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電動モビリティとは?

【詳説】電動モビリティとは? ~3種類(EV, 超小型EV, マイクロモビリティ)の違いと市場の全体像

本記事では、「電気を使った乗り物」の総称である「電動モビリティ」について種類ごとの特徴と市場動向を解説します。

電気を使った乗り物というと「電気自動車(EV)」のイメージが強いですが、小型のEVや1人乗りの電動キックボードなど様々な種類の製品が登場しています。まず、電動モビリティのカテゴリーごとの仕様の違いを解説した後、それぞれの市場がどう成長したかを紹介します。

電動モビリティ3種類の違い

3種類の電動モビリティの比較(写真はそれぞれの車種のWikipediaより)

3種類の電動モビリティの比較(写真はそれぞれの車種のWikipediaより)


まず、EV、超小型EV(マイクロEV)、電動マイクロモビリティという3種類の電動モビリティについて比較しながら整理します(上図参照)。それぞれ以下のように定義できます。

①EV(電気自動車)

  • 速度や乗車人数などの点で一般的な乗用車と同程度の性能を持つ電気自動車(加速性能などでは優位性あり)
  • 代表例としてテスラの「モデル3」、ボルボのPolestar 3 などが知られている

②超小型EV(IGI Globalの定義、Loustric & Matyas, 2020 参照)

  • 1 人乗りまたは 2 人乗りの小サイズの電気自動車で、100万円以下の安価なモデルが多い
  • 出力 4〜10 KWh のバッテリーを搭載
  • 一般のEVと比較して最高速度が制限される
  • 代表例としてシトロエン社(欧州)のAMIや、ウーリン社(中国)の宏光MINI EVなどが知られている

③電動マイクロモビリティ(2019年の ITDP レポートを参考に記載)

  • 低速度・小型・軽量で、通常は短距離移動に使われる電動交通手段
  • 1人乗りの電動アシスト付き自転車や、電動キックボード(e-scooterとも呼ばれる)などが含まれる

※ITDP:INSTITUTE FOR TRANSPORTATION & DEVELOPMENT POLICYの略。持続可能で公平な交通を促進する活動を行う米国の非営利団体

これらの電動モビリティ市場が広がった背景には、テスラを始めとするEVメーカーの活躍があります。次項では電動モビリティ市場が成長するまでの流れを解説します。

EV・超小型EVとマイクロモビリティの市場成長の流れ

まずEVが普及して超小型EVが続く

世界のEVの販売台数と関連ニュース(国際エネルギー機関のレポート「Global EV Outlook 2023」のグラフに追記して作成)

世界のEVの販売台数と関連ニュース(国際エネルギー機関のレポート「Global EV Outlook 2023」のグラフに追記して作成)


上のグラフは、世界のEVの販売台数の推移を示したものです(完全電動の自動車のみ集計)。2022年の販売台数は1000万台を突破しており、特に2020年代の成長スピードが大きいことが分かります。市場が成長するまでの流れを、以下に簡単に整理します。

  • 2003年に設立されたテスラは、2008年に最初のEV「ロードスター」の販売を開始。2012年に充電設備の「Supercharger」の運用も開始する。この時期のテスラEVは「高所得者向けのエコなスポーツカー」というイメージで、ニッチな市場を押さえて徐々に販売数を伸ばす
  • 2017年にテスラの「モデル3」が販売開始。一般消費者向けの「小型で低価格なEV」として販売され、2018年以降に販売台数で世界トップに。2019年は、世界のEV販売台数の14%を占めるダントツのトップに(2020年2月のCleanTechnica記事参照)
  • モデル3の好調もあり、2020年にテスラは黒字化を達成。株価も急上昇し、時価総額でトヨタを上回る
  • 2020年にシトロエン社の超小型EV「AMI」が発売され、2022年7月までに欧州全体で2万件以上の受注を獲得(シトロエンの親会社「ステランティス」のリリース参照)

