東京ビッグサイトで開催中の CPhI Japan(国際医薬品開発展)2024に取材に行ってきました!
X(Twitter)で実況中継した内容を整理してお届けします。展示会参加前の情報収集や、参加後の情報整理にご活用ください!
また、補足情報として、弊社の関連コラムも紹介しますので、理解を深めたい方はぜひご参照ください。
まず、CRO(医薬品開発業務受託企業)やCMO(医薬品受託製造機関)、CDMO(医薬品受託開発製造機関)などの受託サービスを提供する国内の企業を紹介します。
CMOで国内ダントツトップの製造能力を持つ富士フイルムのブースでは、幅広い受託サービスが紹介されていました。
富士フイルム富山化学、富士フイルム和光純薬のブースではCOMOだけでなくCROサービスも展示。感染症関連の研究環境も整っているようです。
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創薬のコンサルティングサービスも手掛けており、サービスの幅が広いですね。#富士フイルム #国際医薬品開発展 #cphi pic.twitter.com/ujJzT5Jxnx
富士フイルムは2023年3月のリリースで創薬支援CROビジネスへの本格参入を発表しています。具体的な取り組みとして、FUJIFILM Cellular Dynamicsが製造・販売するiPS細胞由来の分化細胞とAI技術を組み合わせて、医薬品の候補物質の有効性・作用機序を解析するサービスを提供するようです。
※富士フイルムの事業転換の戦略については以下の記事で解説しています。
【図解】富士フイルム事業転換の本質とは? ~写真技術の新用途を開拓した技術マーケティング戦略の成功事例
一方、材料メーカーのAGC(旧 旭硝子)もCDMO事業の拡大に力を入れています。
AGCは2021年に横浜テクニカルセンターを開設、海外工場の買収なども進めており、CDMO事業を急速に拡大させています。#AGC #国際医薬品開発展 #cphi pic.twitter.com/MGmEBrevgl
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関連する動向として、例えば遺伝子・細胞治療を事業領域とするイタリアのMolecular Medicineの買収発表(2020年3月リリース参照)や、横浜テクニカルセンターにおけるCDMOの開発・製造能力拡大に約500億円を投資する計画発表(2023年12月リリース参照)などが知られています。
※AGCの両利きの経営については以下の記事で解説しています。
両利きの経営とは? ~基本的な考え方とIBM・AGC・セールスフォースの成功事例を解説
神戸天然物化学は20年ほど前にバイオ分野に進出してから、自社開発で着実に事業領域を拡大しています。
神戸天然物化学のブースでは医薬・バイオ分野、機能性材料の事業を展示。バイオ分野に進出したのは20年くらい前のようですが、物質を精製する技術など、コア技術を生かして地道に事業を育てられたようです。新規事業を育てる事例としても参考になりました#神戸天然物化学 #国際医薬品開発展 #cphi pic.twitter.com/BXEU5lwbSt
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医薬品業界は新規参入が難しい分野ですが、培地の成分などから入って徐々に事業を拡大したようです。既存の強みを生かしつつ、新たな挑戦をして事業を拡大した企業の事例としても参考になりました。
味の素のブースでは動物細胞の培地関連の商品の他に、再生医療、抗体医薬関連など幅広い製品が展示されていました。
味の素のブースでは動物細胞用の培地の添加物や、再生医療、抗体医薬関連の製品を展示。現状は動物細胞用の培地関連が中心のようですが、遺伝子治療など新たな分野にも事業領域を広げているようです。
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写真はカタログから#味の素#国際医薬品開発展 #cphi pic.twitter.com/QUmVxbUBQH
味の素は医薬関連の買収も積極的に進めており、近年の動向として例えば以下が知られています。
世界を代表するCDMOの企業のロンザのブースでは、バイオ医薬品、低分子化合物、細胞治療や遺伝子治療など幅広い技術について展示されていました。
ロンザのブースではCDMO関連のサービスを紹介。アジアではカプセル・健康食品原料の拠点が複数あるようです。#LONZA #国際医薬品開発展 #cphi pic.twitter.com/5TbCgWvroz
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医薬品のイメージが強いロンザですが、栄養補助食品に関する事業も拡大しています。関連する買収として、以下が知られています。
