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MicrosoftFY22Q2最新イノベーション_メタバース、脱炭素

【FY22 Q2最新】マイクロソフトのメタバース戦略とカーボンネガティブ戦略 ~Activision Blizzard買収、Cloud for Sustainability公開

前回記事では、カーボンネガティブの達成に向けたマイクロソフトの戦略と取り組みを紹介しましたが、本記事ではFY22 Q2(2022会計年度、第2四半期;2021年10月~12月)の動きを中心に、マイクロソフトの最新の取り組みをレポートします。

まず、メタバースに関連した動きとしてMesh for Microsoft Teamsの発表やActivision Blizzard買収計画について紹介します。次に、カーボンネガティブ関連の動きとしてクラウドサービス・Cloud for Sustainabilityのパブリックプレビュー公開、Breakthrough Energy Catalystへの投資について紹介し、最後にマイクロソフトの今後の展開について考察します。

<参考:Microsoft Corporation基本情報>
ティッカーシンボル:MSFT
創立年:1975年
ウェブサイト:www.microsoft.com

※前回記事ではカーボンネガティブに向けたマイクロソフトの経営戦略の全体像を、図や表を使って詳しく解説しています

マイクロソフトのカーボンネガティブ経営戦略【図解あり】 ~Azure, Climate innovation Fundの最新情報

マイクロソフトのメタバース戦略 ~Mesh for Microsoft Teams発表、Activision Blizzard買収

MR(複合現実)デバイスの構造と利用方法の概要。利用者はリアルとバーチャルの映像をMix(複合)して活用できる(HoloLensのハードウェア情報などを参考に作成)

MR(複合現実)デバイスの構造と利用方法の概要。利用者はリアルとバーチャルの映像をMix(複合)して活用できる(HoloLensのハードウェア情報などを参考に作成)

メタバースの定義と、関連するマイクロソフトの技術

「メタバース」は、KPMGコンサルティング株式会社が作成した報告書によると、「一つの仮想空間内において、様々な領域のサービスやコンテンツが生産者から消費者へ提供」されるプラットフォームとして定義されています。「仮想空間」にはVR(Virtual Reality)、AR(Augument Reality)と、それらを包括するMR(Mixed Reality;複合現実)の3つが含まれます。

マイクロソフトは10年以上前からメタバース関連技術の開発に取り組んでおり、例えばHoloLensはホログラムを現実空間に重ね合わせて利用できるMRデバイスとして知られています。

Microsoft Meshの概要とMesh for Microsoft Teamsの目的

Microsoft Meshは、クラウドのAzureをベースとする複合現実プラットフォームで、2021年3月のブログ記事(日本語版)によると、エンターテイメント分野だけでなく、機器の組み立てや医療など様々な分野で活用が始まっています。

例えば、外科手術の際に、Mesh経由でHoloLens に送られた臓器のデータを参照し、手順などを確認しながら作業を進めることも可能です。
複雑な作業の求められる分野のニーズにマッチした技術と言えます。

2021年11月のニュースリリースで発表されたMesh for Microsoft Teams(提供開始は2022年の予定)は、Microsoft Meshの技術をオンライン会議ツールのTeamsに適用したサービスで、利用者はTeams内に構築された仮想空間にアバターとして参加し、ビデオ会議よりもリアルで自然なコミュニケーションを体験できます。「寂しさ」や「深いコミュニケーションができない」といったリモートワークに共通した課題を解決するためにメタバースを活用したサービスのようです。

Activision Blizzard買収によるメタバース技術の発展

ここまで紹介したメタバース関連技術は主に企業向けに開発されたものですが、2022年1月にマイクロソフトのニュースリリースで発表されたActivision Blizzardの買収は、一般消費者向けのゲーム業界の動きとして注目を集めました。

マイクロソフトはこの買収をメタバース技術の発展に向けた重要なステップと考えており、投資家向けのMicrosoft and Activision Blizzard Investor Callでも、両社の技術を組み合わせて「デジタルと物理世界をつなぐメタバースプラットフォーム」をつくるビジョンが語られています。

