P&Gのオープンイノベーション戦略~コネクト&デベロップ戦略とは

P&Gのオープンイノベーション ~戦略の概要と成功事例~ 

2021.4.28

前回の記事では、オープンイノベーションのメリットや課題について解説しましたが、本記事では代表的な事例としてプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)のオープンイノベーションを取り上げます。

まず‎、P&Gのオープンイノベーション戦略である「コネクト&デベロップ」について概要を解説します。次に、具体的な取り組みとして、社外アイデアの活用と、社内技術のライセンスについて具体的な事例を交えて紹介します。

 

P&Gにおけるコネクト&デベロップによるオープンイノベーション戦略

コネクト&デベロップ戦略の背景は業績の悪化

P&Gのオープンイノベーション戦略はコネクト&デベロップと呼ばれ、2000年頃からスタートしました。その背景には旧来の研究開発体制の限界による業績の悪化があり、2000年の1月から5月にかけて同社の株価が半減するなど、深刻な状態にありました。

2000年にP&GのCEOに指名されたアラン・G・ラフリーは、今までのクローズドな研究開発体制ではいくら資金を投入しても成長目標に到達できないと気づき、コラボレーションを中心にしたオープンなモデルへ転換することを決めました。それが、同社のコネクト&デベロップ戦略の始まりとなりました。

コネクト&デベロップ戦略の効果

上記のように業績の悪化を背景に始まったコネクト&デベロップ戦略は、「コストを増やさずにイノベーション能力を倍にする」というシビアな目標に向けて進められました。ハーバード・ビジネス・レビュー 2007年11月号に掲載された記事によると、P&Gは自社の研究者と同等の能力をもつ人間が全世界で150万人いると推定しており、自社では足りないリソースを社外から積極的に取り入れることを基本方針としました。

また、P&Gは消費者のニーズを明確に把握していたため、それを満たすための技術を社外からも取り入れて開発を行いました。前記のハーバード・ビジネスレビュー記事によると、同社の2007年におけるイノベーションの成功率は2000年と比較して2倍以上に増加したと言われています。さらに、イノベーションのコストは減少しており、2000年に4.8%だった「対売上高研究開発率」は2007年には3.4%まで低下したそうです。

こられの成果につながった取り組みとして、主に社外のアイデア活用に関するものと、自社技術を他社にライセンスするものの2種類があります。以下、それぞれ順に解説します。

 

P&Gにおける社外アイデア活用の取り組みと成功事例

採用すべきアイデアの判断基準

社外には無数のアイデアがありますが、何を優先するかの基準を持たないと使いこなすことはできません。P&Gでは、事前に把握した消費者ニーズをもとに、優先して解決すべき顧客課題をランク付けし、より重要な課題を解決するアイデアを採用しています。

また、既に確立されたブランドを強化して横展開するためのアイデアも積極的に採用しています。たとえばオーラル・ケア分野のブランドであるCrestでは、歯磨き粉など既存の製品に加えて、歯の漂白シートや電動歯ブラシなどの技術を取り入れ、製品ラインナップを強化しました。

社外のアイデア活用の取り組みと成功事例

次に、アイデアを取り込む具体的な仕組みを紹介します。

P&Gのウェブサイト 「コネクト + デベロップ」 では、同社が開発のために探索しているテーマを公開しており、個人・企業を問わず広くアイデアを募集しています。具体的なテーマとして、オーラルケアや美容、パッケージなどが提示されています(2021年3月2日現在)。

また、テクノロジー・アントレプレナーと呼ばる技術探索の担当者が世界中で技術シーズの探索を行っており、成功事例としてMr. Clean Magic Eraserの開発が知られています。

2015年に発表されたP&Gのオープンイノベーションに関する論文によると、ドイツの化学企業BASFが開発したスポンジを、日本で活動するP&Gのテクノロジー・アントレプレナーが発見したことがきっかけでMr. Clean Magic Eraserの共同開発が始まったそうです。同製品は、現在では世界中で販売される製品に育っています。

一方、P&GはInnoCentiveナインシグマなど、オープンイノベーションの社外プラットフォームも活用しており、オープンイノベーションの仕組みにおいても社内リソースに頼りすぎない体制をつくっています。

 

P&Gにおける自社技術の他社へのライセンス戦略と成功事例

他社にライセンスを行う背景

他社へのライセンスが重要となる背景に、自社の知的財産の利用率の低さがあります。ヘンリー・チェスブロウ氏の著書『オープンビジネスモデル』の記載によると、P&Gによる自社特許の調査では、自社ビジネスで積極的に活用されている特許は全体の約10%に過ぎなかったとされています。

このような実態を把握したP&Gは、社外へのライセンシングに対する注目を高め、関心のある企業の探索や、自社技術を使いやすくするための社外ネットワークの構築に力を入れるようになりました。

他社へのライセンスの成功事例

P&Gによる日本企業へのライセンスの事例として、味の素株式会社への骨粗鬆症治療剤リセドロネートに関する特許や商標等のライセンスが知られています。味の素株式会社の2009年のプレスリリースによると、同社はそれらの権利をP&Gから約210億円で譲り受ける契約を締結しており、現在は味の素株式会社に権利が移っているようです。

また、オープンな提携の成功例として、米国の大手家庭用品メーカーのクロロックスとP&Gとのジョイントベンチャー設立が知られています(前出の『オープンビジネスモデル』にて紹介)。

クロロックスはP&Gの競合企業でしたが、P&Gはベンチャー設立に向けて密閉ラップ等に関する複数の技術をライセンスしました。設立されたベンチャー企業は非常に優秀な業績を収め、P&Gはライセンスフィーとストックオプション等により多額の利益を得ることができました。競合企業をも仲間として取り込む、オープンイノベーションの本質的な考え方を実践した例と言えます。

 

オープンイノベーションの成功事例を学び、自社の戦略に取り入れよう

ここまで、オープンイノベーションの成功事例として、P&Gのコネクト&デベロップ戦略の概要と、同社の社外アイデア活用、自社技術の社外への提供について、取り組みの内容や具体例を紹介しました。P&Gが解決すべき課題(消費者ニーズ)を明確にし、最小限のリソースで達成する手段としてオープンイノベーションを活用しており、その考え方と具体的なアプローチは多くの企業の参考になると思います。

特に、競合企業さえも巻き込みながら仲間を増やし、成長する仕組みづくりはオープンイノベーションの本質と言えます。本記事が、仲間を増やす戦略を取り入れ、強い事業をつくるきっかけになることを願っております。

また、弊社のサービスである企業内発明塾でも、他社を巻き込みながら成長するオープンイノベーションの考えを取り入れた新規事業創出を支援しており、事業化が次々に進んでいます。具体的なサービスの内容については、紹介資料を資料ダウンロードページにて提供しておりますので、ご興味のある方はぜひご参照ください。

 

 

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
発明塾東京一期生。現在は企業内発明塾™における発明創出支援、教材作成に従事。
個人でも発明を創出し、権利化を行う。

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