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【図解】Facebook (Meta)の経営戦略と今後 ~メタバースのプラットフォーマーへの進化

Meta Platforms, Inc.(旧Facebook, Inc.)は、2021年10月のニュースリリースで社名変更と、メタバースを優先する経営方針を発表しました。Facebook, Inc.の頃と同様に「人と人をつなぐこと」を企業理念とし、今後10年間でメタバースの利用者を10億人に増やすことなどが目標として掲げられています。

本記事では、メタバースの普及に向けたFacebook (Meta)の戦略について、具体的なデータと事例をあげて解説します。まず、同社の収益構造とメタバース開発への投資について解説した後、具体的なメタバース関連サービスと技術を紹介します。

<参考:Meta Platforms, Inc.(旧Facebook, Inc.) 基本情報>
ティッカーシンボル:FB(NADAQ)
Facebook, Inc.創立年:2004年
ウェブサイト:https://about.facebook.com/
(ティッカーシンボルはMVRSに変更する予定だったが、2022年4月4日時点で変更なし。)

※AR技術で先行するマイクロソフトのメタバース戦略については以下の記事で解説しています。

【FY22 Q2最新】マイクロソフトのメタバース戦略とカーボンネガティブ戦略

Facebook(Meta)の経営戦略の概要 ~ビジネスモデルとメタバースへの投資

Facebook(Meta)の事業構造の概要

Facebook(Meta)の事業構造の概要

 

SNS広告収益を柱とするビジネスモデル

Facebookは世界で最も利用されているSNSで、月間アクティブユーザー数は2021年12月31日時点で、グローバルで29億1千万人にのぼっています。また、2012年に買収したInstagramが10億人以上、2014年に買収したWhatsAppも20億人以上のユーザーに利用されており、世界人口(約80億)のかなりの割合がMetaグループのサービスを使っています。

MetaのAnnual Reportによると、2021年度の収益は約1179億ドルで、そのうち約1157億ドルを広告収入が占めており、SNSユーザー向けの広告ビジネスが現時点の柱であることがわかります。

メタバースへの投資と、開発を主導するFacebook Technologies, LLC 

一方、広告収入の1~2%程度の額ですが、メタバース関連サービスを手掛けるReality Labsからの収益も1年に2倍のペースで伸びており、メタバース事業も成長しています。Annual report (p25)によると、Metaは2021年に100億ドル近くをReality Labsに投資しており、収益の1割程度をメタバース開発に使っているようです。

Reality Labsにおける技術開発を主導するのが、2014年に買収したOculus Vr, Llcのメンバーで、現在、OculusはMetaの子会社であるFacebook Technologies, LLC.の所属となっています。

Google Patensの検索結果を見ると、Oculusの特許だけでなく、ジェスチャー入力端末を開発するCTRL-Labs(2019年にMetaが買収)の特許や、ARデバイスのスタートアップであるDaqri, Llc(2019年に倒産)の特許もFacebook Technologiesが保有しており、Facebook TechnologiesがVRとAR技術開発の中心になっていることがわかります。

つまり現在の主力ビジネスであるSNS広告で得た資金を将来の柱であるメタバース事業に投資し、子会社のFacebook Technologiesのメンバーがその開発を主導する、という体制がMetaの中で構築されているようです。

次項では、具体的なメタバース関連サービスと技術の内容を紐解きます。

※海外企業の特許を自分で読んでみたい、という方は、以下の記事をご活用下さい。

英語が読めなくても米国特許を検索する方法 ~Google翻訳を活用して海外特許を読む

Facebook(Meta)が手掛けるメタバース関連サービスとVR/AR技術の具体例

AR関連の特許出願の例(Google Patentsより)

AR関連の特許出願の例(Google Patentsより)

ソーシャルプラットフォームのHorizonと、リアルな体験を支えるOculusの技術

Metaの「Horizon」は、メタバース上で人と人をつなぐソーシャルプラットフォームで、「人と人をつなぐ」という同社の理念をメタバース空間で実現するサービスです。

例えば、知人をバーチャルなスペースに招待して交流するHorizon Homeや、ゲームなどを通して世界中のユーザーと交流できるHorizon Worlds、コンサートやスポーツイベント等に参加できるHorizon Venuesなどが提供されています。

