3Mの技術マーケティング戦略成功事例

技術マーケティング戦略の成功事例 ~3Mのイノベーションを支える仕組み

3M Company(以下、3M)はエレクトロニクス、ヘルスケアなど様々な分野でイノベーションを起こし続けてきた企業として知られています。イノベーションに関する仕組みとして後述する15%カルチャーなどが有名ですが、新たに生み出された技術をどう売るか、という技術マーケティングの進め方はあまり知られていません。

そこで本記事では、3Mの技術マーケティング戦略に注目し、同社がどのように自社技術と顧客ニーズを結びつけ、製品化を進めているかを解説します。

 

3Mの技術マーケティング戦略の基本

狭い領域で高付加価値の製品を生み出すニッチ戦略

3Mの商品として、一般的にはポストイットなどの事務用品が有名ですが、2020年の3MのAnnual Reportを見るとConsumer向けの売り上げは全体の17%に過ぎず、同社のメイン市場はエレクトロニクスやヘルスケアなどBtoBの領域で、専門知識をもつユーザーのニーズに応えることが同社のマーケティング戦略の基本になります。

3Mはそのような狭い領域で高付加価値の製品を生み出すことで成長してきた会社であり、例えば1920年代にヒットした耐水性研磨剤は自動車業界向けに開発されました。当時、自動車製造における研磨工程の摩擦熱が問題となっていましたが、3Mの研磨剤は水や油で放熱しながら研磨を行うことができ、高い付加価値を生み出しました。

リードユーザーを活かした開発と商品化

上記のように、3Mの商品は専門性の高いユーザーのニーズにこたえるものが多く、ユーザーからの学びを活かすことが重要になります。特に、平均的なユーザーよりも技術的に困難な課題に取り組むユーザーはリードユーザーと呼ばれ、リードユーザーから得られた知見が開発に活かされることが多くあります。

例えば、『ケーススタディ 住友スリーエム (日経bizTech BOOKS)』によると、車の窓枠に使うブラックアウトフィルムの開発は、塗装工程の削減を検討していたホンダからの要望に応える形で進みました。ホンダ車への採用後も、作業効率化などの要望に対応しながら開発が進められ、気泡抜き溝の形成技術など3Mの強みとなる技術の開発にもつながりました。

まとめると、ニッチ領域で先進的なユーザーの要望に応える高付加価値の製品を創出し、その過程で得られた技術を強みとして蓄積する、というのが3Mの技術マーケティングの基本戦略と言えます。

 

独自技術の創出と顧客ニーズとの結合を支援する15%カルチャー

15%カルチャーによる独自性の高い技術の創出

前記のように、ユーザーの要望に応える製品開発は顧客ニーズと直結するため、商品化されやすい一方で、独自性を出しにくく、追従されやすいという課題もあります。

3Mの15%カルチャーはその課題の解決につながる仕組みで、3Mの技術者は業務時間の15%程度を自分が興味を持つ分野の研究などに使うことができます。個人の好奇心にもとづくアイデアを育てることになるので、独自性の高い技術の創出につながります。

世界各地の幅広いネットワークを利用して顧客ニーズを探り当てる

一方、独自性の高い技術は顧客ニーズと結びつけるのが難しい、というマーケティング上の課題があります。しかし3Mには、事業部を超えて助け合えるネットワークがあり、世界各地のメンバーから顧客ニーズに関する情報を得ることが可能です。

例えば、先述の『ケーススタディ 住友スリーエム 』の中で、3Mコーポレート・サイエンティスト(当時)のアンドリュー・アウダーカーク氏は、15%カルチャーの別の側面を以下のように説明しています。

じつはそちらの方が重要なのですが、それは十五%の時間を使って他の人の手助けをすることが許されている、ということです。これはとても重要なことで、これこそ3Mの国際的なネットワークの存続を可能にしている。

ケーススタディ 住友スリーエム (日経bizTech BOOKS)』p99-100より

つまり、15%カルチャーは技術の創出だけでなく、それを助ける活動にも利用されており、独自性の高い技術を世に出すための環境構築につながっているようです。

 

マーケティングに成功した技術のプラットフォーム化と活用の仕組み

テクノロジープラットフォームの構築

ここまで解説したニッチ戦略や15%カルチャーなどを通して生まれた技術は、3Mのテクノロジープラットフォームとして体系化されています。2020年の3Mジャパンのレポートによると、2019年時点で同社は51のテクノロジープラットフォームを持っており、1つの中核的なテクノロジーから生み出される商品の数は1000を超えると言われています。

つまり、単なる要素技術の集積ではなく、マーケティング活動を経て量産化・商品化に成功した実績のある技術がプラットフォーム化されており、それらを活用することで質の高い技術を効率よく生み出すことができます。例えば、液晶用光学フィルムのBEF (Brightness Enhancement Film) は3Mの高精細表面技術とフィルム技術のプラットフォームを組み合わせて開発されており、画面の正面輝度を大幅に向上することに成功しています。

テクニカルフォーラムによる新結合の促進

また、3Mでは専門家同士を交流させる仕組みとしてテクニカルフォーラムと呼ばれる非公式の活動が1951年から行われており、『100年成長企業のマネジメント 3Mに学ぶ戦略駆動力の経営(日本経済新聞出版)』でその内容が解説されています。

テクニカルフォーラムは3Mの学会のようなもので、専門性の異なる技術者が交流するため、テクニカルプラットフォームの結びつきにつながる情報とアイデアの交換が行われます。また、技術者と顧客が交流できる発表会なども行われており、商品化の起点になる顧客との情報交換にもつながっています。

以上のように、3Mは単に技術を蓄積するだけでなく、技術の結合や商品化が起こる仕組みをつくり、多数の新技術が世に出やすい環境を構築しています。

 

3Mに学び、自社の技術マーケティング戦略を強化しよう

ここまで、技術マーケティングに関連した3Mの戦略として、ニッチ市場でリードユーザーとのコミュニケーションを通じて高付加価値の商品を生み出す基本戦略と、独自性の高い技術の創出と顧客ニーズとの結合を支援する15%カルチャー、生み出した技術をテクノロジープラットフォームとして蓄積し、活用する仕組みを紹介しました。

3Mのように大規模な技術プラットフォームを構築することは容易ではありませんが、ニッチ市場で高付加価値の商品を生み出しながら技術を蓄積すること、アイデアが生まれやすく・世に出るまで育てやすい環境をつくることなど、基本戦略は参考になります。自社のもつ技術を見直し、新たな技術マーケティング戦略を立てる際に、本記事が参考になれば幸いです。

本記事では技術マーケティングの視点で3Mの戦略を紹介しましたが、3Mは特許戦略にも力を入れていることで有名です。弊社では、3Mの特許網を分析し、それを突破する発明を生み出すことに取り組んだ実績があり、その様子は動画セミナー「障害特許網の突破事例紹介」にて紹介しています。

また、実働支援サービスの企業内発明塾では、自社の強みとなる技術プラットフォーム構築に向け、技術の用途開発と特許創出を支援した実績もあります。各サービスの詳細は、資料ダウンロードページにてサービス資料の無料提供を行っておりますので、そちらをご参照ください。

 

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
発明塾東京一期生。現在は企業内発明塾™における発明創出支援、教材作成に従事。
個人でも発明を創出し、権利化を行う。

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