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Microsoftのクラウド成長、電力イノベーション戦略

【FY22 Q4最新】マイクロソフトのクラウド成長戦略と、持続可能な電力供給技術のイノベーション

前回のマイクロソフト4半期レポート(FY22 Q3)では、マイクロソフトによるNuance Communications(以下、ニュアンス)買収の具体的な狙いと、カーボンネガティブに向けた投資の事例を紹介しました。本記事ではマイクロソフトのFY22Q4(2022会計年度、第4四半期;2022年4月~6月)の最新動向をお伝えします。

まず、今期の好業績を支えたクラウドビジネスについて、政府向け新サービスの事例と、ニュアンスの買収後の展開を紹介した後、「持続可能な電力供給イノベーションの最前線」の事例を、図を用いてわかりやすく解説します。電力供給技術の未来を知りたい方はぜひご参照下さい。

<参考:Microsoft Corporation基本情報>
ティッカーシンボル:MSFT
創立年:1975年
ウェブサイト:www.microsoft.com

 

マイクロソフトの成長を支えるクラウド戦略と、ニュアンスのAIを利用したサービスの拡張

FY22Q4のマイクロソフトの事業セグメントごとの売上の前年度比

FY22Q4のマイクロソフトの事業セグメントごとの売上の前年度比(FY22Q4の投資家向けプレゼン資料のデータを元に作成。「PC」はMore Personal Computingセグメント、「クラウド」はIntelligent Cloudセグメント、「生産性・ビジネス」はProductivity and Business Processesセグメントを示す)

 

クラウドビジネスへの移行によるマイクロソフトの成長加速

FY22Q4のマイクロソフトの業績は図に示したように非常に好調で、売上高(Revenue)で見ると12%増加しています。特にAzureやGitHubなどを含むクラウド(Intelligent Cloudセグメント)の伸びが顕著で、クラウドビジネスを中心としたビジネスモデルへのシフトが順調に進んでいることがわかります。

新サービスのリリースも積極的に行っており、例えば2022年7月に発表されたMicrosoft Cloud for Sovereigntyは、各国の政府や公共セクターの顧客を対象としたクラウドサービスで、データ保護の法規制など、政府の要件に準拠した開発環境で業務のDX化を進めることができます。また、2022年5月のブログでは、マイクロソフトが欧州のローカルプロバイダーと積極的に提携して政府にサービスを提供する方針が示されており、各国独自の要件に対応するために、地元の企業とも協力しながら事業を拡大していることがわかります。

ニュアンスの技術を利用したサービスの拡張

一方、2022年3月に買収が完了した音声技術のトップ企業であるニュアンスの技術についても、既にマイクロソフトのサービスに組み込まれ始めています。例えば2022年7月のブログで発表されたMicrosoft Digital Contact Center Platformはコンタクトセンター向けのデジタルツールで、高度な会話型AIなどの機能にニュアンスの技術が使われています。ニュアンスのAI技術により、センターに問合せをした顧客の問題をより迅速に解決できることが期待されているようです。

また、FY22Q4の投資家向けConference Callによると、米国の非営利医療システムのIntermountain Healthcareは、新しいデジタル戦略の柱として、Microsoft Cloud for HealthcareとニュアンスのDAX(Dragon Ambient eXperience;病院向けの会話型AI) を選択しています。Cloud for Healthcareは医療分野のDX化をサポートするツールですが、ニュアンスの技術により医師と患者の会話を自動で報告書にまとめることなども可能になり、顧客の手間と時間をさらに削減できるようです。

※マイクロソフトとニュアンスの技術の親和性については前回の4半期レポートで詳しく考察しています。

【FY22 Q3最新】マイクロソフトのニュアンス買収の具体的な狙いとカーボンネガティブへの投資

【図解】データセンターのクリーン化を実現するマイクロソフトの電力関連イノベーション事例

続いて、カーボンネガティブに関連した最新の動向として、電力供給システムに関連したイノベーションの事例を紹介します。

「脱化石燃料」のデータセンター実現に向けたPEM水素燃料電池技術のブレークスルー

PEM方式の水素燃料電池の仕組みの概要図(参考資料:Rolls-Royce Power System HP)

