本記事では、オープンクローズ戦略について詳しく理解したい方にぜひ読んで頂きたいおすすめの書籍をピックアップしてご紹介します。オープンクローズ戦略を語る上で外せない、第一人者として非常に有名な小川紘一先生の書籍に加え、経営戦略としての知財戦略、スタートアップの知財戦略、という切り口で詳しく解説がされた書籍を内容とポイントとともに解説します。
この記事の内容
「日本の製造業を復活させる”処方箋”を提示すること」を目標に、本書では解決手段としてオープンクローズ戦略が提案されています。オープンクローズ戦略の構築に取り組む上で、まず最初に押さえるべき一冊と言えます。
内容は以下の各項目について具体的な事例とデータを示しつつ、解説されています。
例えば携帯電話については、1990年代~2000年代にかけて市場を支配したノキアなど欧州企業の戦略に加え、第三世代の通信規格を独占したクアルコム、iPhoneでスマートフォン市場を切り開いたアップルの戦略についても解説されています。
こちらの「増補改訂版」では、IoT、 AI、ビッグデータなど昨今注目を集めている第4次産業革命への時代の変化を踏まえた考察が追加されています。ビジネスの新しい潮流の背景を読み解き、事業戦略を構築したい方にとても参考になる一冊です。
同じく小川氏の著書で、前記の書籍の原点となる調査結果がまとめられています。本書の「まえがき」には以下のように「オープンクローズ戦略」という言葉は使われていないものの、ベースとなる考え方である普及と独占という点では共通しています。
国際標準化とは多くの人々が広く利用できることを目的にした普及のアクセルである。一方、知的財産とは使わせることを制限するブレーキである。このアクセルとブレーキを巧みに組み合わせながら大量普及と高収益の同時実現を狙う仕組み作りが標準化ビジネスモデルである。
また、製品ごとの設計思想(アーキテクチャ)を読み解き、製品の設計が企業戦略とどのように結びついているかという点を具体的に解説しているのが本書の大きな特徴です。
例えば第5章では、1980年代にパソコン市場を支配したIBMが1990年代には勝てなくなり、インテルに主導権が移る経緯を、パソコンの内部構造の変遷という切り口から読み解き、詳細に解説しています。パソコン以外にも、通信システム、携帯電話、ソーラーパネルなど幅広い製品について、アーキテクチャを踏まえて解説されています。
「勝てる戦略を立て、それに合致した製品を開発する」という、ものづくり企業の共通テーマに各企業がどのように取り組み、何が勝敗を分けたかを具体的な事例から学べる良書です。技術進化の歴史に学び、行き当たりばったりの開発から脱却したい経営者・開発者の方にお勧めの一冊です。
「ビジネスパーソンのための知財戦略読本」として、知財とビジネスがどう繋がるかを複数の観点から掘り下げた書籍です。弁護士・弁理士として活躍されている鮫島氏と、知財会計コンサルタントの小林氏の共著で、法律的な話に偏らず、経営戦略の視点を踏まえた知財戦略について解説されています。
オープンクローズ戦略については第2章で解説されており、「オープン」と「クローズ」をそれぞれ「技術や特許を他社に実施許諾して広く開放すること」、「技術や特許を開放せずに他社に実施させないこと」という意味合いで解説しています。
特に「特許のオープン化」について詳しく書かれており、トヨタの特許開放やIBMを中心としたエコ・パテントコモンズなどの裏にある意図を解説しています。
また、以降の章では知財の取引や訴訟に関する動向と戦略、M&Aと知財戦略の関わり等について解説しています。例えば、グーグルによるモトローラ・モビリティの買収の意図として、特許侵害による訴訟リスクの回避があったことなど、企業の動向と知財戦略がどのように結びつくかという点について事例を通して理解することができます。
他にも、特許の取得や管理に要するコストとリターンの試算、グローバル特許の取得・管理に必要な考え方も解説されています。例えば日亜化学工業・豊田合成の青色LED関連特許に関する事例では、必須特許の保有が大きなリターンを生む原理が理解できます。
全体を通じ、「知財がもつ経営上の価値」を客観的に判断するための考え方が具体的に示されており、より精度の高い知財戦略を構築するための手引きとなる書籍です。
スタートアップのCEOや知財法務担当の方に向け、スタートアップの特性を踏まえて知財を解説する実務書として書かれた書籍です。法律になじみのない方にも読みやすいよう、基礎的な内容が丁寧に解説されています。
オープンクローズ戦略については、第8章で紹介されており、基本的な考え方と、スタートアップがどのように戦略を取り入れるべきかが解説されています。事例として、グーグル、アップルに加えてコンテンツ系事業の例として初音ミクが取り上げられており、それぞれのオープン領域、クローズ領域の概要が理解できます。
また、素材メーカーのSpiberによる人工クモ糸の標準化戦略、ユーグレナによる藻類の製法の秘匿化と用途の権利化を組み合わせた戦略など、日本のベンチャー企業による知財戦略も紹介されています。いずれも、オープンクローズ戦略の考え方を取り入れた戦略として参考になります。
全体的に平易な文章で書かれていますが、スタートアップのフェーズごとの知財戦略、業界別の知財戦略、契約や訴訟の基礎など、知財担当者が実務で直面する様々な場面で必要となる知識が網羅されています。スタートアップに限らず、起業や新規事業立上げなどで知財・法務の実用的な知識が必要となった方にお勧めの一冊です。
今回ご紹介した書籍は、いずれもオープンクローズ戦略について理解する際に非常に心強い書籍です。
弊社でも、過去にオープンクローズ戦略について独自調査と検証を行っており、特にインテルとクアルコムの歴史的な経緯も含めた詳細な情報を、資料ダウンロードページにて、ケーススタディーとして無料公開しております。
現在出版されている書籍にはない情報も多く、大変ご好評いただいております。知財戦略の立案に向けて、より具体的な資料が必要な方はぜひご参照下さい。
また、ケーススタディについてお問い合わせいただくことも多いため、弊社ではこれまで多くの企業にて社内セミナーという形で開催しておりますが、なかなか社内の関係者間の調整がつかない方に向けて、いつでもどこでも受講できる動画セミナーもご用意しております。こちらもぜひご活用ください。
また、オープンクローズ戦略の実施に向けたコンサルティングサービスをご検討中の方には 実働支援サービス企業内発明塾をご案内しております。毎月説明会を開催しておりますので、ぜひ一度ご参加ください。
★本記事と関連した弊社サービス
★書籍出版のお知らせ
弊社初となる書籍『新規事業を量産する知財戦略』を出版しました!新規事業や知財戦略の考え方と、実際に特許になる発明がどう生まれるかを詳しく解説しています。
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