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2023Q1_セールスフォース4半期レポート

【FY23 Q1】セールスフォース最新動向 ~NTTの事例から見える成長力の源泉と、ブルーカーボンなど脱炭素分野の取り組み

前回のセールスフォース4半期レポート(FY22 Q4)では、Slack買収に関連した動きとコロナ対策関連サービスについて紹介しました。本記事ではセールスフォースのFY23Q1(2023会計年度、第1四半期;2022年2月~4月)の動きを簡単に紹介します。

まず、FY23Q1の収益増加と、成長の背景にある同社のサービスの仕組みについてNTTの事例を参考に解説し、次に、脱炭素分野の動きとして、炭素除去技術やブルーカーボンへの投資について解説します。

<参考:Salesforce.com, inc.基本情報>
ティッカーシンボル:CRM
創立年:1999年
ウェブサイト:www.salesforce.com

※セールスフォースの経営戦略の全体像については以下の記事で詳しく解説しています。

【図解】セールスフォースのカスタマーサクセス戦略とは? ~トレイルブレイザーを支援し、オハナを拡大する

急成長を続けるセールスフォースのサービスとNTTデータの事例

圧倒的な成長速度を維持するセールスフォースのサービス

セールスフォースのカテゴリーごとのFY2022Q1とFY2023Q1の売上高比較(※Platform and Otherの増加率が高いが、2021年にSlackを買収したことによる増加を含む)

セールスフォースのカテゴリーごとのFY2022Q1とFY2023Q1の売上高比較(※Platform and Otherの増加率が高いが、2021年にSlackを買収したことによる増加を含む)

 

セールスフォースのプレゼン資料によると、FY23Q1の総売上高(Total Revenue)は74億1100万ドルで、前年のQ1から24%増加しており、急成長していることが分かります。

セールスフォースの成長速度はソフトウェア企業の中でも群を抜いており、東海東京調査センターのレポートによると、2012~2022年の10年間の増収率は+1069%です。セールスフォースと同様に顧客関係管理(CRM)サービスに取り組むマイクロソフト、オラクルの10年間の増収率がそれぞれ+157%、+13%であることを考慮すると、セールスフォースがいかに高い成長率を長期的に維持しているかがわかります。

その成長速度を支えるのが、各サービスの継続的な成長で、図に示すように、全カテゴリーが前年より10%以上成長しています。セールスフォースの経営戦略の解説記事にも書いたように、セールスフォースはMuleSoftやTableau、Slackなどを買収しながら成長した企業ですが、買収後も各サービスが連携して成長する仕組みをつくっているようです。

具体的に各サービスがどのように関わっているのかについては、NTTデータの資料で詳しく解説されているので、そちらを参考に掘り下げてみます。

セールスフォースの各サービスの連携をNTTデータの資料から読み解く

セールスフォースの各サービス連携のイメージ(NTTデータ資料を参考に簡略化して作成)

 

NTTデータはセールスフォースのコンサルティングパートナーで、セールスフォースのCRMサービスを導入する企業へのサポートをしています。CRMにおいては、顧客情報を収集し、顧客ニーズにマッチしたアクションを取ることが必要ですが、例えば以下のように各サービスを使い分けているようです。

  • MuleSoftが、メールやSNS、自社サイトなど異なる顧客管理システムの情報を連携
  • Tableauが蓄積された顧客データを整理し、誰でも分析できるように可視化
  • 分析結果を踏まえ、適切なタイミングで顧客にコンタクト
    (営業活動支援のSalesCloudやカスタマーサービス支援のServiceCloudなどのシステムを利用)

これらの作業が自動的に行われることで、例えば「この顧客は1週間後に店舗に商品を受取りに来る可能性が高いので、その数日前に関連商品のクーポンを送付する」といった、個人ごとのきめ細やかな対応を少ない労力で行えます。また、複雑なプロセスを同じプラットフォーム上で行えるので、利便性が向上します。

