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グーグルのオープン&クローズ戦略

グーグルのオープンクローズ戦略 ~ソフトウェア技術の強みを生かす知財戦略

2020.12.4

オープンクローズ戦略の解説記事では、オープンクローズ戦略により大量普及と高収益が実現できること、優れた知財を持つことが戦略を成功させるカギであることを説明しました。

米国の巨大IT企業であるグーグルも、オープンクローズ戦略を巧みに活用して急成長した企業の一つです。本記事ではグーグルのオープン領域、クローズ領域の内容と戦略的な位置づけを解説します。

 

グーグルのオープン領域 ~オープンソースの活用~

グーグルはウェブブラウザのChrome、スマートフォンのAndroid OSなどをオープンソースのコードを利用して開発しており、オープンソースの情報をまとめたGoogle Open Sourceと呼ばれるページを開設するなど、製品のソースコードを積極的に公開しています。

Androidについては、Androidオープンソースプロジェクトのページで、以下のように説明されています(2020/11/10現在、太字は引用者による)。

Android はモバイル デバイス向けのオープンソース オペレーティング システムであり、Google が主導するオープンソース プロジェクトでもあります。このサイトと Android オープンソース プロジェクト(AOSP)リポジトリには、Android OS のカスタム版を作成し、デバイスとアクセサリを Android プラットフォームに移植し、Android エコシステムを数百万のユーザーにとって健全かつ安定した環境に保つ互換性要件をデバイスが満たすようにするために必要な、情報とソースコードが記載されています。

つまり、Android OSのカスタム版を作成できる環境を提供しており、他の企業を自由に参入させることで、Androidの普及が進むことを意図しています。この戦略によりSamsungやHuaweiなどの企業が次々にAndroid OSベースのスマートフォンを開発しました。アメリカのIT・通信分野の調査会社IDCの調べでは、2020年第1四半期のスマートフォン出荷台数において、Samsungは世界全体の21.1%、Huaweiは17.8%と、アップルの13.3%を大きく上回っています。

※生活品分野のオープン戦略で有名なP&Gの事例は以下記事で解説しています

P&Gのオープンイノベーション ~戦略の概要と成功事例~

グーグルのクローズ領域 ~検索・広告技術のクローズ化~

一方、グーグルは検索技術・検索連動型広告等の技術をコア領域としており、その内容はクローズ化し、独占しています。グーグルの基本理念をまとめた「Googleが掲げる10の事実」の第6項「 悪事を働かなくてもお金は稼げる。」にも

Google は営利企業です。企業に検索テクノロジーを提供することと、Google のサイトやその他のウェブサイトに有料広告を掲載することで収益を得ています。

と明記されており、同社の利益の根幹が検索・広告にあることが伺えます。

グーグルの所有する知財を見ると、代表的なものとして検索の「ページランク」に関する出願が、創業年の1998年に行われており、米国特許第6285999号として成立してます。また、AdWordやAdSenseなど広告関連の技術に関する出願も多数行われており、例えば特表2006-500698では、「広告のユーザの関心に対する関連性」を改善するための方法について記載されています。

一方、検索や連動広告に関するアルゴリズムの詳細は開示されておらず、知的財産権だけでなくノウハウの秘匿化も進めながら、収益の源泉となるクローズ領域の構築を行っていると考えられます。

※グーグルとは逆に 、特許をオープンにする戦略で注目を集めたテスラについては以下で解説しています

インテル・クアルコムのオープンクローズ戦略 〜成功事例から知るメリット

グーグルとアップルのオープンクローズ戦略の違い

オープン領域の項で述べたように、グーグルはAndroid OSのソースコードをオープン化し、カスタム版を作成できる環境を提供しています。この点で、iOSのコア部分をクローズ化しているアップルとは対照的です。

このような違いは、グーグルのコア技術が検索・広告関連技術などハードウェアに依存しない領域であるのに対し、アップルのコア技術が優れたデザインをもつハードウェアやその制御プログラムであることに起因します。

Alphabet社のAnnual Report(2019年)によると、2019年のグーグル部門の収益に占める広告の比率は83.9%、アップルのAnnual Report(2019年)によると、2019年のアップルの純売上高全体に占めるプロダクト(iPhone, Macbookなど)の割合は82.2%となっており、いずれもコア技術領域が主な収益源になっていることがわかります。

グーグルとアップルの収益の差

図. グーグルの収益に占める広告収入の比率と、アップル製品の売上高における製品ごとの比率(Alphabet社, Apple社の2019年Annual Reportのデータを元に作成)

 

※アップルの特許戦略について、以下記事ではアップルウォッチを題材に掘り下げて解説しています

アップルの特許情報からApple Watch・AirTagsの未来を予測

グーグルはオープンソースと検索・広告技術の拡大と独占に活用している

ここまで、グーグルのオープンクローズ戦略について、アップルの比較も交えて解説してきました。今回調査したポイントを以下に整理します。

・オープンソースを活用して、技術の開発スピードを向上させ、かつ技術の標準化、市場拡大に成功している

・一方で収益の中核を担う検索・広告関連の技術をクローズ化して独占市場を構築している

グーグルのように巨大な企業の戦略をまねるのは容易ではありませんが、さほど規模の大きくないメーカーがオープンクローズ戦略を活用して市場を支配した例も存在します。弊社の動画セミナー「優れた知財戦略で世界を変えたクアルコムに学ぶ知財戦略の基礎」では、オープンクローズ戦略により大きく成長するための基本的な考えと、IoT・医療データビジネスなど様々な分野の成功事例を紹介し、自社がオープンクローズ戦略で成功するための全体観を獲得して頂けます。また、弊社のケーススタディ資料では、インテルなどの部品メーカーがオープンクローズ戦略を活用して市場の支配権を握った経緯を分析しており、資料ダウンロードページより無料で提供しております。ぜひご活用ください。

 

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
工場設備エンジニア、スタートアップでの事業開発を経て現職。現在は企業内発明塾®における発明創出支援、教材作成に従事。個人でも発明を創出し、権利化を行う。発明塾東京一期生。

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