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特許ネタ探し方

特許を取れるネタの探し方 ~先行技術を調べて巨人の肩の上に立つ~

2020.12.23

特許を取るネタ、特に競合他社が思いつかないようなアイデアのヒントになる情報を効率よく取得したい、というのは多くの技術者・新規事業担当者が考えいてることだと思います。

本記事では、特許になるアイデアを出すための基礎になる考え方と、具体的なネタ探しの手法、調べた情報を読み解き、スジの良い特許アイデアにつなげる方法を順に解説します。

 

ネタになる先行技術を見つけると効率よく特許を取れる

そもそも特許になるアイデアがどんな性質を持つかを理解するため、まずは「特許になるかどうかを決めるプロセス」を見直してみましょう。

特許庁が公開している「新規性・進歩性の審査の進め方」によると、判断に当たって「請求項に係る発明の認定と、引用発明の認定とを行い、次いで、両者の対比を行う。」と書かれています。つまり、アイデアが特許になるかどうかを判断するために、そのアイデアに近い先行技術を審査官が選び、比較する作業が行われるということです。

よって、審査官の思考を先読みし、予め「自分のアイデアに近い先行技術の情報」をネタとして入手し、その先を考えれば、効率よく特許が取得できます。

 

元ネタをGoogle検索で見つける ~「テクノロジーx農業」で調べてみる~

とはいえ、いきなり特許を調べるのは多くの人にとってハードルが高いので、最初の一歩となる「元ネタ」はニュース記事など一般情報から見つけても良いでしょう。ここでは例として、「新テクノロジーを使った農業ビジネス」というお題を設定し、調査を進めてみます。

まずは素直に、「テクノロジー 農業」というキーワードでGoogle検索してみると、AIやICTを活用した農業など、色々な情報がヒットします。複数の技術を一覧するため、今回は以下の記事に着目してみます。

【2020年最新版】Agritech(アグリテック)に取り組む企業・事例まとめ | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン

興味深い技術が多数紹介されていますが、今回は「03. ドローンでマングローブを自動植林」で紹介されているスタートアップ “BioCarbon Engineering” に注目します。記事によると、同社はドローンを使って「地形・地質データの収集と、植林に最適な場所の選定」と「種子ポッドを地面に打ち込み、植林する作業」を自動的に行う技術を持っているようです。

技術の概略は分かったので、今度はいよいよこの企業の特許を調べます。

 

特許検索してみよう ~Google Patentsを活用する~

Google Patentsの画面の見方

Google Patentsの画面の見方

 

Google Patentsで注目企業の特許を探す

ここでは特許検索ツールとしてGoogle Patentsを利用します。Google Patents Advanced SearchのAssignee(出願人)欄に、先ほどのBioCarbon Engineeringを入れて検索すると、AU2018226484B2がヒットします。

Worldswide applicatiosのJPをクリックすると日本で出願された特許公報のJP2017530706Aに移動します。

特許から発明の要点と一歩先の打ち手をつかむ

まず、そもそも何を解決する発明なのか理解するため、JP2017530706Aの「発明が取り組む課題」に注目します。この公報では、冒頭部の[0003]に既存の植え付け技術の課題として「起伏の多い地形または到達し難い地形における使用に適切でない」と書かれており、複雑な地形でも効率よく苗木を植え付けるためにドローンを使ったことがわかります。

また、公報の後半では、植林以外の利用方法についても記載されており、例えば[0156]ではドローンを「土壌回復」に利用する方法が記載されています。ドローンが打ち込む植え付けポッドに「栄養素、細菌/菌、および/または虫もしくは虫の卵」などを含ませるアイデアが書かれており、土壌を改良することで樹木の生育に適した土地につくり変える、という展開を考えていることがわかりました。

このように、特許公報の内容を細かく読むと、ニュース記事では得られない、「一歩先の打ち手」も具体的に把握できます。

被引用特許を読んでみる

JP2017530706Aの被引用特許リスト

JP2017530706Aの被引用特許リスト

 

また、ページの ”Cited by" をクリックすると、この発明を引用した特許公報が参照できます。

例えばAU2017314221A1は果物の収穫や間引きに必要な画像データをドローンで取得し、マッピングするシステムについて、AU2018325456A1はドローンに搭載する種子散布用のハードウェアについて記載されています。「ドローンを使った農業・林業」というテーマだけでも、様々なプレーヤーが独自のアイデアを持って参入していることがわかります。

