パシフィコ横浜で開催中の「人とくるまのテクノロジー展2024」(主催:公益社団法人 自動車技術会)に取材に行ってきました!
X(Twitter)で実況中継した内容を整理してお届けします。
補足情報として、弊社の関連コラムも紹介しますので、理解を深めたい方はぜひご活用ください。今後も展示会速報を弊社のTwitter(X)で出すので、最新情報をキャッチしたい方はぜひフォローしてください!
まずは、最終製品である自動車を製造・販売するメーカーから。自動車メーカーのブースはノース会場に集まっていました。
トヨタのブースではクラウンに搭載のハイブリッドシステムや、リサイクルシステムについて展示。
トヨタのブースではクラウンに搭載のハイブリッドシステムや、リサイクルシステムについて展示。
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炭素繊維強化プラスチックの循環利用の取り組みも進んでいるようです。#トヨタ #人とクルマのテクノロジー展 pic.twitter.com/jiqeku2wJq
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の再利用については、トヨタの2023年11月のリリースでも紹介されています。CFRPを表面層からはがす熱加工の技術に独自性があるようです。
関連特許を調べたところ、JP7342810B2「炭素繊維をリサイクルする方法」などが出願されていました。引用特許を見ると三菱ケミカルや東レなども似た技術を開発しています。
ホンダのブースでは、二輪車だけでなく工作機器などの電動化にも使える汎用ユニットを展示。汎用エンジン開発に関する長年のノウハウが生かされているようです。
ホンダのブースでは、二輪車だけでなく工作機器などの電動化にも使える汎用ユニットを展示。ホンダは汎用エンジンの開発に関するノウハウがあり、電動化の分野でも強みが生かされているようです。#ホンダ #人とクルマのテクノロジー展 pic.twitter.com/vLi5tEqYao
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ホンダは燃料電池モジュールの開発も進めています。2024年1月の日経新聞の記事によると、ホンダと米国のゼネラルモーターズ(GM)の合弁会社が、共同開発した燃料電池システムの生産を開始しています。
ガソリン車からのシフトを複数のアプローチで進めており、今後の展開が楽しみです。
日産自動車のブースでは、LiDARを活用した事故防止などの技術が展示されていました。
日産のブースではLiDARを活用した運転支援技術を展示。今回展示したコンセプトは衝突防止など事故の防止にフォーカスしているようです。#人とクルマのテクノロジー展 #日産 pic.twitter.com/UEkiN5MaOK
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日産は既に自動運転レベル2(部分運転自動化)の技術「プロパイロット2.0」を一部の市販車に搭載しています(日産のHP参照)。自動運転レベル3(条件付き運転自動化)の対応に向けた技術開発も進んでいるようです。
一方、ヤマハのブースでは、 センシング技術によるライダーの感情分析などの技術が紹介されていました。
本日はパシフィコ横浜で開催中の人とクルマのテクノロジー展に取材に来ています。
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写真はYAMAHAのブース。
センシング技術によりライダーの感情分析、官能性能の定量化などに取り組んでいるようです。#人とクルマのテクノロジー展 #YAMAHA pic.twitter.com/Qj4BXwoRo9
2023年5月のリリースによると、ヤマハは横浜国立大学・株式会社ミルウスとの共同研究で、神殿データを元にした感情推定技術を開発しています。関連特許としてWO2023233672A1「感情推定装置」などが出願されています。他社とは異なるユニークなアプローチなので、興味のある方は特許もご参照ください。
続いて、自動車開発において最も注目されているテーマであるSDV(※)や自動運転システムに関する技術を開発するメーカーの動向を紹介します。
※SDV:Software Defined Vehicleの略で、ソフトウェアを中心に作られた乗り物を意味する概念。例えばソフトウェアアップデートによりクルマのバージョンアップが可能になることなどを想定
