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2021年Q4amazon最新イノベーション_スマートホーム、モビリティ

【FY2021 Q4】Amazon最新イノベーション ~スマートホーム戦略の全体像とモビリティ事業の動向を解説

前回のアマゾン4半期レポート(FY2021 Q3)では、Amazon AstroやGlowなど最新のデバイスや、AWSの新機能を紹介しました。本記事ではアマゾンのFY2021 Q4(2021会計年度第4四半期;2021年10月〜12月)の決算報告からイノベーション関連情報を抜粋し、背景にある戦略の考察も含めて簡単に解説します。

具体例としてAlexaの超音波モーション検知などスマートホーム関連の技術や、IoT FleetWiseなどAmazon AWSのモビリティ(自動車)関連の技術を紹介し、同社のスマートホーム戦略・モビリティ戦略について考察します。

特にスマートホームやEV・自動運転などの分野で新規事業開拓や投資に取り組む方の参考になれば幸いです。

<参考:アマゾン・ドット・コム基本情報>
ティッカーシンボル:AMZN
創立年月日:1994年7月
ウェブサイト:www.amazon.com

【図解】アマゾンのスマートホーム技術の進化 ~Alexa Occupancy Routines、Glass Break Sensor、Air Quality Monitor

アマゾンの各スマートホームデバイスの概要(全体像の参考図として作成。Astroについては2021年Q3のレポート参照)

アマゾンの各スマートホームデバイスの概要(全体像の参考図として作成。Astroについては2021年Q3のレポート参照)

 

超音波モーション検知によるAlexa Occupancy Routines・Alexa Togetherの進化

第4世代以降のAmazon Echoには超音波モーション検知機能が搭載されており、デバイス付近の物体の動きを検知することができます。

主な用途として、利用者の動作に応じたデバイスの操作が考えられています。例えばAlexa Occupancy Routinesを使うと、利用者の起床や部屋の移動などを検知し、明かりをつけたり音楽をかけることなどが可能です。カメラを使わないため、部屋を撮影されたくない利用者のニーズにもマッチしています。

また、超音波モーション検知機能に関するアマゾンの記事によると、高齢者ケアサービスであるAlexa Togetherと連携し、高齢者の方が安全に生活できているかどうかの確認にも使えるようです。

つまり、利用者の普段の生活に加え、緊急時の対応もAlexaがサポートしてくれることになります。

Ring Alarm Glass Break Sensorによる低コストな安全管理

Ringは、アマゾンが2018年に買収したRing社の技術を使ったカメラ付きのドアベルです。不審者の監視などの機能を備えており、Alexaデバイスからの操作にも対応しています。

新製品のRing Alarm Glass Break Sensorは、「ガラスが割れた音」を人工知能により判別してアラームを出す機能を備えたセンサーで、フラットな壁面であればどこにでも設置可能です。離れた位置にある窓ガラスが割れた音も正確に検知できるため、1つ設置するだけで複数の窓を管理でき、経済的です(2022年1月のCNN記事など参照)。

Amazon Smart Air Quality Monitorによる空気の管理と睡眠改善

2021年Q4決算報告によると、アマゾンは、屋内の空気の質をモニタリングするSmart Air Quality Monitorを米国や英国、フランスなどで販売開始しています。空気中のPM2.5(微小粒子物質)やVOCs(揮発性有機化合物)、一酸化炭素などを測定でき、空気の質が悪い場合に遠隔操作で空気清浄器を起動することも可能です。