Horizon WorldsのTwitterによると、Horizon Worldsには2022年2月時点で10000を越える仮想の世界(ワールド)が形成されており、Horizonの月間ユーザー数は30万人を越えているようです。

メタバース上でのリアルな体験をサポートするのがOculusのVR技術で、目線のトラッキングや、顔の方向や手の動きを同期させるモーションキャプチャーなどが基本的な技術として知られています。また、Oculus Researchのページを見ると、表情認識や指先の高精度トラッキングなど、応用的な技術開発も進めていることがわかります。

メタバースで活躍するクリエイターを育てる

一方、メタバース空間の魅力を高めるには多様な3Dコンテンツが必要であり、クリエイターをプラットフォームに取り込む仕掛けが必要です。

Oculusの2021年10月のブログによると、MetaはHorizon World Creator Fundと呼ばれるクリエイター基金に1000万ドルを投資しており、優れたクリエイターへの賞金や、トレーニングプログラムなどに使われるようです。クリエイターの発掘と育成を並行して進める戦略のようです。

YouTubeはクリエイターをYouTuberとして取り込んで成長しましたが、MetaのHorizonも同様の戦略で成長する可能性があります。個人的な印象として、YouTuberは「話すのが得意な人」が有利ですが、メタバース上では「3Dデザインの見せ方が得意な人」など、これまで注目されなかった才能が発掘されそうで、今後が楽しみです。

AR技術がつくる未来を見据えたProject Aria

最後に、AR関連の取り組みを1つ紹介します。

Project Ariaは、AR向けの技術のベースをつくる研究プロジェクトで、ARグラスなどのハードウェアや、周囲の空間を3Dデータ化するマッピング機能などの開発が行われています。

また、カーネギーメロン大学との共同研究による目が不自由な方向けのナビゲートシステムの開発や、BMWとの協業によるドライバーのナビゲートシステムの開発など、アライアンスも積極的に行われています。

関連する特許を調べたところ、例えばARグラスに関する特許出願のJP2021524021Aでは、カメラから取り込んだ周囲の画像データに基づいて、ARグラスに投影する画像のパターンを修正する技術などが記載されていました。発明者のMichael Anthony Hall氏は、MicorosoftのHolo Lens開発にも関わっていたエンジニアのようです。AR技術開発でも、マイクロソフトなど先駆者の人材を取り込み、キャッチアップしていることがわかります。

メタバースのプラットフォーマーを目指すFacebook(Meta)の今後

ここまで、Metaの経営戦略について、広告収益を柱とする現状のビジネスモデルと、Facebook Technologiesが主導するReality Labsの開発体制、Horizonプラットフォーム上に形成されるメタバース関連サービスと、関連する技術の具体例を解説しました。

Metaのメタバース事業が成長していくことは間違いなさそうですが、Magic Leapやマイクロソフトなど、早くからメタバースに取り組んでいる企業の方が特許取得などの面では先行しており、競争も激化することが予想されます。

ただ、Metaは一般消費者をターゲットにしたサービスにフォーカスしており、企業向けのクラウドサービスを柱とするマイクロソフトとは経営のスタンスが少し異なるので、協調する部分もありそうです。メタバース業界のプレーヤーの動向については今後もウォッチし、記事にしていきたいと思います。

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※マイクロソフトの経営戦略については以下の記事もご参照ください。

マイクロソフトのカーボンネガティブ経営戦略【図解あり】 ~Azure, Climate innovation Fundの最新情報

 

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
大阪大学大学院工学研究科 招へい教員
半導体装置の設備エンジニアとして台湾駐在、米国企業との共同開発などを経験した後、スタートアップでの事業開発を経て現職。個人発明家として「未解決の社会課題を解決する発明」を創出し、実用化・事業化する活動にも取り組んでおり、企業のアイデアコンテストでの受賞経験あり。

あらゆる業界の企業や新技術を徹底的に掘り下げたレポートの作成に定評があり、「テーマ別 深掘りコラム」と「イノベーション四季報」の執筆を担当。分野を問わずに使える発明塾の手法を駆使し、一例として以下のテーマで複数のレポートを出している。
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