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倉庫ロボットメーカーの最先端

【図解】倉庫ロボットの最先端 ~技術の概要とオムロン・inVia Roboticsなどメーカーの動向

2023.8.30

倉庫内の作業を行う「倉庫ロボット」は、物流の自動化において不可欠な技術となっており、ユニクロやヨドバシカメラなど日本の大手小売企業も導入しています。本記事では、倉庫ロボットが行う作業の概要と、具体的なロボットの種類、現状の課題とそれを解決するオムロンやinVia Roboticsなど主要な倉庫ロボットメーカーの動向をまとめて紹介します。

倉庫ロボットの概要 ~主な作業、メーカー、現状の課題

倉庫ロボットの主な作業は「搬送・仕分け・ピッキング」

倉庫ロボットが自動化する作業の概要

倉庫ロボットが自動化する作業の概要


倉庫ロボットは倉庫に荷物が搬入されてから出荷されるまでの作業を自動化するロボットで、上図のように主に3つの作業を行います。

①搬送:次の作業工程を行う場所まで荷物を移動する 
②仕分け:荷物を分類し、棚の所定の位置に収納する
③ピッキング:受注に応じて出荷する荷物を選別し、棚からピックアップする

①~③の全ての作業を全自動で行うシステムもありますが、搬送だけを行うロボットや、仕分け・ピックアップに特化したロボットも知られています。次項では具体的なロボットの種類とメーカーを紹介します。

倉庫ロボットの種類と主なメーカー

主な倉庫ロボットの種類(搬送ロボットはギークプラスの特許JP6691976B2、アーム型ロボットはABBの特許US11007648B2、倉庫全体の自動化はExotecの出願 の図に追記して作成)

主な倉庫ロボットの種類(搬送ロボットはギークプラスの特許JP6691976B2、アーム型ロボットはABBの特許US11007648B2、倉庫全体の自動化はExotecの出願 の図に追記して作成)


よく利用される倉庫ロボットの種類を上図に整理しました。

前記の「搬送」に使われるロボットは、一般的に倉庫で使われる「台車」に近いシンプルな機構が主流になっています(上図左)。タイヤ付きのロボットの上に荷物を置くと、次の工程まで自動で運んでくれるので、作業者が移動する手間を削減できます。このように、自律的に走行して搬送を行うロボットはAMR(Autonomous Mobile Robot;自律走行搬送ロボット)と呼ばれ、中国企業のギークプラスが世界シェアNo.1を獲得しています(2022年12月の物流ニュース参照)。また、日本でもヤマハ発動機やオムロンなどの企業が様々なAMRを開発しています。

また、仕分けやピッキングに使われる汎用的なロボットとして、アーム型のロボットが知られています。上図(中央)のようにアーム先端で商品を吸着し、移動できるため、様々な商品を柔軟に扱うことができます。代表的なメーカーとして、スイスのABBグループや日本のファナックなどが知られています。

上記2つは倉庫内作業の「一部」を自動化するロボットですが、「倉庫全体」を自動化する「システム」を販売するメーカーも登場しています。例えばフランスの「Exotec」は、「Skypodシステム」と呼ばれる自動倉庫システムをユニクロやヨドバシカメラなどの企業に提供しています(2022年12月のMONOist記事参照)。上図(右)のように、搬送ロボットが棚を左右だけでなく上下にも移動して商品の仕分けとピッキングを行うため、大量の商品を自動で管理できます。

※物流以外でも活躍するヤマハ発動機の技術については、以下の記事で解説しています。

【図解】ヤマハ発動機の超小型モビリティ(マイクロモビリティ)の最新動向を特許から分析

倉庫ロボット導入における主な課題

上記の倉庫ロボットシステムは、人件費削減やミスの防止、発注から出荷までの時間短縮など様々なメリットがあります。ただ、多くの企業が導入に踏み切れない背景には以下の課題があります。

