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セールスフォースFY23Q2_ヘルスケア、脱炭素

【FY23 Q2最新】セールスフォースの投資戦略とイノベーション事例 ~Slack新機能、富士通ヘルスケア事業・AT&T脱炭素化の支援

前回のセールスフォース4半期レポート(FY23 Q1)では、NTTの事例や、脱炭素関連の最新情報を紹介しました。本記事ではセールスフォースのFY23Q2(2023会計年度、第2四半期;2022年5月~7月)の最新情報を解説します。

まず、FY23Q2の財務状況と投資戦略を簡単に解説した後、昨年買収したSlackの進化について紹介します。次に、具体的なイノベーションの事例として、富士通との協業によるヘルスケアサービスの開発と、AT&Tとの連携による脱炭素化への取り組みを紹介します。

<参考:Salesforce.com, inc.基本情報>
ティッカーシンボル:CRM
創立年:1999年
ウェブサイト:www.salesforce.com

※セールスフォースの経営戦略の全体像については以下の記事で詳しく解説しています。

【図解】セールスフォースのカスタマーサクセス戦略とは? ~トレイルブレイザーを支援し、オハナを拡大する

セールスフォースの投資戦略とSlackの成長

キャッシュフローを積極的に研究開発に投資する戦略を継続

セールスフォースの総売上高(Total Revenue)とR&D投資の推移(※FY22Q2~FY22Q3の伸びが大きいのは、買収したSlackの売上がFY22Q3から算入されているため)

セールスフォースの総売上高(Total Revenue)とR&D投資の推移
(※FY22Q2~FY22Q3の伸びが大きいのは、買収したSlackの売上がFY22Q3から算入されているため)

 

セールスフォースのFY22Q1~FY23Q2の売上高と研究開発投資(R&D投資)の推移をグラフに示しました。同社は「フリーキャッシュフローを拡大してイノベーションに投資する」というシンプルな投資戦略を取っており、継続的な売上とR&D投資の増加売上とR&D投資の継続的な増加を達成していることがわかります。

この戦略は、過去記事で紹介したアマゾンの投資戦略とも類似しており、急成長する企業のひとつの典型的な戦略と言えます。

FY23Q2は為替相場の変動による影響により多少減速しましたが、各事業カテゴリーが順調に成長しています。セールスフォースのFY23Q2の投資家向けConference Callによると、同社の取締役会(Board of Directors)は最大100億ドルの「自社株買い」を承認しており、「自社のビジネスが株主価値を生み出し続けること」に対する自信が伺えます。

※イノベーション投資を最大化するアマゾンの戦略については以下の記事で詳しく解説しています。

アマゾンのイノベーション経営戦略とは?【最新事例解説】キャッシュフローを新規事業に再投資するビジネスモデルの今後

SlackのCustomer360との統合とWorkflow Builderの機能拡張

現在セールスフォースが特に注力しているのが、2021年に買収したSlackの他のサービスとの統合や機能拡張です。セールスフォースのCustomer360は企業と顧客をつなぐプラットフォームですが、組織を越えたコミュニケーションのプラットフォームとしてSlackを統合することで、さらに利便性が向上するようです。

Slackの特許出願を見ると、ここ数年で「組織間のコミュニケーション」に関する特許を多数出願しています。例えば2020年に出願された US10951564B1 ”Direct messaging instance generation” は異なる組織の人物がダイレクトメッセージを送る際の通信方法に関するもので、分割出願もすでに2件出されています。組織をつなぐ技術を独占する準備も進めていることがわかります。

また、2022年8月のSlackのブログでは、決まった作業プロセスを自動化するためのツール Slack Workflow Builder(ワークフロービルダー)のアップデートを発表しており、ワークフローの共有や検索、実行のプロセスが更に効率化するようです。

