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電動航空機の最前線_空輸の電動化

【図解】電動航空機の最前線 ~電動化の課題とデンソーなどメーカーの最新動向

「電動航空機」とは、モーターなどの電動機を動力源として使用する航空機(飛行機)のことを指します。ジェットエンジンを搭載した飛行機に比べて温室効果ガスの排出量が少ないメリットがあり、近年急速に市場が拡大しています。

本記事では、最新の電動航空機としてeVTOL(※)とシーグライダーを取り上げ、その特徴と、デンソーやハネウェルなど関連メーカーの動向を解説します。

※eVTOL:Electric Vertical Take-off and Landingの略。電気を動力源に、垂直に離着陸できる乗り物の総称

※脱トヨタに向けて電動化を急速に進めるデンソーの戦略については以下の記事で解説しています。

【図解】デンソーの強みを生かした電動化戦略 ~トヨタ車で培った技術の新用途を開拓するマーケティング戦略を解説

電動航空機の特徴とデンソーの開発動向

最新の電動航空機「eVTOL」と「シーグライダー」

電動航空機の例(eVTOLの写真はLilium社の投資家向けプレゼン資料より、シーグライダーの図はRegent Craft の特許 US11420738B1 より)

電動航空機の例(eVTOLの写真はLilium社の投資家向けプレゼン資料より、シーグライダーの図はRegent Craft の特許 US11420738B1 より)

まず、電動航空機の具体例を見ていきます。最新型の電動航空機として最も注目を浴びているのが「eVTOL」で、2025年頃の実用化に向けて多数の企業が開発を進めています。eVTOLの市場規模は2020年時点では10億ドル程度ですが、2022年10月のNEWCASTの記事によると、2030年には300億ドル以上に成長することが予想されています。最初の用途として、都市間をつなぐ短距離輸送(80km以内の人やモノの移動)への利用が想定されています。

一方、沿岸部や離島への「海上輸送」に使われるのが「シーグライダー」と呼ばれる電動航空機で、米国スタートアップの「Regent Craft」が開発をリードしています。海上を低空飛行するシーグライダーはエネルギー効率が高く、eVTOLの2倍程度の距離を飛ぶことが可能です。Regent CraftのHPによると、同社は「eVTOLの短距離輸送とシーグライダーの中距離輸送を組み合わせた輸送ネットワーク」の構築を構想しています。

※シーグライダーについては以下の記事で詳しく解説しています。

【詳説】最先端の水上飛行機「シーグライダー」とは? ~Regent Craft、DARPAの最新技術を紹介

電動航空機に共通する機構と技術的な課題

eVTOLとシーグライダーの機体の共通点(eVTOLの写真はLilium社の投資家向けプレゼン資料より、シーグライダーの図はRegent Craft の特許 US11420738B1 より)

eVTOLとシーグライダーの機体の共通点(eVTOLの写真はLilium社の投資家向けプレゼン資料より、シーグライダーの図はRegent Craft の特許 US11420738B1 より)

続いて、電動航空機の技術的な特徴と課題を解説します。上図に示したように、eVTOLとシーグライダーの機構に共通するのが「小型モーター(プロペラ)」を多数搭載していることです。電気自動車(EV)にもモーターは搭載されていますが、電動航空機はEVよりも小型のモーターが多数搭載されるので、EVとは異なる仕様のモーターが必要です。

飛行する力を生み出すための「出力(パワー)」と、機体を軽くするための「軽量化」の両立が求められるため、EVよりも高度な技術力が必要です。よって、eVTOLの事業に参入する上で「モーター技術」が障壁になります。

デンソーはeVTOL用モーターの開発に力を入れている

eVTOL用モーターに関するデンソーの特許出願件数(特許分析ツールTokkyo.Aiを用いて分析。キーワードに「eVTOL」を含み、モーター関連のIPC分類「H02K」の出願を抽出)

eVTOL用モーターに関するデンソーの特許出願件数(特許分析ツールTokkyo.Aiを用いて分析。キーワードに「eVTOL」を含み、モーター関連のIPC分類「H02K」の出願を抽出)

上記の「eVTOL用モーター」の開発をリードしているのが日本企業のデンソーです。2022年5月のデンソーのリリースによると、デンソーは米国企業のハネウェルと提携してモーター開発を進め、共同開発したモーターは前出の「Lilium」のeVTOLに採用されています。

