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【速報】人とくるまのテクノロジー展2024参加レポート ~自動運転・SDV・パワー半導体など注目技術を一挙紹介!

パシフィコ横浜で開催中の「人とくるまのテクノロジー展2024」(主催:公益社団法人 自動車技術会)に取材に行ってきました!
X(Twitter)で実況中継した内容を整理してお届けします。

補足情報として、弊社の関連コラムも紹介しますので、理解を深めたい方はぜひご活用ください。今後も展示会速報を弊社のTwitter(X)で出すので、最新情報をキャッチしたい方はぜひフォローしてください!

①自動車メーカー関連

まずは、最終製品である自動車を製造・販売するメーカーから。自動車メーカーのブースはノース会場に集まっていました。

◆トヨタ自動車 ブース:N14

トヨタのブースではクラウンに搭載のハイブリッドシステムや、リサイクルシステムについて展示。

炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の再利用については、トヨタの2023年11月のリリースでも紹介されています。CFRPを表面層からはがす熱加工の技術に独自性があるようです。

関連特許を調べたところ、JP7342810B2「炭素繊維をリサイクルする方法」などが出願されていました。引用特許を見ると三菱ケミカルや東レなども似た技術を開発しています。

◆本田技研工業(ホンダ) ブース:N15

ホンダのブースでは、二輪車だけでなく工作機器などの電動化にも使える汎用ユニットを展示。汎用エンジン開発に関する長年のノウハウが生かされているようです。

ホンダは燃料電池モジュールの開発も進めています。2024年1月の日経新聞の記事によると、ホンダと米国のゼネラルモーターズ(GM)の合弁会社が、共同開発した燃料電池システムの生産を開始しています。

ガソリン車からのシフトを複数のアプローチで進めており、今後の展開が楽しみです。

◆日産自動車 ブース:N13

日産自動車のブースでは、LiDARを活用した事故防止などの技術が展示されていました。

日産は既に自動運転レベル2(部分運転自動化)の技術「プロパイロット2.0」を一部の市販車に搭載しています(日産のHP参照)。自動運転レベル3(条件付き運転自動化)の対応に向けた技術開発も進んでいるようです。

◆ヤマハ発動機 ブース:N04

一方、ヤマハのブースでは、 センシング技術によるライダーの感情分析などの技術が紹介されていました。

2023年5月のリリースによると、ヤマハは横浜国立大学・株式会社ミルウスとの共同研究で、神殿データを元にした感情推定技術を開発しています。関連特許としてWO2023233672A1「感情推定装置」などが出願されています。他社とは異なるユニークなアプローチなので、興味のある方は特許もご参照ください。

②SDV・センシング関連

続いて、自動車開発において最も注目されているテーマであるSDV(※)や自動運転システムに関する技術を開発するメーカーの動向を紹介します。

※SDV:Software Defined Vehicleの略で、ソフトウェアを中心に作られた乗り物を意味する概念。例えばソフトウェアアップデートによりクルマのバージョンアップが可能になることなどを想定

◆BOSCH(ボッシュ) ブース:394

ボッシュのブースでは、自動車のデータをクラウドで管理する診断技術について講演が行われていました。ソフトウェアアップデートで不具合が解消できる場合もあるようなので、SDVの概念と合致した内容でした。

複雑な処理を高速で実行するHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)の半導体チップを搭載することで、複雑な車両の状態を一括で管理できるようです。自動車向けの半導体に求められるスペックも高度化していることがわかります。

ボッシュはSiCパワー半導体(※)やMEMSセンサなどの半導体は自社で生産しています。SiCパワー半導体は2021年初頭から評価用サンプルの生産を開始しており、すでに累計で900万個以上を出荷しています(2024年2月の日経クロステック記事参照)。

ボッシュは、BOSCHプロセスと呼ばれるエッチング技術など、半導体製造に関する強みがあります。開発者の方に話を聞いたところ、SiCパワー半導体についても、トレンチ(溝)形成などで自社の強みが生かせると判断し、自社で生産する体制を強化したようです。

※SiCパワー半導体:シリコン(Si)と炭素(C)で構成されるシリコンカーバイドを材料とする半導体。シリコンカーバイドはシリコンより耐久性が高く、漏電しにくいため、小型でも耐久性・性能の高いチップが製造できる

◆デンソー ブース:383

デンソーのブースでは、SDV関連の技術だけでなく、ソフトウェア人材の募集も行われていました。自動運転やSDVに関する人材のニーズが高まっていることがわかります。

デンソーもSiCパワー半導体の開発を進めており、同社HPによると、材料開発段階から自社で取り組んでいるようです。デンソーの電動化に向けた事業転換については、弊社コラムでも取り上げているので、ご興味のある方はご参照ください。

◆アナログ・デバイセズ株式会社 ブース:N65

米国の半導体企業であるアナログ・デバイセズのブースでは、コンバータなど電力系統に関連した商品と、カメラやオーディオ、イーサネット関連の商品がそれぞれ展示されていました。

車載用の半導体にも様々な種類があり、それぞれ個別に進化が進んでいることがわかります。

 

◆村田製作所 ブース:N16

村田製作所のブースでは、レーダーやフィルタなど車載用のパーツが幅広く展示されていました。

2024年5月のリリースによると、Lキャンセルトランスの用途としてモビリティだけでなく産業機器や家電、医療機器なども想定されているようです。コンデンサを並列するよりも構成がシンプルになるので、小型化の求められる分野でニーズが拡大しそうです。

