白熱電球の発明者として有名なトーマス・エジソン(米、1847-1931)。電球のイラストやマークは、アイデアのひらめきを意味するものとして、今や世界共通のシンボルとなっていますよね。弊社も「e発明塾」のロゴにeの文字と電球を組み合わせたものを使用しています。
この発明、詳細を言うと、白熱電球を発明したのって実はエジソンではなく、ジョセフ・スワン(英、1828-1924)という人です。エジソンより1年前に発明に成功していたんです。
白熱電球というのは、ガラスのバルブの中に光を放つフィラメントが入っているというもの。白熱電球自体は、当時いろいろな人が研究していましたが、スワンは炭素化した紙のフィラメントを発明して点灯に成功し、その時の点灯時間は約40時間ぐらいだったそうです。
そこでエジソンは、点灯時間をもっと延ばすためにさまざまな素材のフィラメントを実験し、最終的に竹を炭素化したフィラメントを発明しました。そのフィラメントによって電球の点灯時間は最終的に約1000時間にもなったといいます。ちなみに竹は日本の京都にある八幡真竹を使用したんですよね。
ここまで読むと分かると思いますが、エジソンがやったことというのは「技術的なイノベーション」です。めちゃくちゃ点灯時間を延ばした、そして長時間の点灯に成功することで実用性を高めた。彼のすごいところの一つです。
そして、もう一つエジソンのもっとすごいところがあるのですが、ここが実はあまり知られていません。
エジソンは「電気を売る」ということを描いていた人で、そこが彼の本丸でした。だから、おそらく白熱電球は彼の電力ビジネスの末端の用途として、電気を売るために一番インパクトを与えるのは照明だろう、という仮説が彼の頭の中にはあったと思うんです。逆に言うと、そのようなビジネスモデルをしっかり考えた上で、どの発明をしてその権利を取得するとどうなるか、何ができるか、というのをよく考えて発明したということです。
エジソンが出願した特許は、大半が発電機か電流計です。今日で言う電力計ですね。要するに、白熱電球を発明して広めればいい、配ればいい、という考えではなくて、最終的には電気を売りたいわけだから、何ワット電気を使用したかが測定できないとビジネスにならない、そのために電力計に関する特許をその後たくさん取得したというわけです。
ビジネスとして成功させるためには、どういう技術発明が必要で、そこをどうするか、どう特許で取っていくか、というプロセスを描いていくのは王道です。技術開発って、やっぱりこのように考えてやっていかないとモノにならないということを、特に技術者のみなさんは念頭に入れておいてほしいと思います。
エジソンの電球発明のウラにあるこの話は、小さな子供には夢がなくなってしまうので、あまり教えられないかもしれませんね(笑)。
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語り:楠浦崇央(弊社代表)
構成:鈴木素子
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