知財戦略とは

知財戦略とは? ~考え方と成功事例を簡単に解説~

2021.6.2

「知的財産(知財)」には、企業で生み出された発明やノウハウ、著作物などが含まれ、その価値を最大化するのが知財戦略の目標です。

取るべき戦略は企業や組織によって異なりますが、本記事では知財戦略・特許戦略の基本的な考え方と、具体的な成功事例を簡単に解説します。自社の状況に合った知財戦略を構築する参考になれば幸いです。

 

知的財産から得る企業の利益を最大化するのが知財戦略

知財戦略により知識から得られる収益を最大化する(e発明塾「知財戦略(1)」より)

知財戦略により知識から得られる収益を最大化する(e発明塾「知財戦略(1)」より)

 

どの企業の経営戦略にも共通する目標が、「投資からより多くの収益を得ること」であり、特に技術系の企業では、研究開発投資から生み出された知識をいかに収益に結びつけるかが成功のカギになります。

特許権などの知的財産権は、生み出された知識を権利として確保し、事業を保護したり、拡大するためのツールになります。例えば、利益の源泉であるコア技術は独占しつつ、周辺領域の技術は広くライセンスして普及を促すことで成功している企業があります(独占と普及を両立する戦略については、オープンクローズ戦略の解説記事でも解説しています)。

ただ、権利化すればOKというわけではなく、収益につながる権利の取り方を考えることが大事です。次項では特許の取り方に関する戦略を解説します。

知財戦略の成功につながる特許の取り方

守りの特許と攻めの特許を幅広く取得する

特許戦略の基本的な考え方については、丸島儀一著『知的財産戦略』で詳しく紹介されています。

まず、自社の強み・事業の根幹となるコア技術は他社に侵害されないよう保護することが重要であり、そのために取得する特許を「守りの特許」と呼びます。特に開発から製造・販売まで一貫して自社で行う企業にとっては、最も重要な権利と言えます。

一方、自社の弱みを解消するため、他社との交渉材料として使うために取得する特許を「攻めの特許」と呼びます。例えば、自社が使いたい技術を他社が権利化している場合、自社の特許をライセンスする交換条件として他社の特許をライセンスしてもらう、という方法があり、クロスライセンスと呼ばれます。他社が欲しがる「攻めの特許」を多数取得していれば、クロスライセンスに持ち込むための交渉力を得ることができ、使える技術の選択肢も広がります。

上記に限らず、様々な特許の使い方が考えられますが、基本戦略として「守り」と「攻め」の特許を押さえておくとスジの良い知財戦略を立てやすくなります。

ビジネスモデルと結びついた特許を取る

また、価値のある特許の必須条件になるのが、その技術を売るためのビジネスモデルが明確であり、そのビジネスに必須の要素を押さえていることです。「守りの特許」も、保護したコア技術が収益に結びつかなければ価値は無く、「攻めの特許」も他社の収益に結びつかなければ交渉材料になりません。

例えば、先述の『知的財産戦略』で紹介されているキヤノンのカートリッジに関する特許群は、プリンタのビジネスモデルと密接に結びついています。プリンタが、装置本体よりも消耗品のカートリッジで儲けるビジネスモデルを構築していることは有名ですが、他社に互換性のあるカートリッジを自由につくられれば、収益は維持できません。そこでキヤノンは、互換性の必要条件である本体とのインターフェース等に関する特許を重点的に押さえ、参入障壁を築くことに成功しています。

以上は、特許戦略の基礎的な内容ですが、守りと攻めの特許を取ることと、ビジネスモデルと結びついた権利を取ることを意識するだけでも、単にコア技術を保護するだけの古典的な戦略を脱することが可能です。

続いて、知財戦略で成功した企業の代表的な事例を紹介します。

 

知財戦略で成功した企業の代表的な事例

守りと攻めの特許戦略で市場参入・事業拡大を達成したキヤノン

キヤノンは1950年代にはカメラ専業メーカーでしたが、1970年には、当時ゼロックスが独占していた普通紙複写機の市場に参入しています。ゼロックスが構築していた特許網を破る新技術を特許化し、後発参入に成功しており、その過程は、丸島儀一著『キヤノン特許部隊』で詳しく解説されています。

1970年以降も、キヤノンは新たなコア技術の開発による守りの特許の取得と、周辺技術の開発などによる攻めの特許の取得を積み重ね、複写機の分野で確固たる地位を築いています。キヤノンのニュースリリースによると、同社は35年連続で米国特許の取得件数で世界5位以内(日本企業としては16年連続1位)に入っており、特許網の構築を徹底的に行っていることがわかります。

