テスラの特許と知財戦略を調べてみた

2021.2.24

2003年に電気自動車メーカーのTesla Motors Inc. としてスタートしたテスラ(Tesla, Inc.)は、近年太陽電池などにも事業を拡大し、クリーンテックの先進企業として注目されています。ただ、「そもそもテスラは何を発明した会社なのか?」について私自身は正直よく知りませんでした。

そこで、まずは同社の特許について簡単な調査を行い、特許の内容から同社の動向と戦略を考察することにしました。

調査の流れとして、まずテスラの特許の技術分野について概要を把握し、続いて特許開放の宣言やシャープからの特許訴訟など特許にまつわる同社の動向を調べました。最後に、テスラが権利を取得している技術をいくつか紹介し、同社の開放特許を活用する際に参考になる情報を提示します。

 

テスラの特許の技術的な特徴

特許出願をどの技術分野で行っているのか?

テスラ特許の上位技術分類

テスラが特許出願を行う技術分野のトップ5(Google Patentsより)

Google Patentsの出願人検索で、Tesla, Inc.またはTesla Motors Inc.が出願している特許を検索したところ、ヒット件数は約904件(2021/01/27現在)でした。出願している技術分野について上位のものを見ると、以下の共通特許分類(CPC分類)がトップ5に並んでいました。

Y02E:温室効果ガスの排出削減、エネルギー生成関連
H01L:半導体装置;他に分類されない電気的固体装置(太陽電池パネルなどの半導体技術を含む)
Y02B:建物について天候変更の影響を緩和する技術に関するインデキシング系列,例.住宅および家庭用機器またはそれと関連するエンドユーザーアプリケーション
H02S:赤外線,可視光または紫外光の変換による電力発電
G06F:電気的デジタルデータ処理

技術分野の解析から読み取れる意図

上位の技術分野を見ると、テスラ全体としては「車」に限定せず、太陽電池など「クリーンエネルギー」に関連した技術開発に力を入れていることが分かりました。

技術の内容について少し理解が深まったので、次に戦略的な側面から考察を進めてみます。

 

テスラの特許開放の戦略的意図

開放後も特許取得は続けているのか

テスラは2014年に特許開放を宣言する文書を公開しており、HPには”誠意を持って私たちの技術を使いたいという人たちに対し、テスラが特許訴訟を起こすことはありません”と書かれています。

特許を取得することに対する否定的な内容も記載されていたので、この宣言以降は特許取得を中断しているのか、を確認しました。先ほどの調査でヒットした904件について、出願時期が2015年以降で、特許登録されたものに絞り込んだところ、約187件がヒットしました(2021/01/28現在、Google Patents使用)。

どうやら、宣言以降も特許出願と権利化は継続して進めているようです。

特許を取得する目的は何か

同社のAnnual Reportによると、特許取得の目的については以下のように記載されています。

we place a high priority on obtaining patents to provide the broadest and strongest possible protection to enable our freedom to operate our innovations and designs within our products and technologies in the electric vehicle market

Tesla Updated Annual Report 2019 p14より(太字は引用者による)

 

自分たちのイノベーションを活用する自由を獲得するために、特許取得を重視しているということのようです。テスラがコントロールできる共有の技術プラットフォームをつくることが、特許取得と開放の目的と言えそうです。

一方、テスラが他社の特許侵害により攻撃を受けるケースも生じています。次項では、シャープによる特許訴訟について現状を整理します。

 

シャープによるテスラへの特許侵害差止請求

シャープの2020年3月のニュースリリースによると、シャープは、同社の保有するLTE関連特許をテスラモーターズジャパン合同会社が侵害してると判断し、3件の特許に基づく特許侵害差止請求訴訟の提起を行いました。3件の特許の内容が気になりますが、現時点では特許番号は公開されていないようです。

上記の特許と共通するかは分かりませんが、シャープはドイツのダイムラーに対してもLTE企画関連特許(EP2667676B1)に関する侵害訴訟を起こしています。2020年9月のニュースリリースでは勝訴したこと、2020年10月のニュースリリースではダイムラーと特許ライセンス契約を締結したことが報告されています。

テスラに対する訴訟も、ダイムラーと同様の結果になるのか、別の展開を見せるのか、については今後の動向を見守りたいと思います。

 

テスラの開放特許に含まれる内容

ここまで、テスラの特許の技術的な特徴と特許開放の意図、他社特許による影響について調査を進めました。最後に、テスラの意図に沿って、同社の特許を「共有の技術プラットフォーム」として活用する場合、具体的に選択肢となりそうな技術をピックアップしてみます。

クリーンエネルギー関連の特許

電気自動車に関連したものでは、心臓部と言えるバッテリー関連の技術分野としてY02E60/10(電池を用いるエネルギー貯蔵)に関する特許が約86件登録されています(2021/01/28現在・Google Patentsによるヒット件数)。バッテリーの性能改善に関する技術を持った企業の開発では参考になるかもしれません。

屋根瓦のソーラーパネル化など、Y02E10/50(光起電力エネルギー)に関する特許は約62件登録されています(2021/01/28現在・Google Patentsによるヒット件数)。スマートホームなどの分野で開発に活用できそうです。

自動運転など制御関連の特許

G06F(電気的デジタルデータ処理)に関する特許は約25件登録されており(2021/01/28現在・Google Patentsによるヒット件数)、自動車の制御プログラムに関する技術が中心になっています。例えばUS10606678B2では、自動運転におけるエラー処理に関する技術が記載されています。車載用のセンサー制御技術や、人工知能関連の技術開発に関わる人には参考になるかもしれません。

 

テスラの特許から電気自動車とクリーンエネルギーの未来を考える

以上、テスラについて特許関連の調査を進め、同社が特許開放の宣言後もクリーンエネルギー関連の特許を積極的に取得しており、その技術分野で共有プラットフォームを作ろうとしていることを示しました。

シャープからの特許訴訟のように他社から攻撃を受けるケースもあり、テスラの戦略が成功するかどうかは明確ではありません。ただ、最後に示したように同社が着実に権利化を進めている技術分野もあり、クリーンエネルギーの未来を考える際に同社の特許は参考になりそうです。

出願全体をさらっと確認する程度の調査でしたが、特許を活用した企業分析の参考にもなれば幸いです。弊社動画教材の「投資に活かす」特許の調べ方・読み方セミナーにおいては、より詳細に調査手法を解説しているので、実践したい方は是非ご活用ください。

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
発明塾東京一期生。現在は企業内発明塾™における発明創出支援、教材作成に従事。
個人でも発明を創出し、権利化を行う。

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