ボッシュのブースでは、自動車のデータをクラウドで管理する診断技術について講演が行われていました。ソフトウェアアップデートで不具合が解消できる場合もあるようなので、SDVの概念と合致した内容でした。
BOSCHブースでは自動車診断技術について講演。
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・HPCにより大量のデータを一括処理して高度な診断が可能に
・AIを利用したデータ分析により、ソフトウェアアップデートで対応できる場合、部品交換が必要な場合など判別して対応
といったことが可能なようです。#BOSCH #人とクルマのテクノロジー展 pic.twitter.com/9vG0HrcZ7w
複雑な処理を高速で実行するHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)の半導体チップを搭載することで、複雑な車両の状態を一括で管理できるようです。自動車向けの半導体に求められるスペックも高度化していることがわかります。
ボッシュはSiCパワー半導体(※)やMEMSセンサなどの半導体は自社で生産しています。SiCパワー半導体は2021年初頭から評価用サンプルの生産を開始しており、すでに累計で900万個以上を出荷しています(2024年2月の日経クロステック記事参照)。
ボッシュは、BOSCHプロセスと呼ばれるエッチング技術など、半導体製造に関する強みがあります。開発者の方に話を聞いたところ、SiCパワー半導体についても、トレンチ(溝)形成などで自社の強みが生かせると判断し、自社で生産する体制を強化したようです。
※SiCパワー半導体:シリコン(Si)と炭素(C)で構成されるシリコンカーバイドを材料とする半導体。シリコンカーバイドはシリコンより耐久性が高く、漏電しにくいため、小型でも耐久性・性能の高いチップが製造できる
デンソーのブースでは、SDV関連の技術だけでなく、ソフトウェア人材の募集も行われていました。自動運転やSDVに関する人材のニーズが高まっていることがわかります。
デンソーのブースでは半導体、SDV、eVTOL用モーターなど電動モビリティ関連の技術が幅広く展示されていました。ソフトウェア人材の募集もパネルがあり、車載系ソフト人材のニーズが高まっていることが実感できました。#デンソー #人とクルマのテクノロジー展 pic.twitter.com/lwPo9BCTnC
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デンソーもSiCパワー半導体の開発を進めており、同社HPによると、材料開発段階から自社で取り組んでいるようです。デンソーの電動化に向けた事業転換については、弊社コラムでも取り上げているので、ご興味のある方はご参照ください。
米国の半導体企業であるアナログ・デバイセズのブースでは、コンバータなど電力系統に関連した商品と、カメラやオーディオ、イーサネット関連の商品がそれぞれ展示されていました。
ANALOG DEVICESのブースではコンバータなど電力系統に関連した商品と、カメラやオーディオ、イーサネット関連の商品が展示されていました。オーディオ関連では、構成のシンプル化に加えて空間ノイズキャンセリングなどへの対応も進んでいるようです。#アナログ・デバイセズ… pic.twitter.com/GLQp6rXoEC
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車載用の半導体にも様々な種類があり、それぞれ個別に進化が進んでいることがわかります。
村田製作所のブースでは、レーダーやフィルタなど車載用のパーツが幅広く展示されていました。
村田製作所のブースでは車載用のパーツを多数展示されていました。
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・内部にコイルのような構造をもつLキャンセルトランスはコンデンサとの組み合わせにより、スイッチングなどで生じるノイズを高効率で低減
・ミリ波レーダーは置き去り検知等に利用… pic.twitter.com/lMOead5pHr
2024年5月のリリースによると、Lキャンセルトランスの用途としてモビリティだけでなく産業機器や家電、医療機器なども想定されているようです。コンデンサを並列するよりも構成がシンプルになるので、小型化の求められる分野でニーズが拡大しそうです。
安永、Cooler Master社と共同開発する放熱部品については、村田の2023年5月のリリースでも紹介されています。