モーター開発に関するデンソーの最新動向を把握するため、eVTOL用モーターに関する特許出願の件数を調べました。上のグラフのように2022年に出願件数が急増しており、開発が加速していることが伺えます。2025年のeVTOL実用化における、デンソーの活躍が楽しみです。

電動航空機市場のキーになるメーカーは「ハネウェル」

ハネウェルの運航管理プラットフォーム「Anthem」

ハネウェルのAnthemを使った操作のイメージ(同社の投資家向けプレゼン資料の図に追記して作成)

ハネウェルのAnthemを使った操作のイメージ(同社の投資家向けプレゼン資料の図に追記して作成)

ハネウェルは多業種の事業をてがける巨大企業(コングロマリット)で、「航空宇宙事業」の一環として電動航空機に関する製品を販売しています。製品ラインナップは航空機の制御システムやセンサー、スイッチなど多岐にわたります。

代表的な製品の1つが「Anthem(アンセム)」で、航空機のパイロットがコックピットで利用するシステムです。元々はエンジン駆動の航空機で使われていましたが、eVTOLなどの電動航空機でも採用されています。上図のようにタッチパネルで操作でき、飛行ルートなどガイド情報がパネルに表示されるので、パイロットは直感的に操縦を行うことができます。

電動航空機のエコシステムをつくるハネウェルの戦略

ハネウェルがつくるeVTOLのエコシステムのイメージ

ハネウェルがつくるeVTOLのエコシステムのイメージ

ハネウェルは技術を開発するだけでなく、他社とのオープンイノベーションやスタートアップ支援による「電動航空機のエコシステムづくり」を進めています(上図参照)。以下に関連する動向を整理します。

・デンソーと提携して電動モーターを開発。開発したモーターはスタートアップのLiliumが採用
・操縦システムのAnthemなど、自社の技術ををLiliumやVertical Aerospace、Archer Aviationなどのスタートアップに提供(2022年7月のAVIATION WEEKの記事参照)
・ハネウェルはスタートアップがeVTOLなどの航空機の認証を取るためのサポート情報も提供しており、ハネウェルのHPで認証ガイドを公開

先述した通り、eVTOLの普及において「軽量・高出力のモーター開発」はハードルになりますが、ハネウェルは提携したデンソーを支援することで、そのハードルを超えています。また、スタートアップに幅広く技術を提供することで、eVTOL市場にスムーズに参入できる仕組みをつくっています。

加えて、ハネウェルは電動航空機の認証ガイドなどの情報提供を行っています。「認証プロセスが複雑で、時間がかかること」は航空機開発における大きな課題ですが、ハネウェルは認証プロセスをスムーズ進めるための支援を行い、参入ハードルを下げています。

つまり、ハネウェルは電動航空機の技術開発と同時に、参入を促して市場を拡大するための仕組みづくりを進めていることになります。電動航空機を使ったサービスを自社で運営するわけではないので、消費者にはハネウェルの存在は意識されにくいですが、実はハネウェルが市場の成長をコントロールしています。

デンソーやハネウェルが切り拓く電動航空機の未来

以上、電動航空機について、eVTOLとシーグライダーを例として取り上げ、メーカーの最新動向を解説しました。電動航空機の機体開発では海外のスタートアップが先行していますが、日本のデンソーもモーターという重要なコンポーネントの開発で活躍しています。また、米国のハネウェルは電動航空機に関する技術開発に加えて、市場を広げるエコシステムづくりにも取り組んでおり、この分野のキーになる企業と言えます。

電動航空機を使ったサービスは、2025年頃から本格的に立ち上がることが予想されているので、今後の展開が楽しみです。

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
大阪大学大学院工学研究科 招へい教員
半導体装置の設備エンジニアとして台湾駐在、米国企業との共同開発などを経験した後、スタートアップでの事業開発を経て現職。個人発明家として「未解決の社会課題を解決する発明」を創出し、実用化・事業化する活動にも取り組んでおり、企業のアイデアコンテストでの受賞経験あり。その経験を会社の仕事にも活かし、「起業家向け発明塾」では起業に向けた発明の創出と実用化・事業化を支援している。

あらゆる業界の企業や新技術を徹底的に掘り下げたレポートの作成に定評があり、「テーマ別 深掘りコラム」と「イノベーション四季報」の執筆を担当。分野を問わずに使える発明塾の手法を駆使し、一例として以下のテーマで複数のレポートを出している。
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