テーマ別 深掘りコラム 1分で読める!発明塾 塾長の部屋
会社概要 発明塾とは? メンバー
実績 お客様の声
オープンイノベーションにおける契約のポイント【スタートアップ向け】

オープンイノベーションにおける契約のポイント【スタートアップ向け】

2021.5.19

オープンイノベーションの概要に関する記事では、そのメリットと課題について解説しましたが、本記事では、オープンイノベーションを進める上でキーとなる「契約」について、特にスタートアップや起業家の方に向けた内容を簡単に解説します。

規模の小さいスタートアップがオープンイノベーションを行う主な目的は、事業会社のリソースを活用して自社技術を速く世に出し、普及させることです。ただ、協業のトラブルによって事業が立ち行かなくなるケースもあり、トラブル防止のための適切な契約の結び方を知る必要があります。

以下に、スタートアップが結ぶ契約に関する基本的な考え方と契約の種類、各契約におけるポイントを順に記載します。

 

スタートアップが結ぶ契約の基本的な考え方と典型的な契約の種類

スタートアップと事業会社の契約における基本的な考え方

オープンイノベーションを通じ、スタートアップはリソース不足をカバーして開発を加速でき、事業会社は新規事業につながる成果が得られるので、両者にメリットがあります。ただ、新規テーマは想定外のトラブルも多く、必ず揉める点が出てくるので、対応方針を事前に契約書で定めておくことが重要です。

特にスタートアップにとって、コア技術に関する権利を相手に占有されることや、時間と資金を失うことは致命的であり、信頼できる事業会社と、対等な関係を保てるように契約を結ぶことが求められます。

では、具体的にどのような契約を結ぶ必要があるのか、以下に例を紹介します。

特許庁のモデル契約書に見る典型的な契約の種類

スタートアップが事業会社と結ぶ主な契約については、経済産業省より「研究開発型スタートアップと事業会社のオープンイノベーション促進のためのモデル契約書ver1.0」が公開されており、参考になります。モデル契約として「秘密保持契約(NDA)」「PoC契約」「共同研究開発契約」「ライセンス契約」の4つについて契約書のひな形が提供されています。

一般的に、スタートアップと事業会社のオープンイノベーションは、協業に向けた情報のやり取りから始まり、PoCと呼ばれる技術検証のステップを経て、共同研究や開発に進みます。上記のモデル契約書は、その流れに沿って各ステップで必要な契約書のモデルを提示したものです。本記事でも、これらの内容を参考に、それぞれの契約のポイントを整理していきます。

 

事業会社との秘密保持契約・PoC契約におけるポイント

秘密保持契約は秘密情報の定義や期間に注意

秘密保持契約(non-disclosure agreement : NDA)は交渉の初期段階で取り交わされることが多く、スタートアップは自社の技術情報を秘密情報として相手に共有するのが一般的です。

全ての情報を守ることは現実的ではないので、事前に秘密情報の範囲を契約書で明確に定義することが重要です。例えば、経済産業省のモデル契約書_秘密保持契約書では、秘密情報の利用目的を前文で明記し、特に重要な情報を別紙で定めるなどの工夫をしています。

また、相互に情報を共有する場合、相手から得た情報を保護する義務が生じ、契約が事業を進める上で足かせとなるケースもあります。よって、契約によって得られるメリットとデメリットのバランスを考え、適切な契約期間を設定することも重要です。

PoC契約は目的と期間を明確にする

技術検証(Proof of Concept : PoC)契約は、共同研究や事業化に入る前段階として、スタートアップの技術の有望性などを検証する際に結ばれる契約です。例えば、経済産業省のモデル契約書_PoC契約書では、新素材を用いた製品開発を進める前評価として、材料の試験片で耐久性試験を行う例が記載されています。

PoCはあくまで共同研究開発を開始する前の予備試験として行うものであり、時間と費用を使いすぎないことが重要です。そのため、具体的な目的と試験方法、期間を契約書に明記し、所定の期間内に結論を出すことで、効率よく検証プロセスを進めることができます。

