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ダノンのSDGs戦略

【徹底解説】ダノンのSDGs達成に向けた経営戦略 ~環境再生型農業への転換と、特許から読み解くイノベーション事例の紹介

食品分野のリーディングカンパニーとして知られているダノン(Danone SA)は、2017年に「One Planet. One Health」(一人ひとりの健康と地球の健康は相互につながっているという考え)を新たなビジョンを発表しており、持続可能な開発目標(SDGs)の目標達成に向けた取り組みも積極的に行っています。

本記事では、ダノンのSDGs達成に向けた取り組みと具体的なイノベーションの事例を紹介します。

まず、ダノンの事業カテゴリーと関連するSDGs目標について簡単に紹介した後、環境再生型農業(Regenerative Agriculture)関連の取り組みを紹介します。次に、特許情報の分析結果から、発酵技術や患者向けの栄養食品関連のイノベーションを解説します。

食品・栄養関連の新規事業創出や起業を目指す方はぜひご一読ください。

<参考:Danone SA基本情報>
ティッカーシンボル:BN
創立年:1919年
ウェブサイト:https://www.danone.com/

 

ダノンのビジネスモデルとSDGs戦略 ~環境再生型農業への転換がキーポイント

ダノンの事業カテゴリーと関連するSDGs目標

ダノンの事業カテゴリーと関連するSDGs目標

ダノンの事業カテゴリーとSDGs目標

ダノンの事業は主に図に示した3カテゴリーで構成されています。各カテゴリーについて、SDGsとも絡め、以下に簡単に整理します。

①乳製品・植物由来製品

  • ヨーグルトなどの乳製品や、アーモンドや大豆を原料とする植物ミルク(代替乳製品)などの製品が含まれる
  • 生鮮乳製品(fresh dairy products)と植物ベースの食品・飲料市場ではシェア世界No.1
  • 酪農はメタンなど温室効果ガスの排出が問題になるため、植物由来製品へのシフトと、後述する「環境再生型農業」への転換を進めている

②専門栄養食

  • 乳幼児向けの粉ミルクや、疾患のある成人向けのサプリメントなどの製品が含まれる
  • 乳幼児向け食品(early life nutrition)市場ではネスレに次ぐ世界シェアNo.2
  • 研究分野は糖尿病、アレルギー、アルツハイマーなど多岐に渡っており、「人々の健康を守る」というミッションに幅広くコミットしている

③水

  • Evian(2001年に買収)などのミネラルウォーターを中心とする飲料品が含まれる
  • パッケージ化された水(packaged water)市場ではネスレに次ぐ世界シェアNo.2
  • サステナビリティ関連の取り組みとして、容器のリサイクルの他に、水源や湿地の保全なども進めている

いずれの事業も「食」と「健康」に関連していますが、持続可能なサプライチェーンを構築するには、原料の生産段階から見直すことが重要です。次項では、SDGsに関連したダノンの取り組みの代表例として、「環境再生型農業」を取り上げます。

 

環境再生型農業(Regenerative Agriculture)への転換

環境再生型農業(Regenerative Agriculture)とは、農業の回復力を強化する一連のアクションを組み合わせた農業であり、ダノンは2017年から環境再生型農業への転換を重視する方針を打ち出しています。同社が2021年に発表した資料によると、具体的なアクションとして「土壌、水、生物多様性の保護」「動物福祉」「農業従事者への支援」が含まれています。

特に重視しているのが土壌の改善で、炭素含有量の豊富な土壌をつくることが脱炭素化に直結します。2021年のAnnual Report(p165)によると、同社の契約農家の19.7%が環境再生型農業に転換し、CO2排出量は2015年との比較で27.1%削減(Scope1~3のトータル)に成功しています。

※バイオ技術で農業の脱炭素化に取り組むスタートアップのJoyn Bioについては、以下の記事で取り上げています。

Ginkgo Bioworksの技術と経営戦略【徹底図解】~ワクチンから農業まで革新するDNA・細胞編集プラットフォーム

競合ネスレと同水準の利益率

ちなみに、前記の商品ラインナップはネスレとも類似しており、実際にダノンのAnnual Report(p20)を見ると、全カテゴリーで競合企業としてネスレの名前が挙げられています。総売上額では、ネスレがダノンの3倍以上の規模を持っていますが、前記の通り、ダノンは自社の事業カテゴリーでは世界トップレベルのシェアを持っています。

また、2021年の粗利益率でも、ネスレの48.0%に対し、ダノンは47.4%と同水準であり、両社とも食品企業としては高い利益率のビジネスモデルを構築できていることがわかります。

※世界最大の食品会社であるネスレの戦略については以下の記事で解説しています。

【詳説】SDGs達成に向けたネスレのイノベーション戦略 ~ヘルスケア、リサイクル、酪農関連の事例を紹介

SDGs達成に向けたダノンのイノベーション事例を特許から読み解く

ダノンの事業カテゴリーごとの特許技術の例

 