(1つのGoogleアカウントで、Docsやスプレッドシートなど複数のツールが使えると利便性が上がるのに似ています)

上記の事例から、セールスフォースは買収によって獲得したサービス同士を連携させ、より高い顧客価値を提供していることがわかります。顧客価値の向上が新たなカスタマーサクセスを生み、新たな顧客の開拓にもつながるという好循環が、セールスフォースの急成長の背景にあるようです。

※2021年のSlack買収に関連した動向については、以下の記事で解説しています。

【FY22 Q4】セールスフォース最新動向 ~SlackによるDX化の成功事例、ワクチンクラウドなどコロナ対策支援

セールスフォースのサステナビリティ戦略 ~炭素除去・ブルーカーボンへの投資

一方、セールスフォースは社会貢献にも力を入れており、気候変動の課題に対しても、独自のClimate Action Planを作成し、多面的に取り組んでいます。以下に最新の活動を紹介します。

炭素除去技術への投資

2022年5月のニュースリリースによると、セールスフォースは世界経済フォーラムの年次総会で、炭素除去技術に1億ドルを投資する計画を発表しました。

この投資は、First Movers Coalitionと呼ばれる国際的なイニシアチブの一部で、同イニシアチブは企業の購買力(purchasing power) を活かし、航空や鉄鋼分野などCO2削減が困難な分野の脱炭素化を目標としています。

ブルーカーボン市場の拡大に向けた取り組み

一方、2022年4月のニュースリリースによると、セールスフォースは、ブルーカーボン(海洋や沿岸の生態系によって捕捉される炭素)の市場拡大に向けた取り組みを開始しています。

ブルーカーボンは今後成長する分野として期待されていますが、海底の土壌に蓄積された炭素の移動や放出などを考慮すると、炭素除去効果を正確に把握するのは難しく、データの信頼性に課題があります。

ちなみにマイクロソフトの炭素除去レポートでも1件のブルーカーボンプロジェクトが紹介されていますが、耐久性・安定性に対する評価は低い(Low-durability)プロジェクトに分類されています。

セールスフォースは今後4年間で1000万ドル相当の高品質なブルーカーボンクレジットを購入する計画を立てており、信頼性の高いプロジェクトの成長を支援しています。

また、サステナビリティ関連のニュースリリースによると同社は海洋持続可能性のディレクターとしてWhitney Johnston博士を採用し、プラスチック汚染等の課題に取り組むなど積極的に活動しており、取り組みの本気度が伺えます。

※脱炭素分野で世界をリードするマイクロソフトの経営戦略については、以下の記事で解説しています。

マイクロソフトのカーボンネガティブ経営戦略【図解あり】 ~Azure, Climate innovation Fundの最新情報

急成長と社会貢献の両立を目指すセールスフォースの今後

ここまで、セールスフォースのFY2023Q1の動きを中心に、同社の急速な成長を支える仕組みや、気候変動対策など社会課題の解決に向けた取り組みを紹介しました。

NTTの事例から、買収したサービスがプラットフォーム全体の利便性をさらに向上させ、顧客価値の向上と成長につながる仕組みが読み取れました。2021年に買収したSlackとの連携を強化することで、今後さらに成長することが期待できます。

また、サステナビリティ関連では、炭素除去技術に加え、ブルーカーボンなど海洋分野でも投資を行っており、気候変動という社会課題に対しても多面的に取り組んでいることがわかります。海洋分の持続可能性に関する取り組みは独自性が高く、今後の展開が楽しみです。

急速に拡大しつつ、社会課題の解決にも積極的に取り組むセールスフォースについて、今後も継続的にウォッチしていきます。より踏み込んだ考察については弊社の無料メールマガジンで紹介しているので、ご興味のある方はぜひご活用ください。

 

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
工場設備エンジニア、スタートアップでの事業開発を経て現職。現在は企業内発明塾®における発明創出支援、教材作成に従事。個人でも発明を創出し、権利化を行う。発明塾東京一期生。

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