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両利きの経営に成功する人材育成3ステージ

サクセストラップを防ぐには? ~3段階で両利きの経営を成功させる人材育成

両利きの経営は、既存事業の改善など「知の深化」と新規事業の創出など「知の探索」を両立する経営戦略です。しかし、両利きの経営の解説記事で書いたように、多くの企業は成功した既存事業を重視しすぎ、時代の変化に取り残される「サクセストラップ」にハマります。それを防ぐには、社内メンバーが新しいことに取り組み、その価値を実感する必要があります。

そこで本稿では、両利きの経営を成功させる「人材を育てるプロセス」を3段階に分けて順に解説します。
地道な方法ですが、人を育て、新規事業を成功させたい方にご一読頂けたら幸いです。

 

ステージ1:「知の探索」の起点となる、「特許になる発明」を出せるようになる

ステージ1:「知の探索」の起点となる、「特許になる発明」を出せるようになる

特許取得は「知の探索」のはじめの一歩。まずは共通言語を身につけよう

新規事業の創出(知の探索)には「新しくて優れたアイデア」が求められますが、まずは一定以上の品質のアイデアを確実に出せるようになることが重要です。

特許の取得は、その一歩目となるアウトプットと言えます。特許を取るには、特許庁から発明として認められる必要がありますし、会社のお金で出願するので、社内でも一定以上の評価が求められるからです。

法律の細かい知識がなくても大丈夫ですが、特許制度の仕組みや、権利として認められる条件など「共通言語」となる知識を身につけると、その後のプロセスもスムーズに進みます。

※共通言語となる特許の知識をなぜ学ぶべきか、キャリア形成にどう役立つか、といった点は以下の記事でまとめています。

研究者・技術者でも特許について学ぶべき理由3つ

既にある特許を調べ、その先を発想し、発明提案書にまとめる

特許には「まだ誰も考えていないアイデア」であることが求められるので、既に他社が出している先行技術の調査が必要になります。調査を踏まえ、その先をゆくアイデアを出すことになります。ここで「自社の強みを生かしたアイデア」を狙って出す発想法を身につけておくと、社内でも「その特許は出した方がいいね」という評価を受けやすくなります。

最後に、アイデアの何が優れているのかを整理し、発明提案書でしっかり説明することで、特許出願に進むことができます。

一般的に、発明は「発想力がある人」が出すと思われがちですが、アイデアが湧く人は提案書作成に苦労し、アイデア出しで苦労する人は提案書がすんなり書ける傾向があります。よって、その人の苦手分野を補うプログラムを教育に組み込むことで、誰でも発明を出せるようになります。

特許が出せれば、「独自のアイデアを形にできた」という実績ができ、新しいことに挑戦する自信にもつながります。若手の人材育成におけるアウトプットとして、特許出願をぜひご検討ください。

※そもそもアイデアってどうやって出すの?という点については以下記事にまとめています。

特許になるアイデアの出し方を知り、特許アイデアを量産する

ステージ2:「発明」を育て、「新規事業」を創出できるようになる

ステージ2:「発明」を育て、「新規事業」を創出できるようになる

特許から競合の戦略を読み取り、リスク回避と突破の戦略を立てる

実際に事業を創出するステージでは、単に特許を出すだけではなく、他社に潰されないための戦略が必要です。

他社の権利を侵害して訴訟を起こされると致命的な被害につながるので、侵害を回避するための知識と調査スキルは必須になります。

また、調査で得られた他社の特許には、IR資料やWebページで書かれていない情報が多く含まれています。せっかく調べた特許の価値を最大化するためにも、特許から読み取れる他社の戦略を社内で議論し、突破する打ち手を考えることをお勧めします。特許の活用スキルを上げつつ、独自の戦略を練ることができます。

(余談ですが、2021年に公開されたシリコンバレーにおける特許エコシステムに関するNEDOのプレゼン資料p11によると、ベンチャーキャピタルの出資を受けたスタートアップの82%、特許のイメージの薄いソフトウェア/インターネット企業でも67%が特許を保有しているようです。分野を問わず、世界で戦える特許戦略の構築がますます重要になりそうです。)

特許情報を使って新規事業アイデアを出し、企画書に落とし込む

また、新規事業の構想では、まず「誰のニーズを満たし、買ってもらえるか」をしっかり考える必要があります。

具体的な顧客のニーズを掘り下げ、アイデアを出す際にも特許情報は有用です。なぜなら、過去に出された発明も何らかの課題に取り組んでおり、それらを紐解くことで技術の流れが読めるからです。流れが読めれば、その一歩先のアイデアを狙って出すことが可能になります。