 

事業会社との共同研究開発やライセンス契約における注意点

共同研究開発契約は成果の配分やキャッシュフローに注意

共同研究開発で得られた成果は、スタートアップ・事業会社ともに可能であれば占有したいと考えるので、事前に契約で成果の配分を規定しておくことが重要です。例えば、特許はスタートアップが保有する代わりに、事業会社に主要な事業の領域における実施権を付与するなど、お互いの事業が成長できるような取り決めを行うことが効果的です。

また、資金力の乏しいスタートアップが契約期間中に資金ショートしないよう、支払に関する契約内容を調整することも重要です。例えば、経済産業省のモデル契約書_共同研究開発契約書の第10条では、事業の進捗に応じて段階的に対価を支払うマイルストーン契約の考えを取り入れることで、スタートアップのキャッシュフローへの配慮がされています。

ライセンス契約は一社独占にならないよう注意

ライセンス契約は、特許権などの実施を他社に許可する際に結ばれます。スタートアップがライセンス契約を行う場合、自社のコア技術に関する権利を事業会社にライセンスするのが一般的です。

スタートアップにとってコア技術に関する権利は事業の根幹であり、幅広い分野で活用しながらライセンス収益を得られることが望ましいので、特定の企業のみに独占されないように契約内容を調整します。例えば、経済産業省のモデル契約書_ライセンス契約書においても、非独占の実施権によりライセンスを行うことが明記されています。

また、ライセンス後にスタートアップや事業会社が改良技術を開発した場合の対応なども事前に決めておくことで、将来的なトラブルを未然に防止することができます。

 

契約によりオープンイノベーションのトラブルを防ぎ、自社技術を世に出す

ここまで、特にコア技術を持ったスタートアップが事業会社とのオープンイノベーションを進める際に重要な契約のポイントを解説しました。いずれの契約においても、発生するトラブルを事前に予測し、予め契約書に盛り込んでおくことが協業の成功につながります。

ただ、スタートアップの進める事業は不確定な要素が多く、全てを予測して契約で縛ることはできないため、最終的には両社の信頼関係が重要になります。契約交渉の段階で相手がどのような要求をしてくるかを確認し、Win-Winの関係を築ける相手を慎重に選ぶことをお勧めします。

また、研究開発型のスタートアップにおいては、技術情報の扱いが契約のキーポイントになるため、研究開発者が契約の知識を身に着けることが重要です。弊社の教材、e発明塾「アライアンスと知的財産」では、研究開発に関わる方が身に着けるべき契約知識について、法律の基礎から実際の交渉における注意点まで幅広く学んでいただけます。そちらもぜひご活用ください。

その他、弊社教材に関する資料を資料ダウンロードページにて無料提供しているので、ご興味のある方はぜひご参照ください。

 

★本記事と関連した弊社サービス

 

★書籍出版のお知らせ

弊社初となる書籍『新規事業を量産する知財戦略』を出版しました!新規事業や知財戦略の考え方と、実際に特許になる発明がどう生まれるかを詳しく解説しています。

『新規事業を量産する知財戦略』書籍画像

※KindleはPCやスマートフォンでも閲覧可能です。ツールをお持ちでない方は以下、ご参照ください。

Windows用
Mac用
iPhone, iPad用
Android用

企業内発明塾バナー

最新記事

資料ダウンロードへ遷移するバナー

5秒で登録完了!無料メール講座

ここでしか読めない発明塾のノウハウの一部や最新情報を、無料で週2〜3回配信しております。

・あの会社はどうして不況にも強いのか?
・今、注目すべき狙い目の技術情報
・アイデア・発明を、「スジの良い」企画に仕上げる方法
・急成長企業のビジネスモデルと知財戦略

無料購読へ
TechnoProducer株式会社
© TechnoProducer Corporation All right reserved