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2022Q4_セールスフォース4半期レポート

【FY22 Q4】セールスフォース最新動向 ~SlackによるDX化の成功事例と特許出願動向、ワクチンクラウドなどコロナ対策支援

前回の記事では、セールスフォースの根幹にある「カスタマーサクセス」の考え方や、トレイルブレイザーやオハナなど同社の企業文化の根底にある概念について解説しました。

本記事では、FY22 Q4(2022会計年度、第4四半期;2021年11月〜2022年1月)の動向を中心に、セールスフォースの最新情報を紹介します。特に2021年に同社が買収したSlackのその後の動きと、ワクチンクラウドやContact Tracingなどコロナ対策支援関連のサービスについて、具体的な事例も交えて紹介します。

<参考:Salesforce.com, inc.基本情報>
ティッカーシンボル:CRM
創立年:1999年
ウェブサイト:www.salesforce.com

※前回記事では、セールスフォースの全体像をつかむための戦略や思想について解説しています。基礎知識としてご参照ください。

【図解】セールスフォースのカスタマーサクセス戦略とは? ~トレイルブレイザーを支援し、オハナを拡大する

Slack買収で加速するセールスフォースのDX戦略と成功事例、Slack側の知財戦略

Slack買収により実現するデジタル本社(Digital HQ)の構想と成功事例

セールスフォースは2021年9月のプレスリリースで、世界中の組織がSlack上に「デジタル本社(Digital HQ)」をつくるビジョンを示しており、どこにいても仕事ができるプラットフォームの構築に力を入れています。

デジタル本社の具体的なイメージについては、FY22Q4の投資家向けConference Callで紹介されているラルフローレン(Ralph Lauren)の事例が参考になります。同社は北米において、地理的に離れたチームどうしのコミュニケーションにSlackを使い、遠隔でも効率的に仕事を進めることに成功しています。

ラルフローレンの2022年Q3の北米地域におけるオンラインの売上は前年度と比較して30%以上増加しており、顧客からの評価も高まっているようです。

具体的なSlackの機能とDX化の成功事例

セールスフォースは「Customer 360」と呼ばれる顧客データのプラットフォームを以前から構築していますが、Slackとの連携による機能強化を進めており、進化したプラットフォームは「Slack-First Customer 360」と呼ばれています。

企業の活用事例として、例えばSonosでは、Customer 360で取得した顧客データをSlack上で活用したり、Slack workflowと呼ばれる機能で業務プロセスを自動化するなど、業務のデジタル化に積極的にSlackを活用しています(2022年1月のセールスフォースニュースリリース参照)。

また、Slackはビデオや音声コンテンツを簡単に作成して共有できる「Slack Clip」や、政府の認証を受けたクラウド環境を提供する「GovSlack」などの新機能を次々にリリースしており、より多様なニーズに合ったサービスに進化しています。

Slack買収の舞台裏にある知財戦略 ~買収前の特許大量取得

Slack Technologies, Inc. の特許出願件数の推移(Google Patentsの検索結果に追記して作成。年度は出願日ベース)

 

ちなみに、Slackの特許取得状況についても少し調べたところ、買収が近づいた時期である2019年以降に大量の特許出願を行っていることがわかりました。

出願内容も、JP2020126600A「地理的に分散したデータの管理及びこれに基づく検索インデックス生成のための方法、装置、並びにコンピュータプログラム製品」のように離れた地域のグループ間コミュニケーションに関連した出願など、前記の「Digital HQ」の考えに合致したものが多く、セールスフォースが欲しがる機能を権利の面でも押さえていることがわかります。

買収条件に関する交渉を有利に進める材料の確保にもなっており、スタートアップの交渉戦略としても参考になります。

※スタートアップが大企業との契約交渉を進める際のポイントについては以下の記事で解説しています。大企業と対等に交渉を進めたいスタートアップの方は是非ご参照ください。

オープンイノベーションにおける契約のポイント【スタートアップ向け】

セールスフォース・ワクチンクラウド、Contact Tracingなどコロナ対策支援サービスの内容と活用事例

セールスフォースのコロナ対策支援サービスの内容

一方、セールスフォースはコロナ対策に関連したサービスも多数開発しており、例えばワクチン接種の計画や接種会場の従業員とのコミュニケーションをサポートするVaccine Cloudや、救急サービスやボランティアの派遣などをサポートするCommunity Trust and Safety、従業員の健康管理や感染が起きた可能性のある場所の特定などを支援するContact Tracing Systemなどがあげられます。

また、アプリケーション同士を接続するプラットフォームのMule Softによる感染データの統合、従業員支援プラットフォームのWrok.comによるワクチン接種履歴の管理など、既存サービスをコロナ対策用に拡張する取り組みも盛んに行われています。

ビクトリア州や日本におけるコロナ対策サービスの活用事例

上記サービスの具体的な活用事例として、FY22Q4の投資家向けConference Callでは、オーストラリアのビクトリア州保険局(Victoria Department of Health)の事例が紹介されています。ビクトリア州では、2020年からセールスフォースのContact Traing Systemを利用しており、コロナ対策の技術的な基盤としてセールスフォースを活用しています。

日本でも、セールスフォースの日本法人が「新型コロナ保健所業務支援クラウドパッケージ」を提供しており、千葉県の船橋市や、埼玉県川口市などで導入されています。市民からの問合せ対応や病院紹介などの業務の効率化に活用されており、公共サービスのデジタルトランスフォーメーションに関する事例として参考になります。

顧客中心のDX推進の最先端を進むセールスフォースの今後

ここまで、セールスフォースの最新動向として、Digital HQ構築に向けたSlackの進化や、コロナ対策に関連した機能について、具体的な事例も交えて解説しました。

前回の記事で、買収によりイノベーションを加速するセールスフォースの戦略を紹介しましたが、現在はSlackがイノベーションの中心になっていることがわかります。

また、コロナ対策支援サービスは企業だけでなく政府にも提供されており、社会課題を解決しながら多様なエコシステムを広げる同社の戦略にも合致しています。

今後も、セールスフォースの動向を4半期ごとにウォッチし、記事として公開していく予定です。記事の更新情報と、より深掘りした内容は弊社の無料メールマガジンで発信しているので、セールスフォースの今後に興味がある方はぜひご利用下さい。

※コロナワクチン開発を加速する技術については、Ginkgo Bioworksの事例が参考になります。以下の記事で解説しているので、製薬分野のイノベーションに興味がある方はぜひご参照ください。

Ginkgo Bioworksの技術と経営戦略【徹底図解】~ワクチンから農業まで革新するDNA・細胞編集プラットフォーム

 

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
工場設備エンジニア、スタートアップでの事業開発を経て現職。現在は企業内発明塾®における発明創出支援、教材作成に従事。個人でも発明を創出し、権利化を行う。発明塾東京一期生。

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