また、Alexaにも対応しており、AlexaのアプリやEchoのディスプレイからセンサのデータを確認することもできます。

これらの例から、Alexaがスマートホームデバイス制御の基盤になっており、安全管理や環境管理などカバーする領域もどんどん広がっていることがわかります。

※アイロボット買収により取得したルンバなどの技術をどう活用するか、に関する追加の考察は以下の記事で紹介しています。

【FY2022 Q2】Amazon最新動向 ~アイロボット買収の狙い、Rivian株下落の影響、AWS Snowcone宇宙利用

AWS for Automotiveの進化によるモビリティ事業の拡大 ~IoT FleetWise、Stellantisとの協業

Amazon AWS for Automotiveの新サービスAWS IoT FleetWiseによる車両データの収集

AWS for Automotiveはアマゾンの車両向けクラウドサービスで、日本の自動車メーカーでもトヨタやホンダなどで導入実績があります。

2021年11月のアマゾンのニュースリリースで発表された新サービスのAWS IoT FleetWiseは、個々の車両データをほぼリアルタイムでクラウドに転送し、車両トラブルのリモート診断や車両保険の契約管理などを行うサービスです。大量の車両データをAWSで一元管理できるため、自動車メーカーは自社でデータ管理プラットフォームを構築しなくても、効率よく車両データを収集できます。

また、自動運転や運転支援システムの精度向上に向けたトレーニングや、電気自動車(EV)のバッテリーが持つ距離の予測精度の改善にも対応しており、車両の性能向上にも役立つサービスのようです。コネクテッドカーの分野への参入障壁を下げつつ、各社の車両データをアマゾンが握る戦略と考えられます。

※クラウドサービスとしてAWSに次ぐシェアをもつMicrosoft Azureの戦略については以下の記事で解説しています。

マイクロソフトのカーボンネガティブ経営戦略【図解あり】 ~Azure, Climate innovation Fundの最新情報

Stellantis、Rivianとの協業によるモビリティ事業の拡大

2022年1月のアマゾンのニュースリリースによると、アマゾンとStellantis(ステランティス)は、自動車の運転席のデジタルプラットフォームであるSTLA Smart Cockpiのソフトウェア開発で協業します(STLA Smart Cockpitのリリースは2024年予定)。STLA Smart Cockpitにはカーナビゲーションやeコマース、車両保守管理、音声による運転支援などの機能が搭載される予定で、Alexaの技術も活用されるようです。

StellantisはAWSを推奨クラウドプロバイダーとして選択しており、製品開発やデータ収集にアマゾンの技術が活用されています。

ちなみに、2020年にアマゾンと提携した、電気自動車メーカーのRivian(リビアン)もAWSをプロバイダーとして選択しています。Rivianは電気配送車の開発でアマゾンと協業しており、2020年10月のアマゾンニュースリリースによると、2022年中に1万台、2030年までに全世界で合計10万台の電気配送車が市場投入する計画のようです。

クラウドで完結せず、自社の配送車でも実験しながら開発を進められる点で、モビリティ事業におけるAmazon AWSの優位性があると考えられます。

 

「家」と「車」のプラットフォームを握るアマゾンの今後

ここまで、アマゾン2021年Q4の動向として、Alexa Occupancy RoutinesやGlasss Break Sensor、Air Quality Monitorなどスマートホームデバイスの進化と、IoT FleetWiseやStellantisとの協業などモビリティ事業の拡大について解説しました。

一般的な消耗品ビジネス(プリンタのカートリッジなど)は継続購入のベースとなる「デバイス」を押さえるビジネスモデルですが、アマゾンは消費者の「家」をまるごと押さえるビジネスモデルを実現しつつありそうです。また、クラウドとつながる「車」に必要なデータプラットフォームも押さえ始めており、アマゾンの影響力が及ぶ分野はさらに広がりそうです。

今後も4半期レポートがアップデートされる度に記事を追加していきますので、ご期待ください。また、無料のメールマガジンでは、記事のアップデート情報に加え、特許情報などより踏み込んだ内容も解説しているので、ぜひご活用ください。

 

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
工場設備エンジニア、スタートアップでの事業開発を経て現職。現在は企業内発明塾®における発明創出支援、教材作成に従事。個人でも発明を創出し、権利化を行う。発明塾東京一期生。

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