PEM方式の水素燃料電池の仕組みの概要図(参考資料:Rolls-Royce Power System HP

2022年7月のニュースリリースによると、マイクロソフトは3メガワットの水素燃料電池システムの稼働に成功しています。この水素燃料電池はプロトン交換膜 (proton exchange membrane ; PEM) 方式と呼ばれる技術を採用しており、図に示したように供給されるのは水素と酸素、反応により生じるのは水と熱であり、炭素排出の無いクリーンな発電方法です。

図の中央に描かれたプロトン交換膜(PEM)がプロトンのみ陽極側に透過し、電子は通さないのがポイントで、電子は陰極側に留まるので、結果的に陰極に流れ込むことになり、電流が発生します。

この燃料電池はデータセンターへの電力供給のバックアップ電源としての利用が想定されています。現在はディーゼル発電機をバックアップ電源として使っていますが、燃料電池に切り替えることができれば、化石燃料に依存しないデータセンターの実現に一歩近づきます。

マイクロソフトは2013年からカリフォルニア大学の燃料電池研究センターと共同で燃料電池技術の調査を開始しており、10年先を見据えた開発を地道に行い、実現していることがわかります。

データセンターのバッテリー転用による電力網の脱炭素化

データセンターのバックアップ電源を利用した電力供給システムの概要図(マイクロソフトの2022年7月のニュースリリースの情報を元に自作)

データセンターのバックアップ電源を利用した電力供給システムの概要図(マイクロソフトの2022年7月のニュースリリースの情報を元に自作)

2022年7月のニュースリリースによると、マイクロソフトのアイルランド拠点において、データセンターのバックアップ電源(リチウムイオンバッテリー)を地域の電力網に利用するプロジェクトが進んでいます。

アイルランドでは風力発電が電力供給の35%以上を占めていますが、風の強さは変動するため、安定供給の問題があります。送電網の電力供給不足を避けるため、現在は化石燃料発電所からの供給量にマージンを持たせていますが、それがCO2排出増加の原因になっています。

それを解決するのが、データセンターのバックアップ電源の利用です。データセンターが電力網の状態をリアルタイムで把握しながら、不足した電力を必要な量だけ供給することで、化石燃料の稼働も最小限に抑えられます。エネルギーアドバイザリー企業のBaringaの試算では、このシステムの利用により2025年には約200万トンのCO2(アイルランドの総排出量の約20%)が削減できる見込みのようです。

つまり、データセンターが単なる「クラウドサービスの基盤」ではなく「地域の電力供給のインフラ」に発展することになります。ちなみにマイクロソフトが2011年に出願した特許のUS9003216B2にも同様の構想が記載されており、こちらも10年越しで取り組んでいることがわかります。

※カーボンネガティブに向けたマイクロソフトの経営戦略の全体像は以下の記事で詳しく解説しています。

マイクロソフトのカーボンネガティブ経営戦略【図解あり】 ~Azure, Climate innovation Fundの最新情報

持続可能なクラウドビジネスの成長を目指すマイクロソフトの今後

ここまで、マイクロソフトのFY22Q4の最新動向として、好業績の原動力となったクラウドビジネスの拡大と、買収したニュアンスの技術によるサービスの進化、PEM方式の水素燃料電池やバックアップ電源の活用など、クリーンな電力供給に関するイノベーションの事例を紹介しました。マイクロソフトが、クラウドビジネスを成長させつつ、そのビジネスを持続可能にする打ち手を「先読み」して着実に実現していることがわかります。

また、マイクロソフトが技術革新を進めることで、新たなビジネスの機会も生まれます。例えば、紹介したPEM方式の燃料電池では、PEM膜の材料技術や、触媒反応の高効率化、水素の製造コスト低減などが重要になります。さらに5年後、10年後を見据えると何をつくるべきか、検討してみてはいかがでしょうか。

また、弊社の無料メールマガジンでは、これまでもマイクロソフトの技術を掘り下げた考察のレポートを多数紹介しており、今後もより深い内容を提供してゆく予定です。「持続可能な電力供給の未来」を学び、新規事業開拓や投資に生かしたい方はぜひご活用下さい。一緒に未来をつくりましょう!

 

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
工場設備エンジニア、スタートアップでの事業開発を経て現職。現在は企業内発明塾®における発明創出支援、教材作成に従事。個人でも発明を創出し、権利化を行う。発明塾東京一期生。

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