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GAFAのイノベーション戦略

【詳説】GAFA・マイクロソフト(GAFAM)の比較分析 ~イノベーション投資戦略とヘルスケア・メタバース分野における今後の展開

本記事では、GAFAとマイクロソフト(GAFAM)の戦略について、特にイノベーションに関連した動向に注目し、比較しながら分析していきます。

まず、GAFAMの収益構造とイノベーションへの投資額を比較し、各社の戦略の違いを考察します。次に今後イノベーションが起こる分野としてヘルスケアとメタバースに注目し、具体的な事例を紹介します。

巨大Tech企業がつくるイノベーションの流れを読み解き、独自のイノベーションを創出したい方はぜひご参照ください。

 

GAFAMのビジネスモデルとイノベーション投資の比較

GAFAMの売上高の内訳(各社の2021年度のAnnual Reportのデータをもとに作成)

GAFAMの売上高の内訳(各社の2021年度のAnnual Reportのデータをもとに作成)

 

GAFAMのビジネスモデルはそれぞれ大きく異なる

まず、GAFAMのビジネスモデルの違いを把握するため、各社の売上高と、事業カテゴリーの内訳をグラフに整理しました。

各社のビジネスの概要は以下のように整理できます。

  •  グーグルは検索広告が収益の中心で、広告収入が全体の8割以上
  •  アマゾンは売上額が5社の中でトップで、特に北米のEコマース事業が収益の中心
  •  FacebookはSNS広告が収益の中心で、広告収益がほぼ100%
  •  アップルはiPhoneなどデバイス販売の収益が中心で、全体の8割以上
  •  マイクロソフトはAzureなどクラウドサービスが収益の中心で全体の36%
    (ただし、WindowsやOffice 365を含む他のカテゴリーにもほぼ均等に収益源が分散されている)

競合する企業でも、ビジネスモデルは全く違うのが興味深いところです。例えばグーグルのAndroidとアップルのiPhoneはスマートフォン市場で競合していますが、スマートフォンの売上が主な収益源になるのはAppleだけで、Googleは検索広告から間接的に収益を得ています。

アップルのiPhoneやグーグルの検索広告のように、圧倒的に強い独自の収益源を持っていることが、GAFAM各社に共通した特徴と言えます。

※グーグルとアップルの戦略の違いについては以下の記事で知財戦略の観点から深掘りしています。

グーグルのオープンクローズ戦略 〜アップルとグーグルの知財戦略の違い 

利益率で劣るAmazonがイノベーション投資でトップになれる仕組み

GAFAMの粗利益率(Gross Profit/Total Revenue) と研究開発投資の比較(※Morningstarのデータを元に作成。アマゾンは同社の独自指標である ”Technology and content” の値を研究開発投資額として計上)

GAFAMの粗利益率(Gross Profit/Total Revenue) と研究開発投資の比較
(※Morningstarのデータを元に作成。アマゾンは同社の独自指標である ”Technology and content” の値を研究開発投資額として計上)

 

続いて、各社の粗利益率と研究開発投資額を見てみます。

粗利益率はビジネスモデルと密接に関係しており、例えば、設備投資のほぼ無い広告事業に特化したFacebookの利益率は非常に高くなっています。

一方、アマゾンは物販などが中心であり、他社に比べると利益率も低くなっていますが、研究開発投資額ではアマゾンが5社の中でダントツトップになっています。

(独自指標を使っているので単純比較できない部分はありますが、投資規模がトップレベルなのは間違いなさそうです)

このような多額の投資を可能にするのが、営業キャッシュフローを最大化するアマゾンのビジネスモデルです。アマゾンの戦略に関する記事で解説したように、アマゾンは出品料などを先に徴収することで、投資可能な資金が潤沢にある状態を維持する仕組みをつくっています。

※アマゾンのイノベーション戦略については以下の記事で詳しく解説しています。

アマゾンのイノベーション経営戦略とは?【最新事例解説】キャッシュフローを新規事業に再投資するビジネスモデルの今後 

脱炭素関連のイノベーションをリードするマイクロソフト

マイクロソフトは研究開発投資額では他の4社にやや劣りますが、CO2排出量削減の課題に対しては先進的な取り組みを行っています。同社は2030年までにカーボンネガティブを達成する目標にコミットしており、データセンターの脱炭素化、CO2排出量のモニタリングサービスの開発、炭素除去技術への投資など、社内外で積極的に活動しています。

2022年のマイクロソフトの炭素除去レポート(p15~)を見ると、炭素除去プロジェクト毎に除去した炭素が保持される年数についても考慮し、地中やコンクリート内に二酸化炭素を隔離する技術など、長期的な炭素除去を実現するプロジェクトに積極的に投資しています。単に植林や自然エネルギーへの切り替えだけを進める企業と比較すると、取り組みの本気度が分かります。

成長とCO2排出削減のトレードオフは全ての企業が直面する課題なので、マイクロソフトが脱炭素分野のイノベーションを主導することで、同社の影響力はさらに拡大しそうです。

※カーボンネガティブ達成に向けたマイクロソフトの戦略については以下の記事で詳しく解説しています。

マイクロソフトのカーボンネガティブ経営戦略【図解あり】 ~Azure, Climate innovation Fundの最新情報

GAFAMの今後のイノベーション投資 ~ヘルスケア・メタバース分野における競争

続いて、GAFAMが今後イノベーションを起こすことが予想される具体的な技術分野として、ヘルスケアとメタバースに注目し、具体的な事例を紹介します。

ヘルスケア分野でも競合するApple・Googleと、遠隔医療サービスに進出するAmazon

心拍モニタリングに関するアップルの特許の例。心房細動の検知に関しても記載あり(Google Patentsより)