ただ、新規事業アイデアを仕上げる段階では、決裁者を納得させる必要があり、様々な観点からのツッコミに耐えられるスキの無い資料(新規事業企画書)を作成することが重要になります。

ステージ1よりハードルが上がりますが、ここでスキの無い企画書を作っておくと、いざ事業を立ち上げてから「方針がブレる」・「そもそも何がしたかったかを見失う」といったありがちな失敗を防止できます。

また、ステージ1で培った特許取得の経験を活かし、このステージで事業のコアになる特許を確保すると、大きなアドバンテージが得られます。

※新規事業企画書の具体的な書き方については以下の記事で解説しています。社長を説得する企画書を書きたい方はご参照下さい。

新規事業企画書の書き方と成功事例【見本あり】 ~3つの視点で事業の魅力を伝える

ステージ3:「知の深化」に向けて強い事業を育てる

ステージ3:「知の深化」に向けて強い事業を育てる

事業をさらに強くするための知財戦略を構築する

前述のステージ2を経験することで、「そもそもこの事業は何のために立ち上げたか」を主体的に理解できるので、事業を強化するステージでも本質的な改善が進められます。

(逆に言うと、そこを理解せずに事業を進めるから、安易に「小型化」や「低コスト化」ばかり考えてしまい、サクセストラップにハマる側面もあるようです)

事業を強化するステージでは、コア技術の強みをさらにブラッシュアップし、独占的なポジションを築くことが求められます。知財戦略の観点では、コアになる特許をさらに強化するために、「攻め」と「守り」の特許を追加で取得し、特許網を構築することが重要です。

契約を知り、他社とのオープンイノベーションを主導する

ただ、「持続可能な成長」が求められる現代において、自社の「一人勝ち」を目指す戦略は共感を得られません。他社を巻き込むオープンイノベーションにより社会課題を解決し、世の中を良くしながら成長できる企業が、結果的に生き残る時代になり始めています。

(例えば、資産運用会社のブラックロックが、2020年にサステイナビリティを投資の新たな基軸に据える取り組みを開始するなど、社会課題に真剣に取り組む企業の価値が向上する流れも加速しています。)

ただし、単に自社技術をオープンにするだけでは継続的な利益が得られず、事業も頓挫してしまいます。よって、協業する相手と互いに利益の出る契約を結ぶためのアライアンス戦略が求められます。

また、相手に利益をもたらし、「組みたい」と思ってもらうためにも、影響力の大きい強い特許を持っていることが重要になります。

ステージ2で立ち上げた事業の構想を踏まえてステージ3で特許網を構築し、それらを交渉材料として事業を拡大する、という流れをつくれると、関わったメンバーが事業とともに成長し、強い組織の構築につながります。

※実際に交渉材料となる強みをつくり、仲間づくりに成功した企業の事例は以下の記事で解説しています。

アライアンス戦略の考え方と成功事例 ~P&G・マイクロソフトに学ぶ契約のコツ

人材を育て、サクセストラップを克服する両利きの組織をつくろう

ここまで、両利きの経営を成功させるための人材育成を3つのステージに分けて解説しました。いきなり優れた事業をつくることは難しいですが、特許出願など小さな成功体験を積み重ね、徐々にレベルアップしていくことで人が育ち、事業のレベルも上がります。

両利きの経営の難所であるサクセストラップの主な原因として、「知の探索」の経験不足がありますが、上記のプロセスを経ることで改善できます。

また、「新規事業と既存事業の担当者どうしの対立」という人間関係のトラブルも悩みの種です。しかし、そもそも全ての事業が最初は新規事業なので、対立すること自体がナンセンスであることも、新規事業立上げを経験するメンバーが増えれば自然に理解されると思います。

事実、弊社の新規事業立ち上げ支援サービス「企業内発明塾」では様々な部署の方に新規事業の企画書を作成頂きますが、部署の垣根を超えて議論し、役員プレゼンと予算取りなどのプロセスを進める中で、徐々に周囲の理解も深まっているようです。

知の探索を人材育成のプログラムに取り入れ、サクセストラップにハマらない組織を目指す方の参考になれば幸いです。

また、弊社のeラーニング講座「e発明塾」は、本記事で紹介した3ステージに必要な発明法、企画書作成などのスキルを網羅しています。我々自身が実際に発明や新規事業を創出する中で苦しみ、乗り越えながら言語化したノウハウを教材化しており、「知の探索」で成果を上げたい方向けのプログラムになっております。ぜひご活用ください。

 

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