先読みの特許取得による仲間づくりに成功したマイクロソフト

特許を協調のツールとして使う戦略

一方、特許を「仲間づくり」のツールとして活用し、自社を中心としたエコシステムの形成に成功する企業が存在感を増しており、マイクロソフトはその代表例です。

マイクロソフトの知財戦略についてはマーシャル フェルプス著『マイクロソフトを変革した知財戦略』で詳しく書かれています。例えば、東芝とのクロスライセンスでは、ハードに強みを持つ東芝と、ソフトに強みを持つマイクロソフトの技術を相互に利用可能にすることで互いに成長する戦略を取っており、協調のツールとして特許が活用されていることがわかります。

特許があるから戦略通りにオープンイノベーションが進む

また、弊社書籍の『新規事業を量産する知財戦略: 未来を預言するアイデアで市場を独占しよう! 』でもマイクロソフトの知財戦略について解説しており、マイクロソフトが未来を先読みした特許取得で事業を拡大したことが書かれています。以下にその一部を引用します。

マイクロソフトでは「発明先取り会議」を継続的に開催しているそうです。どういうものかというと、「まだ誰もやってないんだけれど、5年後10年後を考えたら、この領域でこういうことが始まるのではないか」を考え、特許を持っていれば技術開発や事業のイニシアチブが握れるであろう発明を考えましょうという会議です。つまり、自分たちが業界の主導的な立場になるために、どういう特許を取ればいいかを考えましょう、という会議です。

(中略)

だからむしろ外のパートナーシップを得てどんどん自分たちの事業を拡大していく、そういうオープンイノベーション・アライアンスの領域で特許を使うという戦略ですね。考えたことについて先に特許を取得しておけば、後からやりたいという人がでてきたときに、「それ、うちが先に考えていたことですでに特許を持ってます、ぜひ一緒にやりましょう」という感じになっていく、そういうことです。

『新規事業を量産する知財戦略: 未来を預言するアイデアで市場を独占しよう! 』 第2章3節より(太字は引用者による)

つまり、オープンイノベーションのツールとして特許を活用し、事業を拡大する、という戦略です。キヤノンとは大きく異なる特許戦略ですが、IFI CLAIMS Patent Services 社により発表された2020年の米国特許出願ランキングを見ると、マイクロソフトはキヤノンに次ぐ4位に入っており、特許取得には同じくらい積極的であることが見て取れます。

ちなみに、マイクロソフトのように交渉材料として特許を使う場合、事業拡大の効果が大きくても、ライセンス収益が大きいとは限らない点にも注意が必要です。IR資料などのデータから、「ライセンス収入の比率が少ないので、特許は大した価値がない」と安易に考えてしまうと、状況を見誤ります。

 

優れた知財戦略を構築し、自社の成長につなげよう

ここまで、知財戦略とは知識を利益に結びつけるための戦略であること、利益を得るためにビジネスモデルに結びついた特許取得が重要であること、「守り・攻めの特許」や「仲間づくりのための特許」など様々な特許戦略で成功した企業の事例を解説しました。

特に、最後に紹介したマイクロソフトのような「仲間づくりのための特許取得」は、オープンイノベーションの時代に必須の考え方になります。先読みの特許を取得した上で事業を立ち上げることで、自社の知財戦略に沿った事業の拡大が可能になります。

先述の弊社書籍『新規事業を量産する知財戦略: 未来を預言するアイデアで市場を独占しよう! 』では、このような新しい知財戦略の考え方をより詳細に解説しています。最新の知財戦略を詳しく知りたい方は、そちらもご参照下さい。

また、キヤノンなどが実践する知財戦略の基礎を丁寧に学びたい方には、弊社教材のe発明塾「知財戦略(1)」がお勧めです。その他、教材に関する情報は資料ダウンロードページより無料で入手していただけるので、ご検討の際はぜひご活用ください。

本記事が、自社を成長させる知財戦略構築の一助になれば幸いです。

 

 

★書籍出版のお知らせ

記事の中でもご紹介しましたが、弊社初となる書籍『新規事業を量産する知財戦略』を出版しました!新規事業や知財戦略の考え方と、実際に特許になる発明がどう生まれるかを詳しく解説しています。

Kndle版は6月末までは定価80%OFFの99円にてご提供しておりますので、この機会に是非ご一読下さい!

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