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デンソーとボッシュの比較分析

デンソー・ボッシュの比較 ~パワー半導体・自動運転開発戦略をIR・特許から分析

発明塾セミナー:電動化・自動運転普及に向けてデンソー・ボッシュはどう事業を変革するか?

デンソーとボッシュは世界トップの自動車部品メーカーとして知られています。本記事では、IR情報と特許情報を元に両社の戦略を比較分析し、両社の違いを読み解きます。

まず、電動化や自動運転など自動車業界の変化に対応したデンソー・ボッシュの事業転換について、戦略の概要を解説します。後半では、特許情報を活用してパワー半導体や自動運転に関する両社の開発動向を掘り下げます。

特に、自動車分野の枠を超えて「人工知能とIoTの巨大企業」に成長しつつあるボッシュの動向はあらゆる業界の方に参考になると思います。ぜひご一読ください。

デンソー・ボッシュの事業転換戦略の概要

内燃機関から脱却するデンソーの戦略

電動化への転換と利益率増加を両立するデンソーの戦略(同社の投資家向けプレゼン資料の図に追記して作成)

電動化への転換と利益率増加を両立するデンソーの戦略(同社の投資家向けプレゼン資料の図に追記して作成)


まず、デンソーが進める事業転換の概要を解説します。

デンソーは2022年12月の投資家向けプレゼン資料で、自社が目指す企業価値向上の戦略を発表しています。上図に示したように、電動化に関連した事業の収益増加が戦略の軸になっています。以下に戦略のポイントを整理します。

  • 電動モーターや電源回路を開発する「エレクトリフィケーション」や、半導体、センサ―など開発する「先進デバイス」を中心に、電動化においてニーズが拡大する事業の売上を倍増。モビリティエレクトロニクス事業では、自動運転・運転支援に関する技術を強化
  • 一方、エンジンのスタータや排気センサなどガソリン車向けのパーツを開発する「パワトレインシステム(※)」の事業は縮小
  • 農業・物流・FA(工場自動化)など、モビリティ以外の新領域にも進出し、価値を創出

創業期から取り組んできたガソリン車に関する事業を「収益性の低い事業」として一気に縮小し、電動化に関する事業にフォーカスする勇気ある決断と言えます。

関連する動きとして、2022年以降にオルタネーター、燃料ポンプ、点火プラグなど内燃機関に関連する事業を次々に売却しています(2023年10月の日経新聞参照)。また、2023年12月の日経新聞によると、デンソーはトヨタ系列の日野自動車・豊田合成・愛知製鋼の保有株式を全て売却しています。

※パワトレインシステム:ガソリン車やディーゼルエンジン車で使われる燃料噴射・点火システムや、排気システムなどを手掛けるデンソーの事業カテゴリー名。エンジンの回転エネルギーを車輪に伝える機構を示す一般名詞の「パワートレイン」とは異なる

電動モビリティ開発に向けたボッシュの組織再編

ボッシュのモビリティ関連の事業再編(同社のアニュアルレポート2023の図に追記して作成)

ボッシュのモビリティ関連の事業再編(同社のアニュアルレポート2023の図に追記して作成)


一方、ボッシュは電動化や自動運転など
モビリティ技術の進化に対応した体制をつくることを目標に、2024年初頭に組織再編を実施しています。

上図のように、パワートレインや電動ドライブなどの事業を分割して再編成しています。新設されたElectrified Motion部門は電動モビリティに特化しており、電動化に対応した体制をつくっています。

また、Power Solutions部門では内燃機関の他に水素製造・燃料電池に関する技術開発も進めています。脱炭素化に向けて、電動モビリティ以外の事業にも力を入れていることがわかります。

デンソー・ボッシュの開発戦略の比較 ~半導体・自動運転関連の動向を特許情報から分析

続いて、デンソーとボッシュの開発戦略について、具体的な技術分野として「半導体」と「自動運転」にフォーカスして解説します。

デンソー・ボッシュのパワー半導体開発戦略の比較

デンソーが開発するSiCウェハーの製造方法(同社の2023年の投資家向け資料の図に追記して作成)

デンソーが開発するSiCウェハーの製造方法(同社の2023年の投資家向け資料の図に追記して作成)


モビリティの電動化が進み、電力供給を制御する「パワー半導体」のニーズも高まっています。特に、「SiC(シリコンカーバイド)」を使ったパワー半導体は性能が高く、次世代パワー半導体として注目されています。

デンソーはSiCパワー半導体の製造について、ウェハー製造の段階から開発を進めています。上図のように、既存のプロセスよりも低コストでCO2排出量も削減できる「ガス結晶成長法」と呼ばれるウェハー製造方法を、2028年以降の量産化を目指して開発しています。

関連特許の JP2024053502A「炭化珪素単結晶インゴット、炭化珪素ウェハ及び炭化珪素単結晶の製造方法」トヨタ、電力中央研究所と共同で出願されており、他社と共同で開発を進めていることがわかります(※)。

一方、ボッシュもSiCパワー半導体を自社で製造できる体制を構築しています。2024年2月のNikkei Tech Foresightの記事によると、ボッシュは2021年からSiCパワー半導体の量産を開始し、すでに900万個以上を出荷しています。