2022年9月20〜22日に開催されるDreamforce 2022というイベントでも関連した発表があるようで、今後のSlackの動向にも注目したいと思います。

※Slackの買収に関連した特許出願などの動きについては以下の記事で解説しています。

【FY22 Q4】セールスフォース最新動向 ~SlackによるDX化の成功事例と特許出願動向、ワクチンクラウドなどコロナ対策支援

セールスフォースのイノベーション最新動向 ~富士通とのヘルスケアサービス開発、AT&TへのNet Zero Cloud提供

続いて、FY23Q2におけるセールスフォースのイノベーションとして、ヘルスケア分野と脱炭素分野の事例を紹介します。

ヘルスケア分野における富士通との協業と特許出願動向

富士通とセールスフォースのG16H10/60区分の特許出願件数(Google Patentsの検索結果に追記して作成。年度は出願日ベース)

富士通とセールスフォースのG16H10/60区分の特許出願件数
(Google Patentsの検索結果に追記して作成。年度は出願日ベース)

 

2022年6月の富士通のニュースリリースでは、セールスフォース・ジャパンと富士通がヘルスケア領域における新ソリューション創出に向けて協業することが発表されています。第一ステップとして、保険会社向けのデジタルソリューション提供に向けた共同開発が進められており、富士通は病気の予兆を検知するAIによる分析技術などを、セールスフォースは医療データを一元管理するツールとしてMuleSoftやTableauなどを提供するようです。

関連する特許出願の動向として、例えば CPC分類のG16H10/60 区分(電子カルテなど患者に関連した医療・ヘルスケアデータの扱いに関する技術)の出願数を確認しました。グラフのように富士通の出願数は継続して増加していますが、セールスフォースは2019年以降に一気に出願数が伸びています。

1分類を見ただけの分析ですが、富士通・セールスフォース共にヘルスケア分野での研究開発が加速しており、セールスフォースはここ数年で一気に力を入れているように見えます。

セールスフォースのヘルスケア分野への参入が加速しそうなので、関連する企業の方は特許をチェックしてみると良いかもしれません。

※特許の読み方・調べ方が知りたい方は以下の記事をご参照ください。

特許の読み方と調べ方 ~GooglePatentsを活用して特許スキルを磨く

AT&Tの脱炭素化を支援するNet Zero Cloud

2022年6月のセールスフォースのニュースリリースによると、同社とAT&Tは炭素排出量ゼロ実現に向けて協業することを発表しており、セールスフォースは AT&T のConnected Climate Initiative (CCI;気候変動対策のためのイニシアチブ) に参加しています。

CCIは2035年までに温室効果ガス排出量を1ギガトン削減する目標を立てており、セールスフォースは排出量の追跡・報告プラットフォームであるNet Zero Cloudを提供し、AT&TのIoTセンサーデータもNet Zero Cloudに統合して管理するようです。AT&Tは2008年から温室効果ガス排出量を測定・報告していますが、Net Zero Cloudの導入により大幅な作業効率化が実現できます。

排出量管理のクラウドサービスについては、マイクロソフトも2022年6月のリリースでCloud for Sustainability の一般提供開始を発表しており、今後競争が激しくなりそうです。

※Cloud for Sustainabilityについては以下の記事でも紹介しています。

【FY22 Q2最新】マイクロソフトのメタバース戦略とカーボンネガティブ戦略

 

「両利きの経営」の深化と探索を続けるセールスフォースの今後

以上、セールスフォースの最新動向として、R&D投資を最大化する戦略とSlackの他のサービスとの統合と機能拡張、ヘルスケア分野での富士通との協業と関連する特許出願動向、Net Zero CloudによるAT&Tの脱炭素化支援について紹介しました。

「両利きの経営」(詳細は過去コラムで解説)のフレームワークで考えると、Slackを自社のプラットフォームと統合し、自社サービスの品質を向上するプロセスは「深化」に、ヘルスケアや脱炭素分野への進出は「探索」に該当しますが、R&D投資を最大化することで、両方に大きなリソースを投下できており、セールスフォースは「両利きの経営」を実践する企業とも言えます。

今後、クラウドサービスの業界でますます存在感を強めていきそうなので、今後の動向を引き続きウォッチします。また、弊社の無料メールマガジンでは、セールスフォースの技術やビジネスモデルをさらに深掘りした考察も紹介しているので、一緒に未来を先読みしたい方は是非ご登録ください。

 

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
工場設備エンジニア、スタートアップでの事業開発を経て現職。現在は企業内発明塾®における発明創出支援、教材作成に従事。個人でも発明を創出し、権利化を行う。発明塾東京一期生。

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