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ユニバーサルロボットとは

【詳説】Universal Robots(ユニバーサルロボット)とは? ~協働ロボットNo.1メーカーの技術戦略を解説

デンマーク企業のUniversal Robots(ユニバーサルロボット)は、人と一緒に作業を行う「協働ロボット」の市場でシェア1位のメーカーです。

本記事では、ユニバーサルロボットのコア技術と、同社の親会社である米国企業「テラダイン」の戦略を解説します。後半では、メタバースを活用したユニバーサルロボットの最新の特許技術を紹介します。協働ロボットの最前線をリードする企業の動向を知りたい方はぜひご参照ください。

<参考:Universal Robots基本情報>
ティッカーシンボル:UR
設立年:2005年
ウェブサイト:https://www.universal-robots.com/

※ユニバーサルロボットとは異なる視点で「協調ロボット」と呼ばれる最新のロボットを開発するオムロンの戦略は以下の記事で解説しています。

【図説】協調ロボットとは? 〜先進メーカー「オムロン」の開発事例と「i-Automation!」のビジネスモデル

ユニバーサルロボットの概要 ~協働ロボット技術とテラダインによる買収の狙い

ユニバーサルロボットのコア技術は協働ロボット

Universal Robotsの協働ロボット(Cobot)を利用したラベル貼り作業の様子(Wikipediaの動画の画像に追記して作成)

Universal Robotsの協働ロボット(Cobot)を利用したラベル貼り作業の様子(Wikipediaの動画の画像に追記して作成)


ユニバーサルロボットのコア技術はアーム型の「協働ロボット」です。協働ロボットは衝突を防止するセンシング技術が搭載されており、上図のように人と同じ空間でも安全に作業を行うことができます。

2022年4月のRobotics247の記事によると、ユニバーサルロボットは協働ロボット市場で50%近いシェアを持っており、圧倒的な世界No.1です。同社の強みとして、例えば以下の内容が知られています。

  • 開梱から最初の作業開始まで1時間で完了できる使いやすさ
  • エレクトロニクス、医薬品、化粧品など幅広い分野に適用できる汎用性
  • 協働ロボット関連の特許65件を保有(同社HP参照、2023年9月12日現在)

ちなみに「協働ロボット」という概念は比較的新しく、市場の立ち上がりは2004年頃とされています(※)。ユニバーサルロボットは2005年の創業後、他社に先駆けて「使いやすい汎用的なロボット」を多業種に提供し、関連技術の特許も押さえ、独占的なポジションを築いたようです。

WiredWorkersの記事によると、Kuka Robotics社は協働ロボット「LBR 3」を2004年に発売開始

親会社テラダインによるユニバーサルロボット買収の狙い

ユニバーサルロボットは、2015年に米国企業のテラダインにより2億5,800万ドルで買収されています(同社の歴史の紹介ページ参照)。テラダインはその後、さらに以下2件の買収を完了しています。

協働ロボット市場で圧倒的なシェアを持つユニバーサルロボットを買収した後、「制御」や「自律的な移動」など相性の良い技術をもつ企業を買収し、技術プラットフォームを強化していることがわかります。テラダインは、急成長する協働ロボット市場(※)の独占に必要なリソースを買収で獲得する戦略をとっており、ユニバーサルロボットはその中心となる企業と言えます。

2023年3月の矢野経済研究​所のレポートによると、協働ロボットの世界市場は2021年の1500億円程度から、2032年には1兆円以上の規模に成長することが予測されている

ユニバーサルロボットの最新の協働ロボット技術 ~メタバース技術の活用

ARを活用した協働ロボットの制御技術

Universal RobotsのMR技術の概要(同社の特許出願WO2023131385A1の図に追記して作成)

Universal RobotsのMR技術の概要(同社の特許出願WO2023131385A1の図に追記して作成)

 

続いて、ユニバーサルロボットの最新技術を調査するため、同社の2023年の特許出願 WO2023131385A1 を分析しました。この出願では、ロボットが動作できるエリアを制限するための面(安全面)をARデバイスにより規定する技術が記載されています。

協働ロボットは先述の通り「人と同じ空間で作業をするロボット」で、ロボットが安全に作業できるスペースを規定する必要があります。前記のAR技術を使うことで、上図のようにスマートフォンのカメラ画像などを元に、「ここから先は進入禁止」といったエリア分けが簡単に定義できます。

既存のロボット制御システムでは、「X, Y, Z軸上の座標を、数値で入力する」といった作業が必要でした。この技術により、ロボットの動作する範囲を感覚的に設定できるので、作業者の負担を減らすことができます。

ネクストスケープ「RoboLens」の活用による動作検証

ユニバーサルロボットの2023年のリリースによると、同社は日本のスタートアップである「ネクストスケープ(NEXTSCAPE)」のシステムを協働ロボットの周辺機器プラットフォーム製品として認証しています。

ネクストスケープが提供するのは「RoboLens」と呼ばれるロボット導入支援システムで、Microsoft社のメガネ型デバイス「HoloLens2」を活用します。HoloLens2は透過性のあるレンズで現実世界を見ながら、仮想物体を表示することができます。

ユーザーは現実世界を見ながら、仮想のロボットを設置することができます。例えば、「うちの工場の、この机にロボットを置いて作業させたら問題なく使えるか?」といったシミュレーションをホログラムを使って確認することが可能です。

多くの工場は24時間体制で稼働しているので、実際にロボットを設置して検証にはラインを止める必要があります。しかし、上記の技術を使えば、稼働中の工場でも仮想的にロボット導入の検証ができます。ロボット導入のハードルが下がり、顧客は手間が削減でき、ユニバーサルロボットは売り込みが楽になるので、双方にとってメリットのあるシステムと言えます。

協働ロボットの進化をリードするユニバーサルロボットの今後

以上、ユニバーサルロボットの協働ロボット技術とテラダインによる買収の背景にある戦略に加え、メタバース技術を活用した同社の最新技術を紹介しました。すでに協働ロボット市場で独占的な立場を築いているメーカーですが、メタバースなど最新技術を取り入れて更に成長することが予想されます。

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
大阪大学大学院工学研究科 招へい教員
半導体装置の設備エンジニアとして台湾駐在、米国企業との共同開発などを経験した後、スタートアップでの事業開発を経て現職。個人発明家として「未解決の社会課題を解決する発明」を創出し、実用化・事業化する活動にも取り組んでおり、企業のアイデアコンテストでの受賞経験あり。

あらゆる業界の企業や新技術を徹底的に掘り下げたレポートの作成に定評があり、「テーマ別 深掘りコラム」と「イノベーション四季報」の執筆を担当。分野を問わずに使える発明塾の手法を駆使し、一例として以下のテーマで複数のレポートを出している。
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