  • 既存の倉庫システムと組み合わせることができるロボットが見つからない
  • ロボットの価格が高く、初期投資に踏み切れない

多くの企業が、既存システムとの互換性やコストの課題により倉庫ロボット導入に踏み切れていないようです。次項では、これらの課題を解決するメーカーの最新動向を紹介します。

※倉庫管理だけでなく、物流全体の自動化に挑戦する英国企業「オカド」の経営戦略は以下の記事で詳しく解説しています。

【詳説】オカド(Ocado)とはどんな企業か? ~ネットスーパーを変革する経営戦略をIR・特許から分析

倉庫ロボットの課題を解決するメーカー ~オムロン・inVia Roboticsの事例

センサ技術で倉庫ロボットの柔軟性を改善するオムロン

オムロンの倉庫ロボット技術の概要(同社の出願 WO2022190514A1 の図に追記して作成)

オムロンの倉庫ロボット技術の概要(同社の出願 WO2022190514A1 の図に追記して作成)


オムロンはロボットの「眼」となる「センサー」に関する優れた技術を持っており、先述した自律走行搬送ロボット(AMR)の開発でもその強みを生かしています。例えば同社の出願
WO2022190514A1「搬送システム」 では、搬送ロボットが自律走行する際の位置精度を改善する技術について記載されています。

上図のように、搬送ロボットには通信用のアンテナと画像センサ(カメラ)が搭載されています。図の右側に示したように、複数のロボットが集まると、それぞれのカメラがお互いの位置を捉えた状態になります。把握した位置データをたがいに共有することで、自分がいる位置を正確に把握することができ、自律走行の精度が上がります。

この技術により、倉庫の環境によらず精度の高い自律走行が可能になります。ロボット導入のために既存の倉庫システムを変更する必要も無いので、導入のハードルを下げることができます。

サブスクで倉庫ロボットを提供するinVia Roboticsのビジネスモデル

一方、米国企業のinVia Roboticsは、ビジネスモデルの工夫により「コスト」の課題を解決しています。2020年12月のデジタルクロスの記事によると、同社は顧客に倉庫ロボットをレンタルし、「ロボットが品物をピッキングし、所定の場所まで運ぶごとに課金」するシステムを提供しています。顧客は初期費用をほとんどかけずに倉庫ロボットを利用できるので、導入ハードルが大きく下がります。

このようにロボットをモノとして売るのではなく、「ロボットを使ったサービス」として利用量に応じて課金する仕組みは「Robotics as a service(RaaS)」と呼ばれています。アーム型ロボットのメーカーとして紹介したABBグループも産業用ロボットでRaaS事業を構築しています。

オムロンのように技術力で課題を解決するアプローチと、inVia Roboticsのようにビジネスモデルの工夫で課題を解決するアプローチがそれぞれ進んでおり、倉庫ロボットの普及はますます加速しそうです。

倉庫ロボットの普及による物流自動化の今後

以上、倉庫ロボットについて、搬送、仕分け、ピッキングなど作業の概要と、ロボットの種類ごとの主要メーカー、既存の倉庫システムとの互換性や初期費用など現状の課題を紹介しました。オムロンや inVia Roboticsなど、課題を解決するメーカーの活躍により、今後はさらに多くの企業が倉庫ロボットを導入することになりそうです。

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
大阪大学大学院工学研究科 招へい教員
半導体装置の設備エンジニアとして台湾駐在、米国企業との共同開発などを経験した後、スタートアップでの事業開発を経て現職。個人発明家として「未解決の社会課題を解決する発明」を創出し、実用化・事業化する活動にも取り組んでおり、企業のアイデアコンテストでの受賞経験あり。

あらゆる業界の企業や新技術を徹底的に掘り下げたレポートの作成に定評があり、「テーマ別 深掘りコラム」と「イノベーション四季報」の執筆を担当。分野を問わずに使える発明塾の手法を駆使し、一例として以下のテーマで複数のレポートを出している。
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