2010〜2020年の10年でテスラ以外のEVメーカーも立ち上がり、Superchargerなどの充電設備の数も増加しています。つまり、EVの製造に必要なバッテリーなどの技術と、移動にEVを使うためのインフラが整ったことになります。

超小型EVは、参入ハードルが十分に下がった時期にリリースされたので、急速に市場を拡大できたようです。

※テスラとトヨタとの戦略の違いについては、以下の記事で解説しています。

【詳説】テスラとトヨタの経営戦略の違い ~時価総額逆転の背景・EV開発戦略を特許情報から比較分析

マイクロモビリティの市場も急成長

米国におけるマイクロモビリティのシェアリングサービスの利用回数の推移(NATCOの2022年のレポートのグラフに追記して作成)

米国におけるマイクロモビリティのシェアリングサービスの利用回数の推移(NATCOの2022年のレポートのグラフに追記して作成)
※NATCO(National Association of City Transportation Officials):米国の主要都市の交通機関の協会


続いて、一人乗りのマイクロモビリティの市場動向を紹介します。

マイクロモビリティの歴史は長く、1993年にヤマハが世界で初めて電動アシスト自転車をリリースしています(同社HP参照)。ただ、クリーンエネルギー化の需要が高まる中で、電動スクーターなど新たなマイクロモビリティが登場し、最近になって市場が急成長しています。Fortune Business Insightsのレポートによると、電動スクーターの市場規模は2021年の約152億ドルから、2028年までに310億ドル以上に成長することが予想されています。

また、共用のマイクロモビリティを使う「シェアリングサービス」の市場も急成長しています。上のグラフは、米国でマイクロモビリティのシェアリングサービスを利用した人の累計の利用回数を示したものです。2018年に利用が急増しており、

2018年に電動スクーターの利用が急増した理由として、以下の2点があげられます(NACTOのレポート参照)。

・LimeやSpinなどの新興企業が電動スクーターのシェアリングサービスを開始
・サンフランシスコ市などが共用の電動自転車を地域の交通システムとして採用

2020年にコロナ禍で通勤制限などが発生した結果、利用が減少していますが、2021年にはかなり回復しており、今後も増加することが予想されています。超小型EVとは少し違う広がり方ですが、マイクロモビリティの市場も確実に成長しているようです。

※本記事では「陸上交通」の電動化に絞って解説していますが、「空」の電動化については以下の記事で詳しく解説しています。

【図解】空飛ぶクルマ「eVTOL」とは? ~ヘリコプターとの違いと現状の課題、デンソー・ハネウェルなどメーカーによる実用化の最前線

多様化が進む電動モビリティ市場の今後

以上、3種類の電動モビリティについて、それぞれの特徴と、どのような流れで市場が成長したかを解説しました。テスラがまずEV市場を立ち上げて市場を広げた後に、超小型EVの市場が立ち上がり、EVの多様化が進みました。一方、マイクロモビリティはシェアリングサービスの急速な普及など、EVとは異なる方向から市場を拡大しています。

そもそも本来は「電気」の方が「ガソリン」よりも使い勝手が良く、排気ガスも出さないので、電動モビリティが普及するのは自然な流れです。今後、さらに製品の多様化と高度化が進むことが予想されます。市場の全体を俯瞰する際に、本記事が役立てば幸いです。

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
大阪大学大学院工学研究科 招へい教員
半導体装置の設備エンジニアとして台湾駐在、米国企業との共同開発などを経験した後、スタートアップでの事業開発を経て現職。個人発明家として「未解決の社会課題を解決する発明」を創出し、実用化・事業化する活動にも取り組んでおり、企業のアイデアコンテストでの受賞経験あり。その経験を会社の仕事にも活かし、「起業家向け発明塾」では起業に向けた発明の創出と実用化・事業化を支援している。

あらゆる業界の企業や新技術を徹底的に掘り下げたレポートの作成に定評があり、「テーマ別 深掘りコラム」と「イノベーション四季報」の執筆を担当。分野を問わずに使える発明塾の手法を駆使し、一例として以下のテーマで複数のレポートを出している。
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