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Web3×医療・ヘルスケアの最先端

Web3・DAOを活用した医療・ヘルスケアの最前線 ~中外製薬・IBMなど企業の最新事例を紹介

Web3(Web3.0)は次世代のインターネットのあり方を示す概念です。ブロックチェーンを使った情報管理により、「DAO(分散型自立組織)」と呼ばれる、特定の組織に依存しない仕組みが構築できるのが特徴です。アートや金融業界で話題になっていますが、中外製薬などのヘルスケア企業も参入しており、メーカーの経営戦略においても重要なテーマになりつつあります。

本記事では、DAOなどWeb3世界の仕組みを、「医療・ヘルスケアデータ」の管理に活用する取り組みを紹介します。まず、基本的な考え方と仕組みを解説した後、中外製薬やIBMなど先進的な企業の取り組みを紹介します。Web3が自分たちの生活をどう変革するか、具体的なイメージを把握したい方はぜひご一読ください。

Web3・DAOの概要と医療・ヘルスケアに役立つ理由

ブロックチェーンを使ったWeb3・DAOの仕組み

Web3・DAOの管理の仕組みの概要(経済産業省資料「Web3.0事業環境整備の考え方」の図に追記して作成)

Web3・DAOの管理の仕組みの概要(経済産業省資料「Web3.0事業環境整備の考え方」の図に追記して作成)


まず、Web3(Web3.0)について、既存のWeb2.0と比較しながら基本的な特徴を説明します。

Web2.0の時代のシステムは、特定の管理者がデータを一元管理していました。例えば、YouTubeは個人でも情報発信できるサービスですが、ユーザーの個人情報は運営会社のグーグルが一括管理しています。つまり、運営会社が大量の情報をクローズドに独占した状態になります。

一方、Web3の世界では、データをブロックチェーン上に保存してユーザー間で共有し、データの追加や変更なども個々のユーザーが承認する形で管理されます。このように、多数のユーザーに権限を分散して管理する組織体は「DAO(分散型自立組織)」と呼ばれ、透明性の高い民主的な仕組みとして様々な分野での活用が期待されています。

「透明性の高いデータ管理」が望まれる分野の代表例が医療・ヘルスケア分野で、個人の健康に関するデータをWeb3の技術で管理する取り組みに注目が集まっています。

ブロックチェーンを活用したWeb3時代のヘルスケアシステム

ブロックチェーンを活用したヘルスケアデータ管理システムの例(Jadavら, 2023の図に追記して作成)

ブロックチェーンを活用したヘルスケアデータ管理システムの例(Jadavら, 2023の図に追記して作成)


続いて、Web3の技術を医療やヘルスケアデータの管理に活用する具体的な仕組みを紹介します。

上図は、アップルウォッチのようなウェアラブルデバイスから得られる心拍などのデータを管理する仕組みの例です。以下の流れで、データを安全に管理することが可能です。

①ユーザーが身につけているウェアラブルデバイスが、血圧や心拍などのデータを取得し、クラウド上に保存
②データの信頼性について人工知能(AI)がチェックし、信頼できると判断されたデータのみをブロックチェーンに保存
③ブロックチェーン上のデータには患者の治療に関わる医師など、認証されたユーザーのみがアクセスできる

先述の通り、ブロックチェーンは「データの改ざんを防止して管理すること」を可能にします。ただ、ブロックチェーンに保存される前のデータの信頼性確認や、プライバシー保護のための暗号化などの処理は、AIなどブロックチェーン以外の技術を使って構築する必要があります。

このような仕組みができると、消費者は自分のヘルスケアデータを安全かつ正確に医師に共有し、治療を受けることができます。治療に関するデータもブロックチェーン上に保存されれば、病院が変わっても過去のデータを参照できるので、医師も過去データを参照してデータに基づく質の高い治療を提供することが可能になります。

次項では、ヘルスケア分野でWeb3のプラットフォーム構築を目指す企業の取り組みを紹介します。

Web3・DAOの医療・ヘルスケア活用の最前線 ~中外製薬・IBMの事例

「Web3.0 × ヘルスケア」の未来に向けた中外製薬の取り組み

中外製薬の目指すWeb3.0 × ヘルスケアの世界観(同社の対談記事の図に追記して作成)