安永、Cooler Master社と共同開発する放熱部品については、村田の2023年5月のリリースでも紹介されています。

◆日本ケミコン ブース:N22

電子部品メーカーの日本ケミコンのブースでは、広角のカメラモジュールが展示されていました。

長いケーブルを介してもノイズの少ない画像が表示できるようなので、車載以外の産業用途でも利用が広がりそうです。

◆ミネベアミツミ ブース:316

モーターやベアリングのトップメーカーとして知られるミネベアのブースでは、車載用のアクチュエーターが展示されていました。

回転する光学系を内蔵するLiDARに関連したミネベアの特許として、JP2018132482A「レーザー距離計測装置」などが出願されています。

開発者の方に伺ったところ、中国メーカー向けの販売も増えているようです。LiDARは競争が激しい分野で開発は大変そうですが、ハードウェアの強みが生かせる分野なので、今後が楽しみです。

③自動車部品メーカー関連

続いて、車体や電機関連のパーツをつくるメーカーを紹介します。

◆河西工業 ブース:449

自動車の内外装部品のメーカーである河西工業のブースでは、社内の騒音を低減する技術の他に、ウニを使った材料開発などユニークな取り組みが紹介されていました。

河西工業の2024年5月のリリースによると、大量発生したウニの捕獲は藻場の回復つながるようです。廃棄物となるウニ殻に高付加価値の用途が見つかると、環境保護とビジネス創出が同時に進むので、興味深い取り組みです。

◆コイワイ、青木製作所、ダサイ(共同ブース) ブース:372

鋳物を手がけるコイワイと、加工技術を持つ青木製作所・ダサイの共同ブースでは、3Dプリンタによる砂型を利用した鋳物や、その後の加工技術について展示されていました。

鋳造後の加工は青木製作所で行われるケースが多いようですが、複雑な加工では5軸加工の技術を持つダサイの技術が活用されるようです。

◆ヒロセ電機 ブース:348

産業コネクタのメーカーであるヒロセ電機のブースでは、振動による課題の解決につながるフローティングコネクタなどの製品が展示されていました。

◆TPR ブース:466

TPRのブースでは、主力製品であるエンジン用のシーリング部品の他に、新規事業として取り組んでいる開発品が幅広く展示されていました。

※Xで投稿する際にTPRをTRPと打ち間違えておりました。大変失礼いたしました!


カーボンナノチューブについては材料開発の段階から自社で取り組んでいるようです。新分野の取り組みについては
TPRのHPでも参照できます。

④材料メーカー関連

最後に、車載用の材料開発を進めるメーカーを紹介します。

◆三井化学 ブース:168

三井化学のブースでは様々な車載用材料が展示されていました。先進的な取り組みとして、ブロックチェーンを活用した資源循環の技術が紹介されていました。

リサイクル材料も出自が分かることで、安心して利用することができます。脱炭素化に向けた取り組みとしても重要なので、今後技術開発も進むことが期待されます。三井化学のSDGs関連の取り組みは弊社コラムでもまとめているので、そちらも是非ご参照ください。

◆旭化成 ブース:285

旭化成のブースでは自社製品を搭載したコンセプトカーが展示されていました。

ちなみに旭化成も三井化学と同様に、IBMと共同で、ブロックチェーンを利用したプラスチック資源の管理システムを開発しており、関連特許としてJP7320682B2「認証方法、認証システム及びプログラム」などが登録されています。

◆出光興産 ブース:260

出光興産のブースでは、光拡散用の材料や、触媒を使った結晶化のノウハウを生かした高耐久性の材料などが展示されていました。

今回の展示には含まれていませんでしたが、出光興産は全固体電池の固体電解質の開発をリードしています。出光の固体電解質開発については弊社コラムでも取り上げているので、全固体電池材料に興味がある方はぜひご参照ください。

◆AGC ブース:203

AGCのブースではLiDARに使われる光学材料のラインナップが展示されていました。ガラス材料の強みが生かされていますね。

 

◆ダイキン工業 ブース:262

ダイキンのブースでは、電池用のバインダーなどの材料が展示されていました。空調機器メーカーのイメージが強いダイキンですが、フッ素化合物に関する化学事業にも力を入れています。

ダイキンは全固体電池関連の特許出願も進めており、例えばWO2023243714A1「 二次電池」 はトヨタと共同で出願されています。高い圧力をかけなくても、電解質の隙間等による抵抗を低減できる材料について記載されています。

 

取材にご協力いただいた出展者の皆様、ありがとうございました!

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
大阪大学大学院工学研究科 招へい教員
半導体装置の設備エンジニアとして台湾駐在、米国企業との共同開発などを経験した後、スタートアップでの事業開発を経て現職。個人発明家として「未解決の社会課題を解決する発明」を創出し、実用化・事業化する活動にも取り組んでおり、企業のアイデアコンテストでの受賞経験あり。その経験を会社の仕事にも活かし、「起業家向け発明塾」では起業に向けた発明の創出と実用化・事業化を支援している。

あらゆる業界の企業や新技術を徹底的に掘り下げたレポートの作成に定評があり、「テーマ別 深掘りコラム」と「イノベーション四季報」の執筆を担当。分野を問わずに使える発明塾の手法を駆使し、一例として以下のテーマで複数のレポートを出している。
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