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新規事業のための情報分析に必要な視点 〜ドラッグストアから遠隔医療までの繋がりを見る~

新規事業に必要なエッジ情報®探しや、情報分析をしていく際、いくつかの大事な視点があります。それによって見るべき企業や、企業の見方、調べる情報の分野も変わってきます。今回はそのポイントをお話します。

 

成長企業の成長パターンを見抜く

僕は現在神奈川県民なのですが、神奈川県でどこか面白い会社ないかなと思って、4年ぐらいに前にクリエイトSDというドラッグストアに注目して調べてみたことがあります。そうしたらたまたまですが、とても興味深い企業でした。
クリエイトSDは神奈川県に集中して調査当時で250店舗ほど出店している、エリア独占の戦略を行ってドラッグストアにしては高い利益を叩き出している企業です。

店舗販売企業に関わらず、企業の成長はだいたいこのパターンが多いんです。薄くまんべんなくやっていても、競合との競争ばかりで儲からないので、どこかで独占して圧倒的な収益上げて、その資金を次のところに投じて次の領域を独占していく。
錬金術じゃないですけど、そうやってお金を回していくものなので、企業を分析する際には、どこを独占して儲けようとしているのかを最初から見ないといけないんですね。

彼らは薬で儲けるドラッグストアと言っています。よく考えたらドラッグストアなんだから当たり前なんですが、実は、もともとは薬以外で儲けるビジネスモデルだったのを、薬で儲ける戦略に転換したんです。
どういうことかと言うと、訪問服薬指導に注目したんですね。これは、処方箋に基づいて薬を自宅まで届けてあげて、飲むところまで指導しましょうというものです。保険点数が上がったので、彼らはシフトしたんです。

このビジネスモデルにすると、エリアを独占しているから薬剤師もある程度人数が確保されているのでやりやすい。もちろん、保険点数制度が変更されたということも、この成長企業が勝ち組になれた理由ですね。

 

外国人投資比率が高いというのも注目

ちなみにクリエイトSDはエリアドラッグストアの中で唯一、外国人投資比率がすごく高い会社です。
海外の投資家から評価されているというのも、分析する企業であるというポイントでしょう。やはり海外からも注目されるような斬新さや、熱量の高い新しい取り組みをしている企業、安定的に収益が出せる構造を取っている企業は、深掘りしていくとビジネスモデルや目の付け所に面白い点が出てきます。

偏見にならないように付け加えておくと、外国人投資家が多いところがいい、ということではなく、「なぜ外国人投資家がわざわざ大挙して投資するのか」を考えてみましょう、ということです。

この企業って伸びてるよね、この企業面白いよね、特徴あるよね、なんでそんなことしてるんやろ、どこで儲けてんのかな、どこを独占してるのかな、その背景にどんなことあるのかなっていうように、一つの情報から大きな流れを見ていく。そして他の業界はどうなっているのか、隣の業界はどうなっているのかを見ていって、じゃあ自分たちはどうするかとアイデアを出してみるんです。

 

寡占企業が次に向かっている分野を見る

薬の販売方法ってさまざまで、日本のドラッグストアで言えば、一般薬を安く売りますとか、クリエイトSDのように薬を届けて売りますとか、いろんなやり方がありますよね。

アメリカでは、新薬の分野でも薬のディスカウンターがあって、医薬品のメーカーと交渉をして、「うちはこれくらい加入者がいて、がんのこの薬では年間これくらいは売れるから、価格を半分にしてくれ」といった交渉をする薬剤給付管理(PBM:Pharmacy Benefit Manager)という業態があります。薬局チェーンが経営していたり、保険会社が経営していたりするのですが、上位3社でシェア7割という寡占市場なんですね。

この人たちは次のフェーズとして、遠隔医療に参入しようとしています。薬をディスカウントするだけでなく、それで儲かったお金で遠隔医療もやる。共通点は「医療の効率化」ですね。このように分析すると、彼らの動きは「医療の効率化」がドライビングフォースになっているんだなと見えてきます。

実は僕は以前から、PBM寡占やし、めっちゃ儲かってるよね、次彼らはどこに張るんかな、と注視していました。そうしたらある企業は、「ドクターオンデマンド」という遠隔医療の企業を買収したりしていたんです。
確かに患者の医療に関する負担を減らしていくって意味では、方向性としては正しいなと思います。逆に言えば、遠隔医療にはPBMのような企業がお金を落としているんだなって、お金の流れが見えてくる。
だから、以前僕に「遠隔医療ってなかなか進まないよね」と言っていた人がいるのですが、その時もこんなふうにパトロンがいてお金をジャブジャブ供給してくれたら進むだろう、と僕は考えていました。

 

お金と技術がちょうど重なるホットスポットはどこか

僕は前職の時に、技術だけあってもお金が付かないと何もできないことと、逆に技術がないところにお金が付くと、そのお金を無駄に使うほどのバブルが起きることの、両方を経験しました。なので、お金と技術がちょうど重なるホットスポットはどこかを見抜いていって、その先それがどうなるのか、どうして重なってるのか、その社会的背景や法規制はどうか、そういうことをある種「逆向き」に紐解いていくほうが結論として早いということが分かってきています。

よく「社会背景」「法規制」などからネタを探す人がいますが、そういう「トップダウン」のやり方で調べていると、キリがないんです。世の中いろんなイベントが次から次へと起きますから。なので、逆から読んでいく。ミクロな事象からマクロを把握して、あーそういうトレンドがあるから、今ここでこういう「戦争」が起きてるのか、そんな感じです。

例えば、中国とアメリカは今後も覇権争いをするはずだ、では次に何が起きるだろうか、ってやっててもキリがない。解像度が低すぎて、何も思いつかない(笑)。それよりも、今まさに尖閣諸島がこうなってるから、これは海洋資源の取り合いなのかな、だったら近くでほかにこういうことが起きるかも、起きてないとしたらなんでなのかな、みたいな考え方のほうが、現在を現実的かつ解像度高く理解した上で、将来を推測できるんじゃないかな、ということです。別に、この例えに他意はありません。

実際、遠隔医療は特に精神疾患の分野でかなり注目されていることが、その後いろいろ調べて分かってきました。薬と医療機器の融合。例えばデジタルメディスンと言って、薬を飲んだかどうかをセンシングできるように極小チップを薬の中に埋めている、エビリファイという薬などがすでに存在しています。

 

複数の繋がりがある情報をさらに繋げていくことでストーリーが見えてきます。その時に自分たちはならどうするか、どこにチャンスを見いだすのか新規事業が見えてくると思いますので、情報分析にはぜひこのような視点で見ていっていただければと思います。

語り:楠浦崇央(弊社代表)
構成:鈴木素子

 

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