをご用意しております。
また、弊社代表の楠浦が執筆する無料メールマガジンでは、楠浦からのアドバイスや、セミナー・記事のリリース情報も発信しております。そちらもぜひご利用ください。
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皆様の投資・仕事での成功の参考になれば幸いです。
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畑田康司
TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
大阪大学大学院工学研究科 招へい教員
半導体装置の設備エンジニアとして台湾駐在、米国企業との共同開発などを経験した後、スタートアップでの事業開発を経て現職。個人発明家として「未解決の社会課題を解決する発明」を創出し、実用化・事業化する活動にも取り組んでおり、企業のアイデアコンテストでの受賞経験あり。その経験を会社の仕事にも活かし、「起業家向け発明塾」では起業に向けた発明の創出と実用化・事業化を支援している。
あらゆる業界の企業や新技術を徹底的に掘り下げたレポートの作成に定評があり、「テーマ別 深掘りコラム」と「イノベーション四季報」の執筆を担当。分野を問わずに使える発明塾の手法を駆使し、一例として以下のテーマで複数のレポートを出している。
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