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企業分析のやり方

企業分析のやり方 ~投資・協業先の候補となる優良企業の探し方を解説

本記事では、安心して投資や協業を行える優良企業を探す企業分析のやり方を紹介します。

前半では、「永続的に成長する優良企業」を探索し、投資を行う「クオリティ・グロース投資」の考え方と分析方法を紹介します。

後半では、企業の「特許情報」を活用した弊社独自の分析の考え方と、具体例を紹介します。 特許情報から、技術力・人材・競合優位性など、さまざまな観点で企業の強みを読み解くことが可能です。

優良企業に投資したい方、優良企業の戦略を調べたい方は、ぜひご活用ください。

「永続的に成長する優良企業」を探索する企業分析のやり方 ~クオリティ・グロース投資の考え方でIR情報を分析

そもそも「優良企業」とは何か?

何をもって「優良」とするかは様々な考え方がありますが、長期視点で投資や協業を行う上で、以下を満たしているかどうかは重要な判断材料になります。

  • 長期にわたって業績成長が続くこと
  • 業績成長が続く確度が高い(リスクが低い)こと

このような企業への投資は「クオリティ・グロース投資」と呼ばれます。成長し続けることが確実な企業であれば、自分のお金を投資する対象としても、仕事で関わる企業としても安心感がありますね。

良い経営を行う優良企業を見極める基準


では、そのような企業を見極めるには、どんな情報をチェックすればよいでしょうか?

「クオリティ・グロース投資」の入門書である『統計学を使って永続的に成長する優良企業を探す クオリティ・グロース投資入門』では、選定基準として以下が紹介されています。

  • その企業がターゲットとする市場が長期的に拡大すること
  • 市場内シェアが向上できること
  • 商品の価格が向上するか、商品の限界利益率(※1)の維持もしくは向上できること

伸びていく市場で、高いシェアを維持でき、かつ価格交渉力も高い企業などが該当します。例えば電気自動車のように今後市場の拡大が予想される分野でシェアを向上し、商品の価格も維持できる企業は継続的に成長できます。

優良企業の具体例とチェック方法

優良企業の具体例として、前記の書籍では村田製作所が紹介されています。

村田製作所は、電子機器の重要な部品である「積層セラミックコンデンサ」について圧倒的な技術力を持つメーカーです。セラミックコンデンサは電気自動車などの自動車部品としても使われており、村田の車載向けシェアは5割程度と言われています。

今後は電気自動車の台数だけでなく、1台あたりに搭載される電子部品の数も増加することが予想されます。以上を踏まえると、村田製作所は高い確率で継続的に成長することが見込まれます。

このように強いポジションを築く上では、強い事業を育てる「良い経営」を行う必要があります。良い経営のチェックポイントとして、例えば以下があげられます(※2)。

  • 社員の給与水準が高く、離職率やリストラが少ない
  • 業界内のシェアが高い
  • 売上に対する営業利益の比率が2桁以上ある

上記の指標を調べると、優秀な人材を集めて安心して働ける環境を提供しているか、高い利益率を継続できる強みやビジネスモデルを構築しているか、といった点が確認できます。

情報源として、四季報や企業の有価証券報告書、決算資料などが活用できます。公開情報から分かることは意外に多いので、ぜひチェックしてみてください。

後半では、企業の強みやビジネスモデルをより詳しく分析する手法として、特許情報を活用した分析方法を紹介します。

※1 限界利益率:限界利益は、売上から変動費(材料費など)を差し引いた金額。限界利益率は、売上高に対して限界利益が占める割合。限界利益率が維持できていれば、固定費の効率化であるスケールメリットにより売上に対する利益の比率は改善していく場合が多い

※2:上記の書籍では、他のチェックポイントや、統計学的な手法を用いた企業の分析方法も紹介されています。ここではごく一部を抜粋して紹介しているので、分析手法を詳しく学びたい方は書籍をご参照ください

知財情報を活用した企業分析のやり方 ~優良企業の強みを特許から読み解く

企業の特許分析から何が分かるか?