電子部品メーカーの日本ケミコンのブースでは、広角のカメラモジュールが展示されていました。
日本ケミコンのブースでは車載向けのカメラモジュールを展示。トラックの後部確認などに使われる一般的なカメラに比べ高解像度で、ハードの作り込みによりノイズも少ないようです。
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ブースの全体像も撮影されてました。#日本ケミコン #人とクルマのテクノロジー展 pic.twitter.com/c8BLKhFjTE
長いケーブルを介してもノイズの少ない画像が表示できるようなので、車載以外の産業用途でも利用が広がりそうです。
モーターやベアリングのトップメーカーとして知られるミネベアのブースでは、車載用のアクチュエーターが展示されていました。
ミネベアのブースではエアコン用のモーターやLiDAR用のDCモーターなど車載用のアクチュエーターを幅広く展示。広角センシングにはアクチュエーター技術も重要であることがわかります。#ミネベア #人とクルマのテクノロジー展 pic.twitter.com/ky8ieL846I
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回転する光学系を内蔵するLiDARに関連したミネベアの特許として、JP2018132482A「レーザー距離計測装置」などが出願されています。
開発者の方に伺ったところ、中国メーカー向けの販売も増えているようです。LiDARは競争が激しい分野で開発は大変そうですが、ハードウェアの強みが生かせる分野なので、今後が楽しみです。
続いて、車体や電機関連のパーツをつくるメーカーを紹介します。
自動車の内外装部品のメーカーである河西工業のブースでは、社内の騒音を低減する技術の他に、ウニを使った材料開発などユニークな取り組みが紹介されていました。
河西工業のブースではウニ殼由来のVOC吸着材料や、音マネジメントによる快適性向上の技術を展示。部品メーカーの新規事業としてはハードルの高そうな材料開発にも取り組まれており、応援したくなる内容でした。#河西工業 #人とクルマのテクノロジー展 pic.twitter.com/GmEp6TajNx
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河西工業の2024年5月のリリースによると、大量発生したウニの捕獲は藻場の回復つながるようです。廃棄物となるウニ殻に高付加価値の用途が見つかると、環境保護とビジネス創出が同時に進むので、興味深い取り組みです。
鋳物を手がけるコイワイと、加工技術を持つ青木製作所・ダサイの共同ブースでは、3Dプリンタによる砂型を利用した鋳物や、その後の加工技術について展示されていました。
コイワイ、青木製作所、ダサイの共同ブースでは、3D砂型プリンタによる鋳造や、その後の加工に使われる技術を展示。
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ダサイの5軸加工によりかなり複雑な形状にも対応できるようです。#コイワイ #青木製作所 #ダサイ #人とクルマのテクノロジー展 pic.twitter.com/I3wO2y1ED6
鋳造後の加工は青木製作所で行われるケースが多いようですが、複雑な加工では5軸加工の技術を持つダサイの技術が活用されるようです。
産業コネクタのメーカーであるヒロセ電機のブースでは、振動による課題の解決につながるフローティングコネクタなどの製品が展示されていました。
ヒロセ電機のブースではコネクタなど車載用のパーツを展示。フローティングコネクタは振動による接触不良などの課題に対応#ヒロセ電機 #人とクルマのテクノロジー展 pic.twitter.com/qFQxMxwd4m
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TPRのブースでは、主力製品であるエンジン用のシーリング部品の他に、新規事業として取り組んでいる開発品が幅広く展示されていました。
TRPのブースではシール材など主力製品の他に、開発品のCNT材料などを展示。カーボンナノチューブ関連の開発は五年ほど前から取り組んでいるようで、かなり開発品が展示されてました。#TRP #人とクルマのテクノロジー展 pic.twitter.com/9VUlqV6yaP
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※Xで投稿する際にTPRをTRPと打ち間違えておりました。大変失礼いたしました!
