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企業知財部の仕事とは?

事業成功を支える企業知財部の仕事とは? ~考え方と三菱電機・レゾナック・村田製作所の成功事例を紹介

企業知財部の仕事は、自社のコア技術の価値を最大限に活用し、事業に成功する上で非常に重要です。ただ、実情としては「特許を取得するための手続き」や「侵害対策の調査」などの作業に追われてしまう例も多いようです。

そこで本記事では、企業知財部の本質的な役割と、事業の成功に貢献する上で知財部ができる仕事の内容を整理します。具体的なアクションのイメージを持って頂くために、後半では日本企業の成功事例として三菱電機、レゾナック、村田製作所の3社を取り上げます。

知財部のポテンシャルを最大限に引き出し、企業全体の成功につなげる参考情報としてご活用ください。

企業知財部に求められる本質的な役割と仕事内容

知財部と他の部門の役割分担

知財部門と事業部門・研究開発部門の役割(丸島儀一 著『知的財産戦略』を参考に自作)

知財部門と事業部門・研究開発部門の役割(丸島儀一 著『知的財産戦略』を参考に自作)


まず、企業における知財部の位置づけを把握するため、関連部門と知財部の関わりを解説します。

知財部が活躍する企業の代表例がキヤノンで、日本企業の米国特許取得件数では18年連続で1位になっています(2023年1月のPR Times参照)。ゼロックスの特許網を突破したキヤノン知財部の活躍は、NHKの「プロジェクトX」でも取り上げられたので、ご存知の方も多いと思います。

キヤノンで40年にわたり知財担当を務めた丸島儀一氏の著書『知的財産戦略』によると、技術系の企業において事業部門・研究開発部門・知財部門はそれぞれ以下の役割を持ちます(上図参照)。

  • 「事業部門」は、事業計画・事業戦略を立てる。現時点の自社の技術力と、今後どれくらいの技術が生まれるかを「先読み」し、計画を立てることが求められる
  • 「研究開発部門」は、競争力を高めるための研究開発を行う。競争力を高めるための研究開発を行う。強みとなる基盤技術を高めるとともに、技術の変化に対応した開発を進めることが求められる
  • 「知財部門」は、事業戦略を実行するために必要な権利の取得と活用を行う。知的財産制度など国の政策の変化に対応することも求められる

知財部門は事業部門が「先読み」を行うための情報提供を行うと共に、研究開発部門が創出した知財を権利化し、事業を計画通りに実行できる基盤をつくる役割を担います。それぞれの部門と連携するため、「事業」と「技術」の両方を理解することが知財部員には求められます。

では、具体的にどのように知財を使えば事業の成功につながるのでしょうか?実際の成功事例を紹介しながら解説します。

※知財戦略の基礎については以下の記事で解説しています。

知財戦略とは? ~考え方と成功企業の事例を簡単に解説

交渉材料としての知財活用を推進する知財部の仕事

知財を活用したオープンイノベーションの流れ(書籍『マイクロソフトの経営戦略』より)

知財を活用したオープンイノベーションの流れ(書籍『マイクロソフトの経営戦略』より)


知財を特許として権利化し、
オープンイノベーションの「交渉材料」として活用することに成功した企業の代表例がマイクロソフトです。上図のように、先読みの特許を交渉材料として他社と協業する仕組みを、知財部が中心となって構築しています。

「5~10年後の未来に必要とされる発明」を先読みし、他社が参入する前に権利として押さえるのがポイントです。権利を先取りすることで、後から参入してきた企業との交渉を有利に進めることができます。

特許は、自社の技術を他社に使わせないための「防衛的な手段」という考えが根強くありますが、マイクロソフトのように「交渉材料」として活用すると、「仕掛ける側」として成功することが可能になります。

※マイクロソフトの知財戦略について詳しく知りたい方は以下の記事もご参照ください。

マイクロソフト特許ポートフォリオの具体例と、クラウドAuzreの知財戦略

特許情報を活用したインテリジェンスも知財部の仕事

特許情報を活用したインテリジェンス活動のイメージ

特許情報を活用したインテリジェンス活動のイメージ


上記のマイクロソフトに限らず、先進的な企業では「未来を先読みした特許の取得」は日常的に行われています。つまり、
「他社の特許」を見れば、「他社がどんな未来を見ているか」を推測することが可能ということです。

例えば以下のような特許情報の活用が可能です(上図参照)。
① 特許情報からその企業の将来的なニーズを特定し、自社の技術を提案(技術マーケティング)
② 競合他社の特許情報から立ち上げ予定の事業の内容を推定し、それとは異なる切り口でアイデアを出し、独自性の高い事業を企画(新規事業企画)
③ 強い特許や独自の強みを保有している企業を特定し、提携や投資先の判断材料とする(アライアンス・投資)

このような特許情報を活用したインテリジェンスも、知財部の重要な仕事になります。分析した情報を事業部に提供することで、先述した事業戦略の立案にも大きく貢献することが可能です。

以上のように知財部は、権利を活用したオープンイノベーションや、特許情報のマーケティング・新規事業創出・企業との提携や買収など様々なかたちで事業の成功に貢献できます。より具体的な成功イメージをつかむため、次項では日本企業の成功事例を紹介します。