ちなみに、Activision Blizzardは子会社のActivision Publishingを出願人とする多数の特許を保有しており、メタバース関連の特許も多く含まれます。買収による特許プラットフォームの強化も、マイクロソフトの狙いの一つだったことが推測されます。

※マイクロソフトの巧みな知財戦略については以下の記事で詳細を解説しています。

マイクロソフト特許ポートフォリオの具体例と、クラウドAuzreの知財戦略

カーボンネガティブに向けたMicrosoft Cloud for Sustainabilityの公開とBreakthrough Energy Catalystへの投資

Microsoft Cloud for Sustainabilityのパブリックプレビュー公開

一方、2021年11月のブログ記事(日本語版)では、CO2排出量削減に向けたクラウドサービスであるMicrosoft Cloud for Sustainabilityのパブリックプレビュー公開が報じられています。

このサービスはクラウドのAzure上で実行され、CO2排出量をスコープ1(活動から直接生じる排出)やスコープ2(電力消費などで間接的に生じる排出)だけでなく、スコープ3(関連する他の活動から間接的に生じる排出)までのデータを取得し、業界標準に合った方法で記録できます。

また、削減目標の進捗状況を分かりやすくレポートする機能により、顧客は現状を正確に把握し、さらに排出量を削減するための計画を立てやすくなるようです。

Breakthrough Energy Catalystへの投資

2021年9月のブログ記事でマイクロソフトはBreakthrough Energy Catalystへ1億ドルの寄付を行うことを発表しました。Breakthrough Energy Catalystは、CO2排出のネットゼロ達成に向けて官民パートナシップを進めるプロジェクトで、マイクロソフトの他にAmerican Airlines、Bank of America、BlackRock、ボストンコンサルティンググループなど様々な業種の企業が参加しています。

前回の記事で紹介したように、マイクロソフトは投資ファンドのClimate innovation Fundで炭素除去に関連したスタートアップを支援していますが、公的機関や企業が参加するプロジェクトにも出資することで、カーボンネガティブに向けたエコシステムの拡大を加速させる戦略をとっているようです。

 

マイクロソフトの今後 〜メタバース戦略とカーボンネガティブ戦略は両立可能か?

以上、マイクロソフトの2022年Q2の動きとして、Mesh for Microsoft Teamsの発表やActivision Blizzard買収などメタバース関連の話題と、Cloud for SustainabilityのパブリックプレビューやBreakthrough Energy Catalystへの投資などカーボンネガティブ関連の話題を取り上げました。また、メタバースの定義など基本情報も簡単に解説しました。マイクロソフトのメタバース戦略を理解する一助になれば幸いです。

ちなみに、メタバースなど仮想空間を使った技術は容量の大きい3Dデータをリアルタイムでやりとりするため、高度化するほどサーバーの負荷も大きくなり、CO2排出量の増加につながります。例えば2020年のランチェスター大学の研究で、ストリーミングゲームの普及によるCO2排出量の増加リスクが指摘されています。

つまり、メタバース関連企業は、技術の高度化とCO2排出量低減のトレードオフに直面していることになります。

前回記事でも述べたように、マイクロソフトは「2030年までにカーボンネガティブ(毎年のCO2の除去量が排出量を上回る状態)を実現する」という目標を立て、炭素の排出量削減と除去量増加の両方にコミットしています。

マイクロソフトが上記のトレードオフを乗り越え、メタバースの進化と排出量削減を両立できるか、今後も4半期ごとの最新情報を追跡します。4半期レポートの更新情報は弊社の無料メールマガジンにてお知らせしますので、マイクロソフトの今後に興味がある方はぜひご登録ください。

 

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
工場設備エンジニア、スタートアップでの事業開発を経て現職。現在は企業内発明塾®における発明創出支援、教材作成に従事。個人でも発明を創出し、権利化を行う。発明塾東京一期生。

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