中外製薬の目指すWeb3.0 × ヘルスケアの世界観(同社の対談記事の図に追記して作成)


大手製薬メーカーである中外製薬は、2022年11月に開催されたオンラインカンファレンスの「CHUGAI INNOVATION DAY 2022」で、ヘルスケア・製薬産業におけるWeb3の活用について発表しています。

上図は、中外製薬が公開した「Web3.0×ヘルスケア」の世界のイメージで、患者、医療関係者、研究者がそれぞれ企業の垣根を超えてDAOを形成し、分散型でデータを共有する様子が描かれています。それぞれのDAOで得られた情報は、左下に書かれたヘルスケア企業に共有され、研究開発や製造工程の改善に活用されるようです。

推測ですが、中外製薬の戦略として、ヘルスケア分野におけるWeb3のプラットフォーム構築をリードすることで、Web3の普及により広がる市場においても有利なポジションを取る狙いがあるのかもしれません。DAOに信頼性の高いデータが集約され、それを活用することで新薬や治療法の開発が早く進めば、エコシステム全体に利益のある仕組みになります。

ちなみに、中外製薬は2002年10月にスイスのロシュ社のグループ企業になっています(中外製薬の個人投資家向けページ参照)。同社はロシュの販売ネットワーク活用で売上を伸ばし、2023年に国内製薬企業の営業利益ランキングでトップになっており、アライアンス戦略に成功した企業としても注目されています(2023年11月のAnswersNews記事参照)。Web3の活用はさらなる成功に向けた攻めの一手と考えられ、今後の展開が楽しみです。

※アライアンス戦略のコツについては以下の記事で解説しています。

アライアンス戦略の考え方と成功事例 ~P&G・マイクロソフトに学ぶ契約のコツ

ブロックチェーンのプラットフォームをつくるIBMの取り組み

一方、米国の大手IT企業であるIBMは、ブロックチェーンを使った技術プラットフォームを様々な企業に提供しています。

2020年10月のHealthcare IT Newsの記事によると、IBMはブロックチェーンを使って個人情報や医療データなどを管理できるツールの「IBM Digital Health Pass」(※)を発表しています。このツールを活用することで、コロナウイルスの検査結果などを一定の基準にもとづいて管理することが可能です。

IBMはブロックチェーンに関する技術開発と特許出願も盛んに進めています。例えば2023年に出願されたJP2023098847Aでは、ブロックチェーンと暗号解読などの技術を組み合わせ、ユーザーのプライバシーを保護してデータのやり取りを行う技術について記載されています。

先述の通り、Web3の仕組みづくりにはブロックチェーン以外にもAIや暗号化など様々な技術が関わっています。IBMのように高度なIT技術をもつ企業が参入することで、急速に実用化が進むことが予想されます。

2023年1月にLinkedInで公開された記事によると、IBM Digital Health Passはオープンソースとしてリリースされている。同ツールの開発元であるIBMのWatson Health事業は売却され、現在はヘルスケア企業のMerativeになっている

Web3・DAOが拓く医療・ヘルスケアの未来

以上、Web3・DAOを活用した医療・ヘルスケアについて、仕組みの概要と、ヘルスケア分野におけるWeb3の普及を戦略的に進める中外製薬の取り組み、ブロックチェーンの技術プラットフォームをつくるIBMの取り組みを紹介しました。

ChatGPTなどAIの話題に押されてWeb3の話題はやや下火になっていますが、医療・ヘルスケア分野は本質的にWeb3と相性の良い分野であり、普及が加速することが望まれます。中外製薬など挑戦的なプロジェクトを進める企業の活躍に期待したいと思います。

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
大阪大学大学院工学研究科 招へい教員
半導体装置の設備エンジニアとして台湾駐在、米国企業との共同開発などを経験した後、スタートアップでの事業開発を経て現職。個人発明家として「未解決の社会課題を解決する発明」を創出し、実用化・事業化する活動にも取り組んでおり、企業のアイデアコンテストでの受賞経験あり。

あらゆる業界の企業や新技術を徹底的に掘り下げたレポートの作成に定評があり、「テーマ別 深掘りコラム」と「イノベーション四季報」の執筆を担当。分野を問わずに使える発明塾の手法を駆使し、一例として以下のテーマで複数のレポートを出している。
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