また、ロンザは2020年11月のリリースで、富士フイルムホールディングの子会社であるFUJIFILM Cellular Dynamicsとの技術の相互ライセンスについても発表しており、他社との協業も進んでいます。
中国の上海に本拠地を置くWuxi AppTecは、医薬品の研究開発と製造を幅広く手がける企業です。
WuXi AppTecのブースではnon -GMPの研究、製造サービスを広く展示。GMP対応もカバーするWuXi Biologicsと親子関係はないようです。#WuXiAppTec #国際医薬品開発展 #cphi pic.twitter.com/yDNDLVaTaT
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Wuxi AppTecは海外企業との協業も積極的に進めています。例えば2020年2月のCTechの記事によると、同社は製薬企業のメルクと提携し、イスラエルで製薬・バイオテクノロジー関連のスタートアップインキュベータを立ち上げています。
WuXi BiologicsのGMP(※)対応については、以下のページで紹介されています。
https://www.wuxibiologics.com/mammalian/drug-product-fill/
※GMP:Good Manufacturing Practice(製造適正規範)の略称。医薬品が一貫して製造され、使用目的に適した品質基準に従って管理され、製品仕様で要求されていることを保証する基準(WHOのHP参照)
北アイルランドの実業家であるAllen McClay氏が設立したAlmacは、医薬品の有効成分の供給や、放射性標識、製剤開発など幅広いサービスを提供しています。
ALMACのブースでは酵素を利用した核酸合成やペプチド合成の技術を展示。放射性標識などにも対応しているようです。#国際医薬品開発展 #cphi #almac pic.twitter.com/nQ7flvNJOV
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続いて、医薬品の開発や医療サービスのDX化、医療データの活用に取り組む企業を紹介します。
顧客管理システム(CRM)のトップ企業であるセールスフォースは、医薬品分野でも開発・サービス提供の両面でサービスを提供しています。
セールスフォースのブースではAIを活用した医療分野のクラウドサービスを紹介。研究開発段階のコミュニケーションや、医療サービス提供における患者のデータ管理などに対応したサービスを提供しているようです。#セールスフォース #国際医薬品開発展 #cphi pic.twitter.com/npTN6Y1lQv
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製薬・医療機器関連の企業向けサービスであるLife Sciences Cloudは2023年にリリースされた新サービスで、研究開発や臨床試験のDX化をサポートしています(2023年10月のセールスフォースリリース参照)。
NTTデータのブースでは、大規模データベースを利用した研究・創薬の支援サービスが展示されていました。
NTTデータのブースでは医療データの活用支援サービスを展示。200万人規模のデータベースを活用できるようです。複雑な医療データから教師データをつくるノウハウなど、データの扱いに関する経験に自社の強みがあるようです。#NTT #国際医薬品開発展 #cphi pic.twitter.com/LXIi5MVlkv
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健康医療ビッグデータ(リアルワールドデータ/RWD)の活用により、新薬開発が効率化することが期待されています。2020年の中外製薬のリリースによると中外製薬とNTTデータは、AI技術を活用した治験効率化に向けて実証実験を実施しています。
※中外製薬によるWeb3活用については以下の記事で解説しています。
Web3・DAOを活用した医療・ヘルスケアの最前線 ~中外製薬・IBMなど企業の最新事例を紹介
最後に、創薬関連の研究開発や、事業創出を支援するサービスを提供する企業を紹介します。
日本のAIスタートアップであるElixは創薬支援のAIサービスを展示。共同出展する東京エレクトロンデバイスはGPUサーバーの販売・サポートなどに対応しているようです。
Elix/東京エレクトロンデバイスの共同ブースでは、創薬支援のAIサービスを展示。Elixは日本のベンチャーで、投資は受けずに経営。アステラスやエーザイ、シオノギなど大手との取引を獲得できており、実力のある技術者が集まった会社のようです。#ELIX #国際医薬品開発展 #cphi pic.twitter.com/mARSBeeDH0
