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CareShowJapan注目企業2024

【レポート】Care Show Japan 2024 注目企業紹介 ~ヘルスケアデータビジネス・認知症予防など先進技術を一挙紹介!

2024年の2/20~2/22に東京ビッグサイトで開催予定の「Care Show Japan(ケアショー・ジャパン)」は、介護・医療・ヘルステックに関連する5つの専門展で構成されています。注目の出展企業について事前調査を行ったので、まとめてご紹介します。

特許情報などの参考情報も充実させたので、これから展示会に参加される方の情報収集に役立てば幸いです。また、全ての企業を網羅することはできていないので、「この企業がスゴイ・面白いよ!」といった情報があれば、弊社のX(Twitter)などで是非お気軽にコメント願います!

①医療・ヘルスケアデータビジネス関連

まずは医療やヘルスケアデータをうまくビジネスに活用し、収益化に成功している企業を紹介します。スマホやウェアラブルデバイスなどで「健康データ」は簡単に取れる時代ですが、「収益化」に苦しんでいる企業の方には参考になると思います。

住友生命保険相互会社 ブース:4G-33

住友生命は、南アフリカDiscovery社が開発した保険サービスの「Vitality」を国内で独占提供しています。展示会では無料体験プログラムも用意しているようです。

Discovery社は、アップルウォッチで計測したデータなどを元に、健康になる活動に積極的なユーザーの保険料を優遇する仕組みを開発した企業として知られています。ユーザーは運動などの活動をするほど保険料が下がるので、健康的な生活を送るインセンティブが働きます。結果的に医療費の削減にもつながるので、全員が幸せになる新たな保険ビジネスと言えます。

ちなみにDiscovery社は保険会社としては珍しく、特許出願も積極的に行っています。例えば US20180211274A1 では、健康活動をセンサーで測定し、支払に対する割引と関連付ける技術が記載されています。保険分野でビジネスモデル特許の出願を検討されている方には参考になるかもしれません。

メディカル・データ・ビジョン(株) ブース:4E-29

一方、医療データ活用の先進企業として注目されているのが、メディカル・データ・ビジョンで、病院などで取得される「診療データ」の大規模かつ高品質なデータベースを保有しています。展示会では、診療データベースをもとにした分析システムや、データ提供サービスが紹介されるようです。

メディカル・データ・ビジョンのデータベースは、病院経営の支援や、製薬企業の研究開発などに広く利用されています。同社の2023年11月の決算資料によると、診療データベースに含まれる実患者数は4500万人を突破したようです。

日本の医療データビジネスをリードする企業として、今後さらに成長しそうです。

 

②認知症予防関連

持続可能な高齢化社会に向けてニーズが高まっているのが、認知症予防の技術です。診断・予防に関する新技術を展示している企業を以下に紹介します。

(株)NeU ブース:4E-33

株式会社NeU (ニュー) は、東北大学加齢医学研究所 川島研究室の「認知脳科学知見」と、日立ハイテクの「携帯型脳計測技術」を融合し、2017年に設立された企業です(同社HP参照)。脳科学に関する幅広いソリューションを提供しており、展示会では以下3点が展示されるようです。

  • 脳と心の健康状態を手軽にチェック・管理ができる“脳健康ステーション”
  • 高齢者の認知機能を鍛え安全運転を支援する“運転脳トレ”
  • マインドフルネスによるストレス対策”Stress Manager”

    NeUは認知症の診断に関する特許も出願しており、例えば2020年に出願されたJP2021094402A「判定装置、判定方法、判定プログラム」では、ユーザーが描いた図形のデータを元に認知機能の低下を判定する技術が記載されています。産学連携の取り組みとして、今後の展開が楽しみです。

    ピクシーダストテクノロジーズ(株) ブース:4D-12

    筑波大学発ベンチャーのピクシーダストテクノロジーズ(PxDT)は、「アカデミア発の技術を連続的に社会実装すること」を目標に、産学連携を進めています(同社HP参照)。

    今回の展示会では、塩野義製薬、シオノギヘルスケアと共同で開発したTVスピーカーの「kikippa」が展示されるようです。このデバイスは、TVの音声を「ガンマ波サウンド」と呼ばれる40ヘルツの音に変調する機能があります。関連する特許として、JP7307929B1などが知られています。

    40ヘルツなど、ガンマ帯域の周波数の刺激を与える治療法は「ガンマ刺激治療」と呼ばれ、認知症の予防に効果があることが実証され始めています。以下、弊社コラムでも関連する海外企業の動向を紹介しているので、興味のある方はご参照ください。

    【徹底解説】認知症治療の最前線 ~エーザイなど製薬企業が開発する薬物療法の作用機序・非薬物療法・検査技術の最新動向

    ③在宅診療・遠隔医療関連

    過疎化が進み医師不足が深刻になる中で、自宅で診療が行える「在宅診療」や、オンラインの「遠隔医療」のニーズが高まっています。在宅診療・遠隔医療用のデバイスを提供する企業の情報を以下に紹介します。

