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ソフトロボティクスとは?

【図解】ソフトロボティクスとは? ~ブリヂストン・インテュイティブサージカルなど市場を拓く企業の事例を紹介

ソフトロボティクスは、ゴムやシリコーンなど柔軟性や伸縮性のある材料を利用したロボット技術です。特に医療や食品などの分野で活用が進んでおり、市場も拡大しています。

本記事では、ソフトロボティクスの概要と、市場拡大における課題、ブリヂストンやインテュイティブサージカルなどソフトロボティクスの実用化をリードする企業の事例を紹介します。金属材料が中心だったロボティクスの新たな展開としてご一読下さい。

ソフトロボティクスの原理と市場拡大における課題

ソフトロボティクスに使われる技術と主な用途

ソフトロボティクスに使われる機構の例(例①はJiaoら, 2022、例②はGifariら, 2019 の図に追記して作成)

ソフトロボティクスに使われる機構の例(例①はJiaoら, 2022、例②はGifariら, 2019 の図に追記して作成)


ソフトロボティクスとは、
ゴムやシリコーンなど柔らかい材料の「伸縮性」や「柔軟性」を利用してロボットのパーツを動かすロボット技術です。上図のように、空気の圧力や、内側に配置されたワイヤーを使って動作を制御します。他にも、熱や電圧、磁気を利用した仕組みが知られています。

金属のロボットと違って表面が柔らかく、接触する対象を傷付けにくいメリットがあるので、以下のように様々な用途で実用化が進んでいます。

  • 手術ロボットなど、傷つきやすい人体に処置を行う医療用ロボット
  • やわらかい食品を搬送する食品製造用ロボット
  • 表面を傷つけずに果実を収穫する農業用ロボット

ソフトロボティクス市場の拡大と現状の課題

上記のようなメリットがあるため、ソフトロボティクスの市場は急速に成長しています。2023年10月のMarket research Futureのレポートによると、ソフトロボティクスの市場規模は2022年の約3.3億ドルから、2032年には10倍以上の約38.9億ドルに成長することが予想されています。

一方、ソフトロボティクスの課題として、例えば以下が知られています。

  • 動きにブレがあるので、ロボット動作の精度が低い
  • ロボットの動きをシミュレーションするのが難しく、設計の難易度が高い
  • 医療用のロボットは安全性の基準が厳しく、開発のハードルが高い

様々な課題がありますが、最近は技術が進化し、実用化に成功する企業が多数現れています。次項では、ソフトロボティクスの開発をリードする企業の事例を紹介します。

ソフトロボティクスを実用化する企業の事例 ~ブリヂストン、インテュイティブサージカル

ソフトロボティクスの新規事業を立ち上げるブリヂストン

ブリヂストンのソフトロボットに使われる制御の概要(同社の特許出願 WO2023119808A1 の図に追記して作成)

ブリヂストンのソフトロボットに使われる制御の概要(同社の特許出願 WO2023119808A1 の図に追記して作成)


タイヤメーカーのブリヂストンは、2023年1月に「ソフトロボティクス ベンチャーズ」という社内ベンチャーを設立しています。また、2023年2月にはAI画像認識ソフトウェアを開発する「アセントロボティクス」との資本業務提携を発表しており、ロボット開発を加速しています(
2023年2月のCar Watchの記事参照)。

ブリヂストンは関連特許の出願を2019年頃から開始しており、例えば2021年に出願された WO2023119808A1「把持装置」では、上図のように対象物をすくい取る機構が記載されています。先端に容器となる構造をつけることで定量性を担保し、精度の課題を解決しています。計量スプーンを使って一定の量をすくい取るのと似たやり方です。

この例では、ロボットの手を動かす原理として、空気圧を利用し、ゴムなどの樹脂の伸び縮みで開閉を制御しています。タイヤに使われるゴムなどの素材の技術を生かしており、コア技術をベースに新規事業を創出した事例としても参考になります。

ソフトロボティクスを手術ロボットに活用するインテュイティブサージカル

インテュイティブサージカルの手術ロボットに使われるフレキシブルアームのイメージ(同社の特許 JP5833204B2 の図に追記して作成)

インテュイティブサージカルの手術ロボットに使われるフレキシブルアームのイメージ(同社の特許 JP5833204B2 の図に追記して作成)


一方、「ダビンチ」などの手術ロボットのトップメーカーとして知られる米国のインテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)は、手術用のフレキシブルアームを開発しています。

上図のように、患者の腹部にあけた穴(ポート)から複数のフレキシブルアームを挿入することで手術を行います。細くて柔軟性のあるアームを使うことで、患者の体内に傷をつけず、最小限の負荷で手術を行うことが可能です。

手術には微細な制御が必要ですが、同社のアームは非常に細いワイヤーの伸縮を調節することで、安全かつ高精度な作業を可能にしています(※)。また、アームには圧力や位置を把握するためのセンサが搭載されており、正確に動作が行われていることを確認しながら作業を進めることができます。

インテュイティブサージカルは手術ロボットの市場成長をリードしており、同社の2022年度のAnnual Reportによると、すでに世界で7500台以上のダビンチが導入されています。今後も成長が続くことが予想されており、ソフトロボティクスの最先端をつくる企業としても今後が楽しみです。

※ワイヤー以外の制御方法が使われる場合もある

ソフトロボティクス技術の進化によるロボット市場の未来

以上、ソフトロボティクスに使われる技術と主な用途、精度など現状の課題と、実用化をリードするブリヂストンやインテュイティブサージカルの開発動向を解説しました。柔らかい素材やフレキシブルなセンサ、細く耐久性のあるワイヤーなど、要素技術の新たな用途としても有望な分野です。本記事が新規事業や研究開発の参考になれば幸いです。

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畑田 康司

畑田康司

TechnoProducer株式会社シニアリサーチャー
大阪大学大学院工学研究科 招へい教員
半導体装置の設備エンジニアとして台湾駐在、米国企業との共同開発などを経験した後、スタートアップでの事業開発を経て現職。個人発明家として「未解決の社会課題を解決する発明」を創出し、実用化・事業化する活動にも取り組んでおり、企業のアイデアコンテストでの受賞経験あり。

あらゆる業界の企業や新技術を徹底的に掘り下げたレポートの作成に定評があり、「テーマ別 深掘りコラム」と「イノベーション四季報」の執筆を担当。分野を問わずに使える発明塾の手法を駆使し、一例として以下のテーマで複数のレポートを出している。
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