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脱炭素EXPO, クリーンエネルギーWEEK注目企業紹介

【出展社】脱炭素経営EXPO・スマートエネルギーWEEK 2024 事前調査 ~トヨタ燃料電池、旭化成の水素製造、レーザーテック検査装置など先進技術を一挙紹介!

2024年の2/28~3/1に東京ビッグサイトで開催予定の脱炭素経営EXPOスマートエネルギーWEEKは、炭素排出量の管理、太陽光・風力発電、燃料電池や二次電池など脱炭素・スマートエネルギー関連の技術が一堂に会する大規模なイベントです。注目の出展企業について事前調査を行ったので、まとめてご紹介します。

特許情報などの参考情報も充実させたので、これから展示会に参加される方の情報収集に役立てば幸いです。また、全ての企業を網羅することはできていないので、「この企業がスゴイ・面白いよ!」といった情報があれば、弊社のX(Twitter)などで是非お気軽にコメント願います!

※本記事は事前調査レポートで、以下の記事では展示会の様子をレポートしております。こちらもぜひご参照ください。
【速報】脱炭素経営EXPO・スマートエネルギーWEEK2024参加レポート ~ホンダ燃料電池・丸紅トレーサビリティ管理・日本電子/レーザーテック電池検査など注目技術を一挙紹介!

①燃料電池モビリティ関連

まずは燃料電池モビリティの普及に取り組む企業として、トヨタ、ホンダを紹介します。これまで、トヨタは「MIRAI」、ホンダは「クラリティ」などの燃料電池自動車をリリースしており、両社とも開発を加速させています。最新のニュース情報も交えて以下に紹介します。

Toyota Motor Corporation(トヨタ) ブース:W1-19

トヨタは以前から「水素社会」の実現に向けたプロジェクトを進めており、2023年の有価証券報告書にも、以下の取り組みが記載されています。

  • タイや福島での水素エネルギーの社会実装(2022年7月のリリースなど参照)
  • 商用燃料電池車(FCEV)の量産化
  • モータースポーツの場を活用した水素エンジン技術の開発

今回の展示会では、燃料電池を使った自動車やトラックなどに搭載される燃料電池モジュールや、水素を保存するタンクが展示されるようです。水素燃料電池はエネルギー密度が高く、大型トラック輸送などの分野で活躍することが期待されています。

本田技研工業株式会社 ブース:W1-45, W19-36, E36-52

一方ホンダは、約7年前から米国のゼネラルモーターズ(GM)と共同で燃料電池システムの開発を進めています。2024年1月の日経新聞の記事によると、両社の合弁会社が、共同開発した燃料電池システムの生産を開始しています。今回の展示会では、ホンダが開発したモビリティ向けの燃料電池モジュールが展示されるようです。

燃料電池に関する本田の特許出願を追うと、1990年ごろから燃料電池に関する出願を開始しており、30年以上かけて技術を蓄積していることがわかります。モビリティに搭載する電池だけでなく、定置式の発電機なども検討しており、水素エネルギーの幅広い利用に取り組んでいるようです。

両社とも、水素エネルギーの普及に向けた幅広い取り組みを行っており、今後の展開が楽しみです。

②水素製造関連

水素燃料は、モビリティだけでなく電力インフラなど様々な用途で活用され始めています。水素エネルギーのサプライチェーンを構築するうえで基盤となる「水素製造」に取り組む企業を紹介します。

旭化成 ブース:W11-46

旭化成は水素社会の実現に向けた事業モデル構築に取り組んでいます。同社が開発した水素製造用の大型アルカリ水電解システム「Aqualyzer」は、再生可能エネルギーを使った水素の製造を可能とします。今回の展示会でも、Aqualyzerに関する展示が行われるようです。

2021年12月の日経新聞によると、旭化成は福島県で自ら水素をつくる大型設備を持っており、2024年に実証生産を開始する計画を立てています。また、水素製造に関連した同社の特許出願を見ると、2010年代の後半から出願件数が大きく増加しており、開発を加速させていることがわかります。

神戸製鋼所 ブース:W8-48

大手鉄鋼メーカーの神戸製鋼は、再生可能エネルギーの開発に積極的に取り組んでいることでも知られています。2023年9月のリリースによると、同社は兵庫県でハイブリッド型水素ガス供給システム(※)の実証試験を開始しています。今回の展示会では、水素ガス供給システムで使われる熱交換器や、気化器などが展示されるようです。

※ハイブリッド型水素ガス供給システム:液化水素を気化する装置と、再生可能エネルギーを活用した水電解式の水素発生装置を組み合わせたシステム

ちなみに神戸製鋼は圧縮した空気を利用した発電技術であるCAES(圧縮空気エネルギー貯蔵)の開発も行っており、再生可能エネルギーに関する幅広い技術を保有しています。CAESについては、以下の弊社コラムでも解説しているので、ご興味のある方はご参照ください。

【図解】CAES(圧縮空気エネルギー貯蔵)とは? ~神戸製鋼や中国科学院の最新技術を解説

③洋上風力発電関連

一方、風力発電の分野では、海上に発電設備を設置する「洋上風力発電」が急速に普及しています。材料・インフラの観点で風力発電の普及を支える2社を紹介します。

東洋紡エムシー 株式会社 ブース:W17-61

東洋紡エムシーは、東洋紡と三菱商事が共同で設立した新会社で、溶剤を回収する装置や、強度の高い有機繊維などの材料を販売しています。東洋紡の環境・機能材の事業がベースになっており、三菱商事が経営に入ることで成長スピードを高めることを目標としているようです(2023年4月の日経新聞参照)。今回の展示会では、洋上風力発電の軽量化・省資源化・長寿命化につながるスーパー繊維が展示されるようです。

