2022年の航空法改正によりドローン(無人航空機)の利用はさらに加速しています。
本記事では、クロネコヤマト(ヤマト運輸)によるドローンの活用戦略を解説します。まず、法改正など背景情報を解説した後、クロネコヤマトの最新動向を紹介します。後半では、クロネコヤマトが自社のコア技術として開発中の貨物ユニットについても解説するので、物流革命の最先端情報として是非ご一読ください。
まず、物流へのドローン利用に関する世の中の動きを簡単に説明します。
2022年6月に成立した航空法改正により、ドローンなどの無人航空機を「市街地などで人が監視しない状態で飛ばすこと」が可能になりました。クロネコヤマトのような物流企業にとっては、「ドローンによる配送システム」を実用化できる法的な枠組みが整ったことになります。
国土交通省が発表した「ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドライン」(Ver.4.0、2023年3月)では、ドローンの配送サービスに関連する詳細なガイドラインが示されています。上図のように、レベル3では「無人地帯」に限られていたドローンの飛行が、市街地などの「有人地帯」でも可能になっています。
上記の背景を踏まえ、クロネコヤマト(ヤマトホールディングス株式会社)、佐川急便、日本郵便、JAL、ANAなど、物流・航空の大手企業がドローン輸送の実証実験を進めています(2022年12月のカーゴニュース参照)。
例えばクロネコヤマトは2021年11月のリリースで、医薬品の輸送ネットワークにドローンを活用する実証実験の開始を発表しています。高齢化と過疎化が進む地域では、高齢者が医薬品を受け取るための物流ネットワーク不足が課題になっていますが、ドローンの自動配送により解決できることが期待されています。
また、2022年4月のクロネコヤマトのリリースによると、同社はオーストリアのサイクロテック社が開発した最新型ドローンを使った配送システムの構築にも取り組んでいます。サイクロテック社のドローンは上図のように複数のブレード(羽根)がついたローターを4方向に搭載した構造をとっており、離陸・着陸の際に垂直に移動することができます。このタイプの電動航空機はeVTOL(電動垂直離着陸航空機)とも呼ばれます。
※eVTOLについては以下の記事で詳しく解説しています。
【図解】空飛ぶクルマ「eVTOL」とは? ~ヘリコプターとの違いと現状の課題、デンソー・ハネウェルなどメーカーによる実用化の最前線
上記のサイクロテック社との協業でもわかるように、クロネコヤマトはドローン自体は他社の製品を使っています。一方、ドローンが運ぶ「貨物ユニット」については自社開発を進めており、特許出願も進めています。
例えばクロネコヤマトの出願 WO2020174648A1「ポッド、及び、ドローンシステム」では、ドローンで配送するための「ポッド」と呼ばれる貨物ユニットの構造が記載されています。上図のように、ドローンの中央に貨物ユニットを搭載して搬送し、地上におろした際はタイヤを使って手軽に搬送できる構造になっています。
斜めに立てた状態で移動できるため、運ぶ人が身をかがめる必要がなく、楽な姿勢で搬送できます。また、流線形の構造をもつことで、ドローンで運ぶ際の空気抵抗が抑えられるようです。様々なドローンで利用できるように設計されており、ドローン輸送の汎用的なユニットとして活躍しそうです。
ドローンの話からは少し外れますが、クロネコヤマトは子会社が運営するファンドを通じて、水面上を飛行する電動の「シーグライダー」を開発する米国のRegent Craftに出資しています(2023年3月のリリース参照)。
シーグライダーはエネルギー効率が良く、一般的な電動航空機の2倍程度の距離を移動することが可能です。例えば、離島への物資の輸送にシーグライダーを使うことで、ドローンよりも大量の物資を効率よく届けることができます。ヤマトがドローンだけでなく、シーグライダーを使った海上輸送ネットワークの構築も視野に入れていることが分かります。
※シーグライダーについては以下の記事で詳しく解説しています。
以上、クロネコヤマトのドローン戦略について、レベル4飛行の許可などの背景情報と、他社との協業や輸送技術の開発など同社の具体的な動向を解説しました。様々なドローンに共通して使える「貨物ユニット」など、運送業者としての自社の強みが生かせる領域にフォーカスした無駄のない開発を行っており、ドローンを活用した物流革命において同社が重要な役割を担いそうです。
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