心拍モニタリングに関するアップルの特許の例。心房細動の検知に関しても記載あり(Google Patentsより)

消費者向け(BtoC)のヘルスケアデバイスとして既に普及し始めているのが、Apple WatchやFitbitなどのスマートウォッチで、ランニングや水泳などのアクティビティ管理に広く使われています。CNBCの記事によると、グーグルの親会社であるAlphabetによるFitbitの買収が2021年1月に完了しており、スマートウォッチ分野でもアップルとグーグルの競争が始まっています。

技術の進歩により、これらのデバイスは単なるウェアラブルデバイスではなく「医療機器」に近づいており、例えばApple Watchの心電計(Electrocardiograph)機能は2018年に心房細動(artial fibrilllation ; AFib)の検知を対象に米国の食品医薬品局(Food and Drug Administration;FDA)の認証を受けています。また、2022年6月に光電式センサーによる心房細動の履歴機能で別のFDA認証を受けています。

一方、Fitbitも同様に心房細動の検知で2020年にFDA認証を受けており、追従しています。デバイスの進化ではややアップルが先行しているあたりもスマートフォンと近い流れを感じますが、今後の展開が楽しみです。

他方、アマゾンは、同社の戦略に関する記事でも取り上げたように、アマゾン・ケアと呼ばれる遠隔医療サービスを2019年に立ち上げ、グーグルやアップルとは異なる切り口でヘルスケア事業を拡大しています。同社はAmazon Pharmacyと呼ばれる薬の販売プラットフォームも持っており、自社の強みを活かして消費者の生活に密着した医療サービスを開発しています。

※アップルウォッチの特許については以下の記事で詳しく分析しています。

アップルの特許情報からApple Watch・AirTagsの未来を予測

メタバース事業を急速に拡大させるFacebookと、堅実に足場を固めるマイクロソフト

Facebookは社名をMeta Platformsに変更したことからも分かるように、メタバース事業を未来の主軸と考え、VRやARのプラットフォームを急速に開発しています。2021年には100億ドル近くを投資し、メタバース上で人々が交流できるサービスを次々にリリースしています。例えば「Horizon Worlds」はゲームを中心とした交流プラットフォームで、Ther Vergeの記事によると、2022年2月時点で、月間ユーザー数は既に30万人を越えているようです。

また、メタバース分野で活躍するクリエイター向けの基金であるHorizon World Creator Fundにも1000万ドルを投資しており、メタバース市場を盛り上げるクリエイターの育成にも積極的に取り組んでいます。

一方、マイクロソフトはFacebookよりも早くからMR(複合現実)グラスのHoloLensを開発しており、特に医療現場のトレーニングなど、BtoB分野で利用実績をつくっています。

また、マイクロソフトはゲーム会社のActivision Blizzardの買収を2022年1月のニュースリリースで発表しています。Activisionはゲーム市場で巨大なシェアを持っているだけでなく、メタバース関連の特許も幅広く取得しており、同社の買収により、マイクロソフトの技術と特許のプラットフォームが大幅に強化されるので、重要な布石と考えられます。

Facebookは消費者向けのプラットフォームを正面から拡大していますが、マイクロソフトは堅実に自社の強みとなるアセットを積み上げており、両社がメタバース分野でどのようにサービスを展開するか、今後が楽しみです。

※Facebookの戦略の詳細は以下の記事で解説しています。メタバース分野の技術に興味のある方はぜひご参照ください。

【図解】Facebook (Meta)の経営戦略と今後 ~メタバースのプラットフォーマーへの進化

GAFAMの動向からイノベーションの流れを先読みし、独自の新規事業を創出しよう

以上、イノベーションに関連したGAFAMの戦略について、各社の収益構造とイノベーション投資を比較し、アマゾンのイノベーションの仕組みと、脱炭素分野をリードするマイクロソフトの戦略について解説しました。また、次にイノベーションが起こる分野としてヘルスケアとメタバース関連の動向を紹介しました。

もちろん、ヘルスケアやメタバース以外にも有望な成長分野は数多く存在し、例えばアマゾンは電気自動車の分野でも強いプラットフォームをつくり始めています(FY2021Q4のレポート参照)。ただ、電気自動車に関してはテスラの戦略も分析したいので、GAFAMとは別の切り口の記事で後日取り上げたいと思います。

GAFAMは様々な分野でイノベーションを起こしており、「技術の進歩により世の中が変化する流れ」を生み出しています。それらの流れを踏まえ、「自社が切り込むとしたらどの分野か?」と考えると、スジの良い新規事業のアイデアも出しやすくなります。

「海外のスゴイ企業の話」で終わりにせず、GAFAMの戦略を読み解いて独自の戦略を構築したい方に、本記事がお役に立てれば幸いです。また、弊社の無料メールマガジンでは、特許分析などさらに踏み込んだ内容も紹介しているので、そちらも是非ご活用下さい。

 

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
工場設備エンジニア、スタートアップでの事業開発を経て現職。現在は企業内発明塾®における発明創出支援、教材作成に従事。個人でも発明を創出し、権利化を行う。発明塾東京一期生。

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