    GEヘルスケア・ジャパン(株) ブース:4G-11

    GEヘルスケアは米国のゼネラル・エレクトロニクス(GE) からスピンオフした医療技術企業です。2023年1月にスピンオフを完了し、ナスダック株式市場に上場しています(GEヘルスケアのHP参照)。

    GEヘルスケアは、一人ひとりにあった質の高い医療を提供する「プレシジョン・ヘルス」をミッションに掲げ、医療デバイスやAIサービスなどを提供しています。展示会では、在宅診療でも使いやすいコンパクトな超音波エコー装置や、超音波画像診断装置が展示されるようです。

    GEヘルスケアは、ヘルスケア関連のソフトウェア・AI開発者を支援する「Edisonデベロッパー・プログラム」を提供していることでも知られています。2020年7月の日経新聞によると、同社はアマゾンAWSと連携し、クラウド上に構築された開発環境を日本企業に提供する取り組みも開始しています。

    単なる医療機器の開発企業ではなく、開発のプラットフォーマーとしても成長を続けており、要注目の企業です。

    SOMPO Light Vortex(株) ブース:4D-30

    SOMPO Light Vortex(ライトボルテックス)株式会社は、2021年にSOMPOホールディングスが設立した子会社です。DX化に向けて、デジタル技術を活用した商品やサービスを幅広く提供しています。展示会では、遠隔地にいる医師に患者の多角的なデータを提供できる診療支援機器「TytoCare」が展示されるようです。

    SOMPOホールディングスはDX推進のためのイノベーション部門としてSOMPO Digital Labを設置しています。保険・介護・ヘルスケア関連の事業が中心ですが、モビリティ等の分野でも開発を進めているようです。例えば、2020年に出願されたUS20220132319A1 では、車内に未承認のデバイスがあるかどうかを検知するスキャナーなどの技術が記載されています。

    住友生命保険相互会社の項で紹介したDiscovery社だけでなく、日本の保険大手も新規事業の創出に積極的に取り組んでいるようです。

    ④ヘルスケア食品・介護食関連

    最後に、介護食など健康管理に役立つ技術・製品を開発する企業を紹介します。高齢化社会において、おいしい食事を長く続けられるための技術のニーズもますます増加することが予想されます。

    (株)林原 ブース:4C-02/4A-06

    株式会社林原は、食品や医薬品の原料や試薬を開発・製造販売するメーカーで、2012年に長瀬産業の完全子会社になっています(長瀬産業のリリース参照)。糖質のトレハロースの量産に成功した企業として知られています。

    展示会では、おいしくて食べやすく、かつ栄養豊富な介護食などに使われる食品原料として、糖質や食物繊維などが展示されるようです。食品メーカーで新商品開発に取り組まれている方は参考になるかもしれません。

    林原は多糖類の開発技術の強みを生かし、医療分野でも活躍しています。例えば、2018年9月のリリースによると、スイス製薬大手のロンザ社とパートナーシップを結び、カプセルの原料となる多糖類を供給するとともに、新商品開発に取り組むことを計画しています。

    新田ゼラチン(株) ブース:4C-02

    新田ゼラチン株式会社は、ゼラチンの製造販売で国内トップシェアを持つメーカーです(同社HP参照)。展示会では、介護食のタンパク質量アップに役立つ添加剤などが展示されるようです。

    新田ゼラチンも、食品分野だけでなく医療分野の事業開発も積極的に進めています。例えば2022年に出願されたWO2023089906A1 「局所注射剤用の漏出抑制剤、これを含む局所注射剤、および局所注射剤の製造方法」では、局所注射の有効成分が分散するのを抑制する材料として、ゼラチンを使う技術が記載されています。

    林原、新田ゼラチンともに、食品事業で育てた技術の新用途を、医療分野で開拓していることが分かります。既存事業で育てた技術の強みを生かして新市場を開拓するマーケティング戦略は「技術マーケティング」と呼ばれます。技術マーケティングで成長する企業の事例としても参考になりますね。

    まとめ

    以上、Care Show Japanの出展企業について、データビジネス、認知症予防、在宅診療・遠隔医療、ヘルスケア食品・介護食の4分野における注目企業を紹介しました。新規事業の立ち上げを進める企業が多く、今後の展開が楽しみです。

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    畑田 康司

    畑田康司

    TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
    大阪大学大学院工学研究科 招へい教員
    半導体装置の設備エンジニアとして台湾駐在、米国企業との共同開発などを経験した後、スタートアップでの事業開発を経て現職。個人発明家として「未解決の社会課題を解決する発明」を創出し、実用化・事業化する活動にも取り組んでおり、企業のアイデアコンテストでの受賞経験あり。

    あらゆる業界の企業や新技術を徹底的に掘り下げたレポートの作成に定評があり、「テーマ別 深掘りコラム」と「イノベーション四季報」の執筆を担当。分野を問わずに使える発明塾の手法を駆使し、一例として以下のテーマで複数のレポートを出している。
    IT / 半導体 / 脱炭素 / スマートホーム / メタバース / モビリティ / 医療 / ヘルスケア / フードテック / 航空宇宙 / スマートコンストラクション / 両利きの経営 / 知財戦略 / 知識創造理論 / アライアンス戦略

     

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