東京ビッグサイトで開催中のオートモーティブワールド2024に取材に行ってきました!
X(Twitter)で実況中継した内容を整理してお届けします。
補足情報として、弊社の関連コラムも紹介しますので、理解を深めたい方はぜひご活用ください!
この記事の内容
まずはクルマの内部をつくるパーツやユニット関連の技術から。
Henkelの車載向けソリューションの展示は、クルマに必要な技術を俯瞰する意味でもわかりやすかったです。カメラなどのセンサや半導体チップが多数搭載されていることがわかります。
Henkelさんの車載向けソリューションの展示。クルマに必要な技術を俯瞰する意味でもわかりやすいですね。#オートモーティブワールド #Henkel #インターネプコン pic.twitter.com/ZO1KNr2ANd
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センサ技術による「人とつながるクルマ」のコンセプトデザインを展示していたのが日清紡。顔の動きによる操作などのデモを体験できました。
日清紡さんの人とつながるクルマのコンセプトデザイン。
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顔の動きで操作したり、障害物の有無を可視化するなどの機能を想定しているようです。顔による操作にはToF センサ、障害物検知には超音波センサを活用#日清紡 #オートモーティブワールド pic.twitter.com/zi8bfiRGy6
個別のセンサでは、例えばST-Microの慣性センサにより、GPSが使えない場面でも位置を計算することが可能に。
ST-Microの慣性センサ。相対的な位置の推定に使えるので、GPSが使えない場面でもカーナビが位置を計算できるようです。#オートモーティブワールド #stmicro pic.twitter.com/rltw9Mz4tB
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半導体関連では、インフィニオンがCold Split技術を使って製造したSiCチップ搭載ボードを展示していました。Cold Splitについては、SiCパワー半導体メーカーの比較記事で紹介しています。
Cold Split技術を使って製造したインフィニオンのSiCチップ搭載ボード。
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さらに効率的な製造方法も開発中のようです。#オートモーティブワールド #インフィニオン pic.twitter.com/ZTBqsuZnhF
「ディスプレイのバックライトのエネルギー消費」という課題の解決に取り組んでいたのが凸版印刷。今後は車内に搭載されるディスプレイの数も増えるので、優れた着眼点だと感じました。
凸版印刷さんのディスプレイ。
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バックライトを強くしなくてもディスプレイを見やすくできるようです。
社内の省エネとして重要なポイントを押さえていますね。特にバイクなど、屋外に近い用途で活躍しているとのこと。航空機でも使えそうですね。#凸版印刷 #オートモーティブワールド pic.twitter.com/bFuy88wehr
クルマのハードウェア進化の最先端として注目されているのが、タイヤホイールの内側で独立して駆動するインホイールモーター。e-Gle社、東海理化と名古屋大学の山本真義教授のチームが共同開発しているモーターも展示されていました。
タイヤに直結し、力の伝達の観点で損失の少ないインホイールモーターは、将来普及が進むことが期待されています(Response.jpに掲載された山本教授のインタビュー記事参照)。
e-Gle社が開発するインホイールモーター。第四世代のG4は実用化を進めている。
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第5世代のG5は蒸発式の冷却機構を開発中。東海理化が材料を提供#オートモーティブワールド #東海理化 pic.twitter.com/wZCrqJMyhU
一方、制御やシミュレーションなどソフトウェア関連の技術も展示されていました。海外企業の展示を紹介します。
車載用のデバイスや制御システムを販売するBYDエレクトロニクスは、自動運転のデモ動画を展示していました。BYDの子会社として2002年にスタートした企業ですが、2007年に香港証券取引所で上場しています。現在はBYD以外にも様々な企業と取引があるようです。
ディスプレイ等のデバイスに加え、自動運転による車庫入れのでも動画などが展示されていました。
BYDエレクトロニクスの自動駐車機能。超音波センサ、カメラを利用。#BYD #オートモーティブワールド pic.twitter.com/VYPjqHRmmG
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クルマの設計段階を支援するシミュレーションについて、マイクロソフトと協業するcognataの技術が紹介されていました。Microsoft Azureの圧倒的な計算力を活用できるので、高精度なシミュレーションが可能になりそうです。設計の進め方もどんどん変わっていきますね。
マイクロソフトが協業するcognataのシミュレーションシステム。
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天候や混雑状況だけでなく、農作業シミュレーションなども想定。マイクロソフトAzureの圧倒的な計算力を使えるので、設計段階のシミュレーションの精度もどんどん上がりそう。#マイクロソフト #Cognata #オートモーティブワールド pic.twitter.com/HHVf2jHsCb
マイクロソフトのブースでは、米国で開催された世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2024」で発表した内容も紹介されていました。ソニー・ホンダモビリティもマイクロソフトと連携して「AIを活用する対話型パーソナルエージェント」を開発しているようです。モビリティ分野でも生成AIの活用の場が広がっています。
※マイクロソフトのAI戦略については以下の記事で紹介しています。
【FY23Q2最新】OpenAIを取り込みAI時代を主導するマイクロソフトの戦略 ~GPT-3開発をリードしたAzureの今後
材料メーカーの活躍が目立ったのが、循環型経済(サーキュラーエコノミー)の実現に向けたリサイクル技術や、車体の軽量化技術です。
信越化学はモーター部品となる磁石の製造からリサイクルまで自社の工場で対応。磁石資源化でトヨタとも協業しているようです。