ちなみに、東洋紡エムシーの出資者である東洋紡も脱炭素関連の材料を開発しています。例えば東洋紡が開発したシール材はトヨタの燃料電池車「MIRAI」に採用されており、欧州市場への進出も計画しています(2021年1月の日経新聞参照)。

古河電気工業 株式会社 ブース:W17-49

古河電工グループは2030年に向けて「地球環境を守り、安全・安心・快適な生活を実現するため、情報/エネルギー/モビリティが融合した社会基盤を創る。」というビジョンを掲げています(同社HP参照)。

古河電工はインフラに使われる電力ケーブルの技術に強みを持っています。2024年2月のAFPBB Newsによると、同社は石狩湾で商業運転が開始された、国内最大級の洋上風力発電事業において、海底ケーブルシステムを納入しています。今回の展示会でも、洋上風力の送電網に使われる電力用ケーブル保護管などを展示するようです。

古河電工は社会課題の解決に向けた新規事業の創出にも積極的に取り組んでいます。2024年2月の日経クロステックによると、技術者の新規事業創出を促進する目的でマーケティング教育の強化も進めているようです。技術者は「高度な技術」に意識が向きがちですが、新規事業では「顧客の課題を解決する技術」が重要になるので、本質的な取り組みと言えます。

④電動モビリティ向けバッテリー関連

最後に、すでに各国で普及が進む電動モビリティに搭載されるバッテリー(二次電池)について、最先端の技術を開発する国内外の企業を紹介します。

SHANDONG CHANGXIN CHEMICAL SCIENCE-TECH CO., LTD. ブース:E29-37

CHANGXIN CHEMICAL(长信化学)は、2009年に中国で設立された化学メーカーです。溶剤や洗浄剤として使われるNMP(N-メチルピロリドン)の中国トップメーカーで、NMPのサプライヤーとしては世界トップ3に入る企業として知られています。今回の展示会では、リチウムイオン電池の導電材として使用される多層カーボンナノチューブを展示するようです。

ちなみに长信化学は、溶剤に関する技術を日本企業からも取得しています。例えば、同社が保有するフォトレジスト剥離剤の特許出願であるCN102301282ACN101616889Bは、もともと出光興産から出願されています。幅広い技術を獲得するために、特許の購入なども進めていることがわかります。

DASSAULT SYSTEMS K.K. ブース:E31-51

DASSAULT SYSTEMS(ダッソー・システムズ)は、フランス最大級のソフトウェア企業で、3D設計やバーチャルツイン(デジタルツイン)などの技術を提供しています。今回の展示会ではバッテリーの設計や材料開発・製造のシミュレーションに使われるバーチャルツインが紹介されるようです。

ダッソー・システムズの技術は、医療分野でも活用されています。2021年12月のリリースによると、同社はバーチャル空間上で人体構造の挙動を再現する技術を提供しており、製薬メーカーの開発などに活用されているようです。

日本企業では、花王が自社が保有するデータの強みを生かして人体のデジタルツインに取り組んでいます。以下の弊社コラムでも紹介しているので、興味のある方はぜひご参照ください。

【図解】花王のライフケア戦略 ~特許技術の強みを生かし、健康・美容のプラットフォームをつくる

レーザーテック株式会社 ブース:E28-37

レーザーテックは1960年に設立された、検査装置のメーカーです。半導体分野で、EUV露光装置のフォトマスク(レチクル)の検査装置の市場を独占し、一気に成長した企業として注目が集まっています。今回展示されるのは、リチウムイオン電池向けの検査システムで、電池の充放電中の挙動をリアルタイムで観察できるようです。

同社の特許を調べたところ、リチウムイオン電池ではなく「全固体電池」に対応した検査装置についても出願されていました。例えば2019年に出願された「JP2020145057A - 断面形成方法及び観察方法」には、サンプルを圧縮することで、全固体電池の断面構造を忠実に再現することを可能にする技術が記載されています。

トヨタと出光により、2027~2028年ごろに全固体電池の実用化が計画されていますが、この分野でもレーザーテックの装置が普及するかもしれません。同社が半導体やディスプレイなどの分野で蓄積した検査装置の技術を、バッテリー分野にも展開していることがわかります。

このように、既存事業で育てた技術の強みを生かして新市場を開拓するマーケティング戦略は「技術マーケティング」と呼ばれます。レーザーテックの開発動向は、技術マーケティングで成長する企業の事例としても参考になりますね。

まとめ

以上、脱炭素経営EXPO・スマートエネルギーWEEKの出展企業について、燃料電池、水素製造、洋上風力、EVバッテリーの4分野における注目企業を紹介しました。新規事業の立ち上げを進める企業が多く、今後の展開が楽しみです。

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
大阪大学大学院工学研究科 招へい教員
半導体装置の設備エンジニアとして台湾駐在、米国企業との共同開発などを経験した後、スタートアップでの事業開発を経て現職。個人発明家として「未解決の社会課題を解決する発明」を創出し、実用化・事業化する活動にも取り組んでおり、企業のアイデアコンテストでの受賞経験あり。その経験を会社の仕事にも活かし、「起業家向け発明塾」では起業に向けた発明の創出と実用化・事業化を支援している。

あらゆる業界の企業や新技術を徹底的に掘り下げたレポートの作成に定評があり、「テーマ別 深掘りコラム」と「イノベーション四季報」の執筆を担当。分野を問わずに使える発明塾の手法を駆使し、一例として以下のテーマで複数のレポートを出している。
IT / 半導体 / 脱炭素 / スマートホーム / メタバース / モビリティ / 医療 / ヘルスケア / フードテック / 航空宇宙 / スマートコンストラクション / 両利きの経営 / 知財戦略 / 知識創造理論 / アライアンス戦略

 

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