SDGsに関連したダノンのイノベーションについて、特許状分析を元に掘り下げました。以下、事業カテゴリーごとに事例を紹介します。

①乳製品・植物ベース製品カテゴリー ~発酵食品や代替乳製品で健康をサポート

この分野におけるダノンの強みは微生物を使った発酵技術で、例えばJP2022505217A「炭水化物が低減された水切り酸性乳製品」のように、炭水化物の少ないヨーグルトやチーズなどの発酵乳製品をつくる技術が出願されています。食事制限のある人でも食べられる、低糖で高タンパクな食品をつくることが目的のようです。

ダノンは乳酸菌や酵母などの微生物を使った技術で長年の蓄積があり、同社は2019年5月のプレスリリースで1800菌株のコレクション公開を発表しています。オープンイノベーションでさらに開発を加速させる狙いがあるようで、開発ターゲットとして食品開発だけでなく、土壌の保護・再生など前記の環境再生型農業に関連するテーマも記載されています。

一方、植物由来製品として、例えばUS20220192238A1 ”Plant-based dairy whipping cream alternative and method to prepare the same” のように、大豆など植物ベースのホイップクリーム代替物(alternative) に関する技術も出願されています。これまでの植物ベースホイップクリームに比べ、泡立ち性などの改善に成功しているようです。

※代替タンパク質関連のイノベーションについては、以下の記事で詳しく解説しています。

【図説】代替タンパク質の最前線 ~市場拡大を牽引する企業・スタートアップと、代替肉・培養肉のイノベーション事例を紹介

②専門栄養食カテゴリー ~粉ミルクから認知症予防まで幅広くカバー

この分野では、ダノンは乳幼児向けの粉ミルクに関する技術を継続的に開発しており、例えばJP4740866B2「乳児向けシンバイオティック組成物」のように、幼児の腸内細菌のバランスを整える効果のある組成物の製剤技術が特許出願されています。

また、最近は植物由来の原料を利用した粉ミルクの開発に積極的に取り組んでおり、2022年7月のプレスリリースによると、同社は大豆由来のタンパク質などを原料とするベジタリアン向けの粉ミルクを発売しています。

成人向けでは、JP2008506771A「血糖値を調節するためのアスパルテートを使用するための調製物」のように糖尿病予防などをターゲットとした組成物や、JP2017061466A「組成物および栄養組成物」のようにアルツハイマー病予防に関連した組成物など、特定の疾患に対応した栄養成分に関する特許を幅広く出願しています。

ダノンの子会社であるNutriciaの商品ページを見ると、上記以外にも幅広い疾患に対する治療・予防効果のある製品が飲料やサプリメントとして販売されており、高付加価値の商品ラインナップを揃えていることがわかります。

③水カテゴリー ~リサイクルしやすいペットボトルやウォーターサーバーの開発

この分野では、Evianなど飲用水のペットボトルに関連した技術が多く出願されています。例えば US9695276B2 ”Method for producing a bio-pet polymer” は、植物廃棄物などの生体材料から得られるペットボトルの製造方法に関する出願です。

また、Evianの開発チームは家庭用ウォーターサーバーの(re)newなどの新製品もリリースしており、関連特許としてJP2022531036A「液体ディスペンサ」などが出願されています。サーバーのタンクは潰してリサイクルしやすいように工夫して設計されており、ペットボトルの開発で培ったノウハウが生かされていることがわかります。

 

持続可能で健康改善に貢献する食品企業を目指すダノンの今後

ここまで、ダノンの主要な3カテゴリーの内容と関連するSDGs目標、SDGs達成に向けた環境再生型農業の取り組みと、各カテゴリーの具体的なイノベーション事例を順に解説しました。

持続可能で人々を健康にする食品事業の実現に向けたダノンの取り組みについて、マクロ・ミクロの両方の視点から理解が深まったのではないかと思います。

ただ、環境再生型農業に重点を置く方針など紹介した取り組みの多くは、2021年3月に解任された前CEOのエマニュエル・ファベール氏が打ち出したもので、今後これらの取り組みが継続されるかどうかについては注視してゆく必要があります。

競合であるネスレとともに、食品業界のイノベーションの最前線を進む企業として、今後もダノンの動向に注目していきたいと思います。

なお、弊社の無料メールマガジンでは、他社の技術との比較解析など、本稿よりも一歩踏み込んだ内容を紹介します。

また、特許情報分析で気づいたダノンの出願のクセや、投資先を網羅的に解析して見えてきた傾向など、本記事では盛り込み切れなかった調査内容が多数あります。改めて整理してから、2022年秋に出版予定の「イノベーション四季報™」にてご紹介しますので、お楽しみに。

 

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
工場設備エンジニア、スタートアップでの事業開発を経て現職。現在は企業内発明塾®における発明創出支援、教材作成に従事。個人でも発明を創出し、権利化を行う。発明塾東京一期生。

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