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Microsoftの音声認識、サステナビリティ戦略

【FY22 Q3最新】マイクロソフトのニュアンス買収の具体的な狙いとカーボンネガティブへの投資

前回のマイクロソフト4半期レポート(FY22 Q2)では、メタバース関連の動向を中心に紹介しました。本記事ではマイクロソフトのFY22Q3(2022会計年度、第3四半期;2022年1月~3月)のイノベーション関連情報について、背景にある戦略の考察も含めて簡単に解説します。

具体例として、音声認識AI(人工知能)のトップ企業であるNuance Communicationsの買収に関連した技術や、カーボンネガティブ実現に向けたXbox事業の変革、LanzaJetやBlocPowerなどカーボンネガティブ関連スタートアップへの投資について解説します。

<参考:Microsoft Corporation基本情報>
ティッカーシンボル:MSFT
創立年:1975年
ウェブサイト:www.microsoft.com

※カーボンネガティブに向けたマイクロソフトの経営戦略の全体像は以下の記事で詳しく解説しています。

マイクロソフトのカーボンネガティブ経営戦略【図解あり】 ~Azure, Climate innovation Fundの最新情報

マイクロソフトのNuance Communications(ニュアンス・コミュニケーションズ)買収による技術革新

医療分野におけるニュアンスとマイクロソフトの技術。組み合わせが技術革新につながりそうな例を抜粋して紹介したもの。

医療分野におけるニュアンスとマイクロソフトの技術。組み合わせが技術革新につながりそうな例を抜粋して紹介したもの。

 

ニュアンス買収によりマイクロソフトが獲得する技術やサービス

マイクロソフトは2022年3月のニュースリリースで、Nuance Communications Inc.(以下、ニュアンス)の買収が完了したことを発表しました。ニュアンスは音声認識技術のトップ企業で、医療や、企業と顧客のコミュニケーション(コンタクトセンターなど)、自動車などに関する分野でソリューションを提供しています。

例えば、NuanceのPowerScribe Oneというサービスは米国の放射線科医の8割近くに利用されており、音声入力とAI技術を使って簡単に画像診断のレポートが作成できます。診断の際は臓器の画像データなどに集中したいので、レポートを音声で作成できることに大きなメリットがあります。

また、車載向けの音声認識エンジン「Dragon Drive」は運転中の音声操作をサポートしており、利用者の視線のトラッキングによる「見ている部分の操作」にも対応しています。例えば、右の窓を見て「Open」と言えばその窓を開く、といった操作も可能なようです。

ニュアンスとマイクロソフトの技術の親和性と、予想される技術革新

ニュアンスは既に音声認識関連の強い技術を持っていますが、今後はマイクロソフトの技術との組み合わせによりさらに進化することが予想されます。

例えば、マイクロソフトのMixed RealityグラスであるHoloLensの視線トラッキング技術を活用することで、車載以外にも様々な場面で視線トラッキングと音声操作を組み合わせた作業が可能になります。具体的な用途として、目線を向けている検査画像の3Dデータを音声で呼び出し、HoloLensのディスプレイに表示させることなどが考えられます。

また、マイクロソフトは2022年3月のブログ記事で、医療データの一元管理をサポートするサービスであるAzure Health Data Services の一般提供開始を発表しています。このサービスにより、これまで別々に管理されていた医療機器の検査データやCTスキャンデータなどに素早くアクセスすることが可能になるため、音声操作で呼び出せるデータの幅も広がりそうです。

メタバース事業の戦略という観点で考察すると、マイクロソフトは医療などBtoB分野でコアになる用途を確実に押さえており、主にBtoC分野でプラットフォーム構築を目指すFacebook(Meta)に比べると地味ですが、手堅さが感じられます。

※Facebookのメタバース戦略については以下の記事で詳しく解説しています。

【図解】Facebook (Meta)の経営戦略と今後 ~メタバースのプラットフォーマーへの進化

カーボンネガティブ達成に向けたゲーム事業の改善とスタートアップ投資

Scope3の排出削減の課題とXbox事業における対策

マイクロソフトは2022年3月のブログで、サステナビリティ関連の目標達成に向けた現状を説明しています。カーボンネガティブについては、2021年のScope3の排出量(企業のバリューチェーン全体で生じるCO2排出量)の増加が課題になっており、ゲーム機のXboxに関連した排出量は特に増加しています。

Xboxのチームは、2022年3月にサステナビリティへの取り組みに関する記事を公開しており、リサイクル樹脂パーツの利用などハードウェア側の対策に加え、スリープモードの消費電力削減などソフトウェア側の対策、データセンターにおける再生可能エネルギーの利用などサーバー側の対策をそれぞれ記載しています。

LanzaJet・BlocPowerなどカーボンネガティブ関連スタートアップへの投資

自社内の取り組みに加え、マイクロソフトのClimate Innovation Fund(気候イノベーション基金)によるカーボンネガティブ関連スタートアップへの投資も継続されています。例えば2022年1月に、サステイナブル燃料技術をもつ「LanzaJet」と、建物をクリーンエネルギー利用システムに改装する技術を持つ「BlocPower」への出資がそれぞれ行われています。

2022年2月のLanzaJetのニュースリリースによると、同社は米国における燃料工場の建築に向けてMarquis Sustainable Aviation Fuel (Marquis SAF)と覚書を交わしています。製造される燃料は、従来のジェット燃料と比較してライフサイクル温室効果ガス量(原料製造から燃料利用に至るまでの排出量)を70%以上削減できるようです。

一方、BlocPowerは、老朽化した都市の建物の改装の際に、電気式ヒートポンプやソーラーパネルなど、CO2排出を低減できる設備に置き換える事業を行っています。エネルギー料金の面で利用者にもメリットがあることを生かし、環境に投資する余裕が少ない所得層の消費者にもスマートで健康的な生活環境を提供することを目標にしているようです(2022年1月の同社プレスリリース参照)。

※リサイクル分野で活躍する日本企業である三井化学の技術については以下の記事で解説しています。

三井化学のSDGs戦略 ~化学メーカーの強みを活かした新規事業の創出事例

技術革新とカーボンネガティブ両立に向けたマイクロソフトの今後

ここまで、FY22Q3のマイクロソフトの動向として、ニュアンス買収で取り込んだ音声技術による技術革新の展望と、カーボンネガティブ達成に向けたXbox事業の改善、燃料や建築分野でカーボンネガティブに貢献するスタートアップへの投資について解説しました。

ニュアンス買収の事例からは、自社技術と相性のよい技術を持つ企業を買収し、技術革新の基盤を強化する戦略を取っていることがわかります。Google Patentsでニュアンスの特許を検索すると、音声認識関連の特許を大量に保有しており、特許ポートフォリオ強化の観点でも的を得た買収を進めているようです。アップルのSiriに対抗する打ち手にもなっていると思われます。

また、前回の4半期レポートで、事業拡大によるデータ使用量の増加とカーボンネガティブの両立は難しいことを指摘しましたが、Xboxの取り組みを見ると、マイクロソフトはその課題にも地道に取り組んでいることがわかります。

今後も4半期ごとにマイクロソフトの動向をチェックし、同社の技術進化の流れを読み解きたいと思います。また、弊社の無料メールマガジンでは、コラムでは紹介しきれなかった特許調査の結果なども分かりやすく解説していますので、深掘りしたい方は是非ご活用ください。

 

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
発明塾東京一期生。現在は企業内発明塾™における発明創出支援、教材作成に従事。
個人でも発明を創出し、権利化を行う。

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