事業成功に貢献する企業知財部の成功事例

オープンイノベーションに知財を活用する三菱電機のOpen Technology Bank

家電から宇宙関連まで幅広い事業を展開する総合電機メーカーの三菱電機は、「経営戦略に直結する知財活動」を行う企業としても知られています。特許庁資料「経営における 知的財産戦略事例集」によると、同社は他社との契約や訴訟に対応する「知的財産渉外部」を社長直轄に置いており社長の経営方針を直に知財活動に反映する体制が整っていることがわかります。

2023年9月のビジネス+ITの記事によると、三菱電機は2021年からOpen Technology Bank(OTB)と呼ばれる取り組みを開始しています。同社がもつ技術を他社にライセンスし、協業しながら社会課題の解決を目指す仕組みで、先述した「交渉材料としての知財活用」を実践しています。

Open Technology BankのHPを見ると、制御技術やコンポーネント、情報技術など三菱電機の技術が紹介されており、同社の技術の幅広さがわかります。他社とのオープンイノベーションに向けて、自社の知財情報をどう発信するかの参考になる事例です。

新事業創出を支援するレゾナック(旧 昭和電工)の知的財産部

レゾナックは、2023年1月に、昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧 日立化成)が統合して誕生した機能性化学メーカーです。日立化成の買収を決断する情報源として特許情報を活用していたことも知られており、スタート時点から知財戦略との結びつきの強い企業です(2023年8月のBiz/Zine記事参照)。

レゾナックの知的財産戦略のページによると、同社は「調査・解析」の機能を知的財産部内に保有しており、新規事業探索に知財情報を活用する取り組みも進めています。例えば「知財解析」と呼ばれる取り組みでは、自社のSDGs関連技術を知財情報から分析し、SDGsを意識した新事業の提案を進めているようです。

新規事業の探索を含め、前述した「知財情報を活用したインテリジェンス活動」を積極的に進めており、知財部の活動範囲を広げる取り組みとして参考になる事例です。

※レゾナックの脱石油化学に向けた戦略は以下の記事で解説しています。

脱石油・脱化石燃料の最前線 ~出光事業転換・石油化学メーカー再編の動向をIR・特許から分析

M&Aの判断に特許情報を活用する村田製作所

村田製作所は、積層セラミックコンデンサについて世界ダントツトップのシェアをもつ総合電子部品メーカーです。同社は優れた特許を多数保有しており、日経ビジネスの「特許価値成長ランキング」でもトップに選ばれています(日経ビジネス記事参照)。

村田製作所は特許の取得だけでなく、特許情報の活用にも力を入れています。2023年7月の日経ビジネス記事によると、同社は将来の技術トレンドを見極める「先読み」に特許情報を活用し、M&A(合併・買収)を行う企業の選定を進めています。

2022年7月のBiz/Zineの記事によると、村田製作所は直近10年間で約12件のM&Aやアライアンスを行っています。知見やノウハウのない新領域を開拓する際は手がかりになる情報が限られていますが、特許情報が重要な情報源として活用されているようです。

買収先の選定においても知財部が重要な役割を果たすことができる、ということを示す事例と言えます。

未来の事業成功を支える企業知財部の仕事は面白い!

以上、知財部の本質的な役割と、交渉材料としての知財活用や、特許情報を活用したインテリジェンスなどの具体的な仕事内容を紹介しました。後半で紹介したように、日本企業でも知財活用の成功事例が多数生まれています。

知財部の仕事は「特許の権利化を進める地味な仕事」だと思っている方も多いですが、本質的には「未来の事業の創出と成功を支える面白い仕事」です。本記事が、知財部員として活躍する方のさらなるキャリアアップや、知財部との連携の進め方に悩む方の参考になれば幸いです。

弊社では、本記事で紹介したような知財部の仕事を支援するコンテンツやサービスを幅広くご提供しており、多くの企業の知財部の方に活用して頂いております。下部にサービスのリストを掲載しているので、ぜひご参照ください。

また、弊社の無料メールマガジンでは、最新特許の調査レポートに加え、新サービスのリリースも告知しているので、最新情報にキャッチアップするツールとしてぜひご活用ください。

 

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
大阪大学大学院工学研究科 招へい教員
半導体装置の設備エンジニアとして台湾駐在、米国企業との共同開発などを経験した後、スタートアップでの事業開発を経て現職。個人発明家として「未解決の社会課題を解決する発明」を創出し、実用化・事業化する活動にも取り組んでおり、企業のアイデアコンテストでの受賞経験あり。

あらゆる業界の企業や新技術を徹底的に掘り下げたレポートの作成に定評があり、「テーマ別 深掘りコラム」と「イノベーション四季報」の執筆を担当。分野を問わずに使える発明塾の手法を駆使し、一例として以下のテーマで複数のレポートを出している。
IT / 半導体 / 脱炭素 / スマートホーム / メタバース / モビリティ / 医療 / ヘルスケア / フードテック / 航空宇宙 / スマートコンストラクション / 両利きの経営 / 知財戦略 / 知識創造理論 / アライアンス戦略

 

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