ボッシュは元々、BOSCHプロセスと呼ばれるエッチング技術など、半導体製造に関する強みがあります(関連特許出願としてDE4241045C1など)。既存の強みを生かしてSiCパワー半導体の製造に本格参入したようです。

※デンソーとトヨタはパワー半導体チップの共同開発も進めており、関連特許としてJP2015072999A「炭化珪素半導体装置」などを出願している

デンソー・ボッシュの自動運転戦略の比較

デンソーが開発する多様な運転支援システム(同社の2021年のプレゼン資料の図に追記して作成)

デンソーが開発する多様な運転支援システム(同社の2021年のプレゼン資料の図に追記して作成)

デンソーは自動運転・運転支援については、特に衝突防止などの「安全対策」を重視して開発を進めています。上図のように通常の走行や駐車の支援だけでなく、衝突の回避や衝突後の安全対策まで幅広いシステムを提供しています。

関連特許の出願にも力を入れており、例えば JP6430907B2「運転支援システム」では車の周囲に存在する物体の移動先を予測し、衝突を回避する技術が記載されています。発明者の三宅氏の出願を見ると、レーダーによる物体の検知に関する出願を1998年頃から開始しており、20年以上かけて技術開発に取り組んでいることがわかります。

IoT機器をクラウド管理するボッシュのプラットフォーム(同社のブログ記事の図に追記して作成)

IoT機器をクラウド管理するボッシュのプラットフォーム(同社のブログ記事の図に追記して作成)

一方ボッシュは、センサーなどのIoT機器を一括管理するBosch IoT Gatewayなどの仕組みを構築しています。上図のように、自動車は全体の一部で、工場で使われるロボットなどもIoT機器に含まれます。

全てのIoT機器に共通の技術基盤が利用できるのがこの仕組みの大きなメリットです。例えば人工知能(AI)を使った画像データ解析技術は、自動運転だけでなくロボットの作業支援などにも応用できます。ボッシュは人工知能関連の技術開発を強化しており、関連する動向として例えば以下が知られています。

  • 2018年のリリースで、シリコンバレーに新たな研究拠点の開所を発表。人工知能、センサー、自動運転などがテーマ
  • 2019年頃からAI関連の特許出願を加速させており、自動運転に限らず幅広い分野に活用できる技術を多数出願。例えばUS20180308012A1 は機械学習によるアクチュエータの制御に関する出願で、用途として自動車だけでなく製造ロボットの制御についても記載
  •  2024年2月のリリースで、生成AIを利用した自動運転の安全性向上などのテーマでマイクロソフトと提携することを発表。また、ボッシュのHPによると、 マイクロソフトとBMWが構想したインダストリー4.0(※)関連プラットフォームのOpen Manufacturing Platform (OMP) にも2020年に参加

マイクロソフトはChatGPTを開発するOpenAIとの独占契約などで話題になっていますが、製造業のAI活用でも影響力を拡大しているようです。ボッシュとマイクロソフトの協業により、自動運転だけでなく製造業全体の進化が加速しそうです。

※インダストリー4.0:製造業のオートメーション化・データ化・コンピュータ化を目指す技術的コンセプト。例えばセンサからのデータによる工程の監視や制御などが含まれる

デンソー・ボッシュの戦略に学び、自社の事業転換を進めよう

以上、デンソーとボッシュについて、自動車技術の進化に対応した事業転換の概要と、パワー半導体・自動運転関連の開発動向を紹介しました。自動運転については、デンソーは「自動車の安全」にフォーカスし、ボッシュは自動運転以外にも活用できるAI技術の開発に力を入れており、それぞれ独自の方向で進化しています。

ボッシュはIoTデバイスのプラットフォームをAI技術により急速に進化させており、今後の展開も楽しみです。ChatGPTなど生成AIによる仕事の進め方の変化が話題になっていますが、製造業でも大きな変化が起きており、ボッシュはその中心にいる企業と考えられます。6/21に開催される弊社セミナーではデンソー・ボッシュの事例を詳しく解説するので、製造業の未来に興味がある方は広くご参加ください。

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
大阪大学大学院工学研究科 招へい教員
半導体装置の設備エンジニアとして台湾駐在、米国企業との共同開発などを経験した後、スタートアップでの事業開発を経て現職。個人発明家として「未解決の社会課題を解決する発明」を創出し、実用化・事業化する活動にも取り組んでおり、企業のアイデアコンテストでの受賞経験あり。その経験を会社の仕事にも活かし、「起業家向け発明塾」では起業に向けた発明の創出と実用化・事業化を支援している。

あらゆる業界の企業や新技術を徹底的に掘り下げたレポートの作成に定評があり、「テーマ別 深掘りコラム」と「イノベーション四季報」の執筆を担当。分野を問わずに使える発明塾の手法を駆使し、一例として以下のテーマで複数のレポートを出している。
IT / 半導体 / 脱炭素 / スマートホーム / メタバース / モビリティ / 医療 / ヘルスケア / フードテック / 航空宇宙 / スマートコンストラクション / 両利きの経営 / 知財戦略 / 知識創造理論 / アライアンス戦略

 

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