特許から分かる情報

特許から分かる情報


まず、特許情報から何が分かるか、を簡単に説明します。

上図に示したように、特許から読み取れる情報は大きく分けて3つあります。以下にポイントを整理します。

  • 技術情報:企業がどのような技術を開発しているか、どのような技術開発に取り組もうとしているかを読み取ることが可能です。また、権利化している内容から、「どんな技術を重視しているか」が読み取れます
  • 人の情報:特許には発明者の名前が記載されています。発明者を追跡していくことで、その企業で開発をリードしているキーパーソンやチーム、協業先を特定し、開発の経緯を深く読み解くことができます
  • 権利情報:その企業が事業の優位性を確保するために、どのような権利を必要としているか、どこまで念入りに権利化を進めているか、といった点を読み取れます

前半で、優良企業の特徴として「長期にわたって確実に業績成長が続く」ことを説明しました。特許から、「強みになる技術」や「その技術を開発したキーパーソン」、「事業の優位性につながる権利」など、成長の源泉になる企業情報が具体的に把握できることがわかります。「この企業は優良企業と言えるのではないか?」という仮説を確認したければ、特許を読めばいいということです。

企業の特許情報は、無料のツールでも簡単に調べることができます。例えばGoogle PatentsのAdvanced searchを開いて、Assignee(譲受人)の欄に企業名を入れれば、その企業の特許が一覧で表示されます。ぜひ気になる企業の特許をチェックしてみてください。

朝日インテックの強みを特許から分析

朝日インテックの特許引用マップの一部

朝日インテックの特許引用マップの一部


続いて、特許情報を用いた企業分析の具体例として、朝日インテックの事例を取り上げます。朝日インテックは心臓疾患の治療などに使われるカテーテルをガイドするワイヤ(カテーテル用ガイドワイヤ)で世界トップシェアの企業です。
四季報オンラインのデータを見ると、過去10年以上にわたり、売上高を継続して延ばしており、営業利益率も19.6~27.4%と高い水準を維持しているので、まさに優良企業と言えそうです。

続いて、朝日インテックの特許を見てみます。上図は朝日インテックの特許と、その引用特許をマップ化した図の一部です(※)。いずれも前記のガイドワイヤに関する出願で、例えば図の「出願①」にあたるJP2004190167Aには、ガイドワイヤの材料の構造や製造方法が記載されています。

上図の特許出願の状況から、朝日インテックがガイドワイヤに関連した特許を継続的に出願し、徹底的に権利を押さえていることが読み取れます。また、詳細は割愛しますが、それぞれの特許を読むと、同社がカテーテルを使った治療における細かい課題を1つ1つ地道に解決していることがわかります。

特許情報を地道に読み解くと、優良企業の成長の背景にある戦略や開発の軌跡が見えてくるので、具体的な強みの源泉を知りたい方はぜひお試しください。

※ある特許出願Aの審査に関して、特許庁の審査官が先行特許Bを引用した場合、先行特許Bは特許出願Aの引用特許と呼ばれる

企業分析のやり方を知り、優良企業を育てよう

以上、企業分析のやり方について、「クオリティ・グロース投資」の考え方と分析のポイント、特許情報を活用した分析の考え方と事例を紹介しました。投資家として優良企業の成長を応援したい方、優良企業の強みを理解して自社の成長に生かしたい方の参考になれば幸いです。

今回ご紹介した、「特許情報を用いた企業分析」については、9月末に発売予定の弊社の書籍で詳しく解説しています。ご興味を持たれた方は、書店でチェックして頂けたら嬉しいです。

また、弊社の無料メールマガジンでは書籍やコラムのリリース情報を発信しています。弊社代表の楠浦が、コラムより踏み込んだ調査レポートも紹介しているので、情報収集のツールとしてぜひご活用ください。

 

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
大阪大学大学院工学研究科 招へい教員
半導体装置の設備エンジニアとして台湾駐在、米国企業との共同開発などを経験した後、スタートアップでの事業開発を経て現職。個人発明家として「未解決の社会課題を解決する発明」を創出し、実用化・事業化する活動にも取り組んでおり、企業のアイデアコンテストでの受賞経験あり。その経験を会社の仕事にも活かし、「起業家向け発明塾」では起業に向けた発明の創出と実用化・事業化を支援している。

あらゆる業界の企業や新技術を徹底的に掘り下げたレポートの作成に定評があり、「テーマ別 深掘りコラム」と「イノベーション四季報」の執筆を担当。分野を問わずに使える発明塾の手法を駆使し、一例として以下のテーマで複数のレポートを出している。
IT / 半導体 / 脱炭素 / スマートホーム / メタバース / モビリティ / 医療 / ヘルスケア / フードテック / 航空宇宙 / スマートコンストラクション / 両利きの経営 / 知財戦略 / 知識創造理論 / アライアンス戦略

 

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