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ガラス製の反応装置やろ過装置を手がける旭製作所のブースでは、小スケールの製造に使える設備が展示されていました。
旭製作所のブースではガラスの反応装置を展示。化学合成の実験環境立ち上げに使え、スケールアップの際にグループのGL HAKKOの装置を使えるので、段階的な増産にも対応。バイオ系の培養設備としても活用できるようなので、広く使われそうですね。#旭製作所 #GLhakko #国際医薬品開発展 #cphi pic.twitter.com/Xr74WYeZsz
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大規模な製造や培養ではステンレス製の容器を使うのが一般的ですが、GL HAKKOでは高強度のガラスを使った大サイズの反応容器も提供しているようです。
日本ガイシは赤外線照射により新たな結晶形をつくるユニークな技術を展示していました。
日本ガイシのブースでは赤外線技術を展示。特定波長の赤外線照射により特定の官能基のみを励起し、新たな結晶形をつくるようです。薬効などが得られれば、化合物の付加価値につながります。セラミック等の分野で培った赤外線技術が生かされているようです#日本ガイシ #国際医薬品開発展 #cphi pic.twitter.com/NLBrlieWSP
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こちらも既存の赤外線技術の強みを生かし、新たな付加価値のあるサービスを創出しており、新規事業創出の事例としても興味深い内容でした。
シンガポールのPatSnapは、創薬データ統合検索ツールのSynapseを展示していました。
シンガポール発のPatSnapはAIを利用した特許分析ツールを提供。化学構造をベースにした検索もできるようです。例えば自社の強みとなる化合物の新用途を探索する際などに使えそうですね。#PatSnap #国際医薬品開発展 #cphi pic.twitter.com/FMb5WXGVYn
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操作画面も拝見しましたが、化学構造などをベースに関連特許や企業の分析ができ、既存の材料を活用した新規事業創出などで活用できそうなツールでした。
国立の研究開発法人であるNEDOは、ディープテック分野の起業や事業創出を支援する事業について展示していました。
NEDOのブースではディープテックのスタートアップ支援に加えて、企業からのカーブアウトの支援事業を展示。カーブアウト支援は今年から始まったようなので、新規事業創出に取り組まれている方はぜひご参照ください。VCやアクセラレーター支援も始めているようです。#NEDO #国際医薬品開発展 #cphi pic.twitter.com/ZXrjw9dBII
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企業が保有する革新的な技術を活用したカーブアウトを支援する事業は今年(2024年)から開始したようです。応募期限が迫っていますが、一般企業で新規事業を創出する方も活用できる内容なので、新規事業創出に取り組む方は募集ページを参照頂くと役立つかもしれません。
出展者の皆様、ブースでご対応いただきありがとうございました!
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畑田康司
TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
大阪大学大学院工学研究科 招へい教員
半導体装置の設備エンジニアとして台湾駐在、米国企業との共同開発などを経験した後、スタートアップでの事業開発を経て現職。個人発明家として「未解決の社会課題を解決する発明」を創出し、実用化・事業化する活動にも取り組んでおり、企業のアイデアコンテストでの受賞経験あり。その経験を会社の仕事にも活かし、「起業家向け発明塾」では起業に向けた発明の創出と実用化・事業化を支援している。
あらゆる業界の企業や新技術を徹底的に掘り下げたレポートの作成に定評があり、「テーマ別 深掘りコラム」と「イノベーション四季報」の執筆を担当。分野を問わずに使える発明塾の手法を駆使し、一例として以下のテーマで複数のレポートを出している。
IT / 半導体 / 脱炭素 / スマートホーム / メタバース / モビリティ / 医療 / ヘルスケア / フードテック / 航空宇宙 / スマートコンストラクション / 両利きの経営 / 知財戦略 / 知識創造理論 / アライアンス戦略
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