追跡調査で「先読み」の裏を取る

ここまでの結果から、「ドローンを使った農業や林業」というテーマが既に激戦区となりつつあることはわかりましたが、何らかの切り口で「その一手先」を考えれば、「特許の取れるネタ」にたどりつくことは可能です。

例えば「同じ課題をドローンより優れた方法で解決する」、「まだ着目されていないニッチな切り口を攻める(例えば、陸ではなく海に着目するなど)」といった打ち手が考えられます。これから起業する人なら、まずは競争相手が少ない切り口を見つけた方が良いかもしれません。

いずれにしても、あるテーマについて、「いきなり自分の頭だけで考える」のではなく、「誰がどこまで考えているか」を特許から把握して「その先」を考えるというアプローチが有用であることはご理解頂けたと思います。

先人の発明を参照することで「巨人の肩の上に立ち」、効率的に、特許になる発明を出してみてはいかがでしょうか。

追跡調査で「先読み」の裏を取る

「ネタ探し」という話から少し外れますが、BioCarbonEngineeringについて追跡調査を行ったところ、社名をDendra Systemsに変更していました。Dendora社のHPによると、同社はAI・ドローン技術・生態学的な専門性を組み合わせ、”rehabilitate land and restore biodiverse ecosystems” (土地の復旧と生物の多様なエコシステムを復旧する) と書かれており、「植林」だけでなく「生態系の回復」というより大きなテーマに取り組んでいることがわかりました。

先述した「土壌の回復にドローンを使う」といったアイデアも実現に向けて動いており、特許から推定された先の展開の裏が取れました。このように、特許情報にはその企業が考えている「最先端」の手がかりが記載されており、競合の分析や、投資にも活用できます。

 

見つけたネタを元に「その先」を考える

ここまでの調査から、「ドローンを使った農業」というテーマが既に激戦区となりつつあることはわかりましたが、何らかの切り口で「その一手先」を考えれば、「特許の取れるネタ」にたどりつくことは可能です。

例えば「同じ課題をドローンより優れた方法で解決する」、「まだ着目されていないニッチな切り口を攻める(陸ではなく海に着目するなど)」といった打ち手が考えられます。起業や新規事業創出に取り組むのであれば、まずは競争相手が少ない切り口を見つけるのがよいかもしれません。

簡単な例ですが、「誰がどこまで考えているか」を特許から把握して「その先」を考えるというアプローチが有用であることはご理解頂けたと思います。先人の発明を参照し、効率的に特許アイデアを出してみてはいかがでしょうか。

 

他社の死角を突く特許ネタをコンスタントに見つけるスキルを身につけよう

ここまで、特許になるネタの探し方について、基本的な考え方と、元ネタの探し方、Google Patentsを使った特許の調べ方と解釈の仕方、調査結果を踏まえて特許アイデアを練るための考え方を解説しました。誰がどこまで考えているかを丁寧に読み解いた上で、自分なりの切り口を設定できれば、他社の死角を突く特許が効率よく取得できます。

本記事では1つの事例を示しましたが、取り組むテーマによって調べ方も変わるので、調査がただのネットサーフィンにならないためには検索スキルを磨く必要があります。弊社のEラーニング講座「e発明塾講座 特許情報の検索と活用(初級)」では、必要な特許情報を素早く・漏れなく見つけ、読みこなすための手法を学んで頂けるので、使える調査スキルを体系的に身につけたい方にお勧めです。

また、動画セミナー ”「エッジ情報®」探索とその活用” では弊社独自の「エッジ情報探索法」の具体例を幅広く、詳しく解説しています。特許情報・投資情報など複合的な情報を読み解き、新規事業企画に活かせる知見を得るプロセスを知りたい方にはこちらがお勧めです。

まずは無料で雰囲気をつかみたい方には、弊社の無料メール講座で、代表の楠浦が日々実践しているエッジ情報探索の概要も紹介しております。そちらもぜひご活用ください。

 

★本記事と関連した弊社サービス

①無料メールマガジン「e発明塾通信」
材料、医療、エネルギー、保険など幅広い業界の企業が取り組む、スジの良い発明や新規事業をわかりやすく解説しています。
特許アイデアの起点となるネタ探しの情報源としても広くご利用いただいております。
また、本記事のようなコラム記事の更新情報もお届けします。
週2回配信で最新情報をお届けしていますので、ぜひご活用ください。

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
発明塾東京一期生。現在は企業内発明塾™における発明創出支援、教材作成に従事。
個人でも発明を創出し、権利化を行う。

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