信越化学さんの磁石材料。クルマのモーターに使われ、製造からリサイクルまで取り組んでいるとのこと。#信越化学 #オートモーティブワールド #サーキュラーエコノミー pic.twitter.com/mSSKqrfYAG
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Dowコーニングは、タイヤの内側に使われるリサイクル可能な保護材などを展示。
Dowコーニングさんのリサイクル可能なシリコーン材料。タイヤの内側に使われる保護材で、タイヤの回収後に簡単にはがしてリサイクルできるとのこと。#ダウコーニング #オートモーティブワールド pic.twitter.com/bLw5PlprCl
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植物由来の材料も、内装やバンパーなどでは活用され始めているようです。
東海エレクトロニクスさんの植物由来樹脂。クルマの内装やバンパー等で活用され始めているようです。#東海エレクトロニクス #オートモーティブワールド #サーキュラーエコノミー pic.twitter.com/k7q69axCYk
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軽量化の観点で、金属代替材料の展示も多く出展されていました。住友化学の金属代替材料は、配向性のある繊維と、炭素繊維などを混ぜることで高い耐久性を実現。
住友化学の金属代替材料。
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配向性のある繊維と、炭素繊維などを混ぜることで金属に近い剛性のある樹脂を開発。#住友化学 #オートモーティブワールド #クルマの軽量化 pic.twitter.com/nQZWoSfN4r
積水化学は様々な観点の材料が展示されてました。軽量化技術として、樹脂材料ベースで高い放熱性を実現した筐体の構造が紹介されていました。
積水化学の車載用材料。ミリ波吸収、軽量化、電磁シールドなど様々な観点の材料が展示されてました。樹脂ベースの筐体は、アルミ並みに放熱性で重量45%軽量化とのこと。#積水化学 #オートモーティブワールド pic.twitter.com/sWhED5T0cq
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宇部マテリアルズの軽量化材料は「水よりも軽い軽量性」と「高強度」を両立。繊維状のフィラーを使うことで、比重の大きいフィラーの量を減らして軽量化できるようです。
宇部マテリアルズさんの軽量化材料。繊維状のフィラーを使うことで、水に浮く軽量性と高強度を両立#宇部マテリアルズ #オートモーティブワールド pic.twitter.com/ZdEFIgC8bw
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※以下の記事では、三井化学の植物材料を紹介しています。
横河電機計測のオシロスコープは、「複数個所の同時計測」により開発で生じる問題の原因把握を効率化。
横河計測株式会社のオシロスコープ。EVの開発において、多数のポイントを同時計測し、ピコ秒レベルで分析できるようです。
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トラブルが通信、モーターなどどこで起きているか詳しく分析できるとのこと。#横川計測 #オートモーティブワールド pic.twitter.com/12xfQRRlDl
※#横川計測ではなく、#横河計測でした。誤字、失礼いたしました。
※「ピコ秒レベルで分析」と記載しましたが、正確には「DLMsyncという機能でオシロスコープを2台連結させたときの、Main-Subのデータ取得のタイミングが50ps未満まで合わせこめる」ようです。
車載パーツの3Dプリント化も進んでおり、過去の記事で紹介したように金属3Dプリントは市場が急速に広がっています。三井金属のブースでは、金属だけでなくセラミックの3Dプリントも展示されていました。
三井金属の3Dプリント製品。セラミックの3Dプリントは少し珍しいですね。受託製造のようです。#三井金属 #オートモーティブワールド #3DPrinting pic.twitter.com/vZuHsVDYxa
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同時開催されていたインターネプコン2024では、半導体関連の技術が展示されていました。
JSRが2022年にリリースしたプリント基板向け材料を使った製品は、そろそろ市場に出始めているようです。
JSRさんが2022年にリリースしたプリント基板向け材料。この材料を使った製品もそろそろ世に出始めているようです。#オートモーティブワールド #ネプコンジャパン pic.twitter.com/uAqwM6Tjiv
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意外なところでは、花王が半導体洗浄の材料を展示していました。食品やヘルスケアのイメージが強い企業ですが、界面活性剤の強みを生かして参入されたとのこと。半導体のクリーン度要求も乗り越えた辺り、さすがの技術力ですね。
花王さんの半導体洗浄剤。
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食品やヘルスケアのイメージが強いですが、界面活性剤の強みを生かして参入されたとのこと。半導体のクリーン度要求も乗り越えた辺り、さすがの技術力。#花王 #オートモーティブワールド #インターネプコン pic.twitter.com/h6dx9cMyi5
レポートは以上となります。ブースでご対応頂いた出展者の皆様、ありがとうございました!
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畑田康司
TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
大阪大学大学院工学研究科 招へい教員
半導体装置の設備エンジニアとして台湾駐在、米国企業との共同開発などを経験した後、スタートアップでの事業開発を経て現職。個人発明家として「未解決の社会課題を解決する発明」を創出し、実用化・事業化する活動にも取り組んでおり、企業のアイデアコンテストでの受賞経験あり。
あらゆる業界の企業や新技術を徹底的に掘り下げたレポートの作成に定評があり、「テーマ別 深掘りコラム」と「イノベーション四季報」の執筆を担当。分野を問わずに使える発明塾の手法を駆使し、一例として以下のテーマで複数のレポートを出している。
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