カーボンナノチューブについては材料開発の段階から自社で取り組んでいるようです。新分野の取り組みについてはTPRのHPでも参照できます。
最後に、車載用の材料開発を進めるメーカーを紹介します。
三井化学のブースでは様々な車載用材料が展示されていました。先進的な取り組みとして、ブロックチェーンを活用した資源循環の技術が紹介されていました。
三井化学のブースではブロックチェーンを使った資源循環プラットフォームについて展示。IBMのシステムを利用。
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システムのコストや、改ざんできないぶん修正も難しいなど課題はあるようですが、ニーズは高まっているので普及が進むことが期待されます。#三井化学 #人とクルマのテクノロジー展 pic.twitter.com/UP9vkgUBd7
リサイクル材料も出自が分かることで、安心して利用することができます。脱炭素化に向けた取り組みとしても重要なので、今後技術開発も進むことが期待されます。三井化学のSDGs関連の取り組みは弊社コラムでもまとめているので、そちらも是非ご参照ください。
旭化成のブースでは自社製品を搭載したコンセプトカーが展示されていました。
旭化成のブースでは自社技術を活用したコンセプトカーを展示。2016年ごろからコンセプトカーのデザインに取り組んでいるようです。#旭化成 #人とクルマのテクノロジー展 pic.twitter.com/VxU3lETW8l
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ちなみに旭化成も三井化学と同様に、IBMと共同で、ブロックチェーンを利用したプラスチック資源の管理システムを開発しており、関連特許としてJP7320682B2「認証方法、認証システム及びプログラム」などが登録されています。
出光興産のブースでは、光拡散用の材料や、触媒を使った結晶化のノウハウを生かした高耐久性の材料などが展示されていました。
出光のブースでは光拡散用の材料や高耐久性のポリカーボネート、絶縁性の高い結晶性をもつポリスチレン材料などを展示。ポリカーボネートはEV充電用のコネクタな外装などに使われるようです。#出光興産 #人とクルマのテクノロジー展 pic.twitter.com/fSLdrFlZ6Z
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今回の展示には含まれていませんでしたが、出光興産は全固体電池の固体電解質の開発をリードしています。出光の固体電解質開発については弊社コラムでも取り上げているので、全固体電池材料に興味がある方はぜひご参照ください。
AGCのブースではLiDARに使われる光学材料のラインナップが展示されていました。ガラス材料の強みが生かされていますね。
AGCのブースではLiDARなどに使われる光学材料や、フッ素樹脂製品などを展示。光学材料は現時点ではスマートフォン向けが中心のようですが、今後は車載用のニーズも増えそうです。#AGC #人とクルマのテクノロジー展 pic.twitter.com/kWqGGTOusG
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ダイキンのブースでは、電池用のバインダーなどの材料が展示されていました。空調機器メーカーのイメージが強いダイキンですが、フッ素化合物に関する化学事業にも力を入れています。
ダイキンのブースでは電池材料について講演されてました。導電性を改善するバインダー、電解液溶媒などを展示。全固体電池用のバインダーも展示されていました。#ダイキン #人とクルマのテクノロジー展 pic.twitter.com/iYFRpKaGjl
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ダイキンは全固体電池関連の特許出願も進めており、例えばWO2023243714A1「 二次電池」 はトヨタと共同で出願されています。高い圧力をかけなくても、電解質の隙間等による抵抗を低減できる材料について記載されています。
取材にご協力いただいた出展者の皆様、ありがとうございました!
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畑田康司
TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
大阪大学大学院工学研究科 招へい教員
半導体装置の設備エンジニアとして台湾駐在、米国企業との共同開発などを経験した後、スタートアップでの事業開発を経て現職。個人発明家として「未解決の社会課題を解決する発明」を創出し、実用化・事業化する活動にも取り組んでおり、企業のアイデアコンテストでの受賞経験あり。その経験を会社の仕事にも活かし、「起業家向け発明塾」では起業に向けた発明の創出と実用化・事業化を支援している。
あらゆる業界の企業や新技術を徹底的に掘り下げたレポートの作成に定評があり、「テーマ別 深掘りコラム」と「イノベーション四季報」の執筆を担当。分野を問わずに使える発明塾の手法を駆使し、一例として以下のテーマで複数のレポートを出している。
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