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ヤマハの超小型モビリティによる市場開拓

【図解】ヤマハ発動機の超小型モビリティ(マイクロモビリティ)の最新動向を特許から分析

発明塾セミナー:電動化・自動運転普及に向けてデンソー・ボッシュはどう事業を変革するか?

ヤマハ発動機は、オートバイを中心とする輸送用機器のメーカーで、楽器メーカーのヤマハとは1955年に分離されています(※)。

本記事では、ヤマハ発動機の超小型モビリティの最新動向を特許情報をもとに詳しく解説します。ヤマハの技術的な進歩や、その他のメーカーとの比較、そして市場の今後の見通しについても触れていきます。

ヤマハ発動機HP参照。本稿では、ヤマハ発動機を「ヤマハ」と省略して記載

※電動モビリティの全体像については以下の記事で解説しています。

【詳説】電動モビリティとは? ~3種類(EV, 超小型EV, マイクロモビリティ)の違いと市場の全体像

ヤマハ発動機は超小型モビリティ(マイクロモビリティ)の先駆け

ヤマハは超小型モビリティを世界に先駆けて開発

ヤマハPASの外観(Wikipediaより)

ヤマハPASの外観(Wikipediaより)

超小型モビリティとは、自動車よりもコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れた1人~2人乗り程度の車両を指します(国土交通省HPより)。

ヤマハは超小型モビリティの先進企業で、1993年に世界初の電動アシスト自転車PAS(パワー・アシスト・システム)をリリースしています(上図参照)。電動アシスト自転車は、人間の力とモーターの力を組み合わせてペダルを漕ぐことをサポートする機能を持ち、世界中で販売されています。

電動アシスト自転車市場の形成に関する論文(尾田、江藤, 2019)によると、ヤマハは道路交通法の規制緩和に向けた行政へのロビイング活動も行っています。超小型モビリティの技術を開発するだけでなく、市場を広げるための法整備まで自社で取り組んでおり、超小型モビリティ市場の創出におけるリーディングカンパニーと言えます。

ヤマハの特許に書かれた電動バイクの構造と最新動向

ヤマハの電動バイクの構造(同社の特許 JP5636439B2 の図に追記して作成)

ヤマハの電動バイクの構造(同社の特許 JP5636439B2 の図に追記して作成)

ヤマハは超小型モビリティとして上図のような「電動バイク」も開発しています。バイクの中央にバッテリーが設置されており、後輪の電動モーターに電源を供給し、走行する仕組みになっています。ヤマハの電動バイクE-Vinoのページを見ると、バッテリーはシートを開いて取りだすことが可能で、室内で充電できます。

ヤマハの2022年3月のリリースでは、バッテリーが車両に固定された電動スクーター「E01(イーゼロワン)」の実証実験を日本だけでなく、欧州、台湾、インドネシア、タイ、マレーシアでも開始することを発表しています。充電はバイク販売店などに設置された充電器を使って行い、満量まで充電すると100㎞以上の走行が可能です。前記のE-Vinoの走行距離は最大約32㎞なので、3倍以上の距離を走行できることになります。

以上は、自転車やバイクなど一般消費者向けの超小型モビリティですが、ヤマハは企業向け(BtoB)の分野でも超小型モビリティの市場を拡大しています。次項で解説します。

超小型モビリティのプラットフォームをつくるヤマハの戦略

YAMAHA MOTOR PLATFORM CONCEPTの内容

ヤマハは2023年3月のリリースで、「YAMAHA MOTOR PLATFORM CONCEPT(ヤマハ モータープラットフォームコンセプト」という超小型モビリティのコンセプトを発表しています。このコンセプトは、「1〜2人乗りの低速モビリティ」に幅広く対応できる電動ユニットに関するもので、ホンダと共同で開発されています。

ヤマハのYouTube動画で用途のイメージが公開されており、例えば以下の用途が検討されています。

  • 工場内の物品の輸送
  • 農地における農業資材の搬送
  • ショッピングモールにおける商品の搬送

BtoBのニッチな用途が中心ですが、低速で安全な搬送が求められる市場を幅広く押さえようとしていることがわかります。

ヤマハの特許に書かれた工場向け超小型モビリティ

物品搬送に使われる超小型モビリティのイメージ(ヤマハの特許JP7260714B2の図に追記して作成)

物品搬送に使われる超小型モビリティのイメージ(ヤマハの特許JP7260714B2の図に追記して作成)

続いて、モータープラットフォームがどう使われるかを詳しく調べるため、関連特許の内容を読んでいきます。ヤマハの特許JP7260714B2「自動搬送車」では、工場などで搬送に使われるモビリティの機構が記載されています(上図参照)。左側の超小型モビリティが右側の台車を引っ張り、台車に載った荷物を搬送します。例えば、複数の製造ラインに必要なパーツを、必要な数だけ届けることに利用できます。

特許のポイントになる技術は、タイトルの通り「自動運転」です。工場の中は一般道よりも管理が行き届いており、予想外のトラブルも少ないので、自動運転に必要な技術ハードルも低くなります。まずはハードルの低い分野で自動運転技術の実績をつくり、徐々に技術の幅を広げていく作戦ではないかと推測できます。BtoBの超小型モビリティ市場でもヤマハの影響力は拡大しそうです。

ヤマハがつくる超小型モビリティの未来

ここまで、ヤマハが超小型モビリティ市場でのリーダーシップを築いてきた背景や技術的な取り組みを解説しました。電動アシスト自転車PASのリリースに始まり、最近はBtoB向けのプラットフォーム開発にも取り組んでおり、超小型モビリティ市場を新たに開拓するリーディングカンパニーと言えます。

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
大阪大学大学院工学研究科 招へい教員
半導体装置の設備エンジニアとして台湾駐在、米国企業との共同開発などを経験した後、スタートアップでの事業開発を経て現職。個人発明家として「未解決の社会課題を解決する発明」を創出し、実用化・事業化する活動にも取り組んでおり、企業のアイデアコンテストでの受賞経験あり。その経験を会社の仕事にも活かし、「起業家向け発明塾」では起業に向けた発明の創出と実用化・事業化を支援している。

あらゆる業界の企業や新技術を徹底的に掘り下げたレポートの作成に定評があり、「テーマ別 深掘りコラム」と「イノベーション四季報」の執筆を担当。分野を問わずに使える発明塾の手法を駆使し、一例として以下のテーマで複数のレポートを出している。
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