研究開発成果の特許化に向けて、研究開発者は発明提案書を作成する必要があります。ただ、実験や報告に追われる中で発明提案書を作成するのは大変で、なかなか手が回らない方も多いようです。
そこで本記事では、効率よく特許出願を行うための発明提案書の書き方を解説します。まず、特許出願における発明提案書の役割を簡単に説明し、次に発明提案書に書くべきポイントを解説します。
そもそも、特許を出願するまでのプロセスにおいて、発明提案書の役割は何でしょうか?
一般的に、発明提案書は発明者である研究開発者から知財担当者に提出され、知財担当者は発明提案書の情報をもとに出願書類を作成し、特許庁に出願します。
よって、発明提案書の役割は「発明の内容を知財担当者に理解してもらうこと」です。一方、「発明が特許として権利化できることを特許庁に認めてもらう」のが出願書類の役割で、知財担当者はそのための情報を必要としています。
つまり、権利化のポイントとなる内容を押さえた発明提案書を書ければ、知財担当者のサポートになり、特許出願までのプロセスがスムーズに進むことになります。
特許取得につながるポイントを押さえる上で、特許となる発明の文脈を理解することが重要です。発明とは、一般的に、従来の製品や技術に存在する課題を解決する物や方法を指します。よって、特許になる発明であることを説明する際にも、解決する課題と、解決手段を明示することが求められます。
そのため、自分の研究成果を「これまで解決できてなかった~という課題を、~という方法で解決できました」という文脈で説明できれば、知財担当者がいちばん知りたいポイントを押さえることができます。
また、特許として認められる上では、これまで出された発明よりもどう優れているか、を明確にすることが求められます。特許庁による審査でも先行技術との比較が行われるので、発明提案書を作成する時点で先行技術を見つけておくと、その後の作業が楽になります。
具体的には、J-PlatpatやGoogle Patentsなどの特許調査ツールを利用し、自分の発明と近い先行特許を調べるのが有効です。例えばキーワード検索で、自分の発明の構成要素となるワードを入れて検索すると、近い先行技術を探すことができます。
自分の発明に近い先行技術が見つかったら、その発明と自分の発明の違いを解析します。
例えば樹脂材料の開発において、既存の材料が樹脂A, Bからなるのに対し、自分の開発した材料が樹脂A, B, Cからなる場合、樹脂Cが差分として抽出できます。
次に、樹脂Cがもたらす効果を明確にします。例えば、樹脂Cを加えたことで、先行技術よりも「耐水性がある」という性質を得ることができたとすると、それが効果になります。
また、例えば既存の材料に「水濡れによる劣化」という課題があれば、「水濡れによる劣化の問題を、樹脂Cを加えるという解決手段により解決する」という発明のストーリーが構築できます。ここまでポイントが整理された提案書があれば、出願書類の作成する作業もかなりスムーズになります。
ここまで、発明提案書は知財担当者に発明の内容を理解してもらう役割を持つこと、「課題と解決手段」「先行技術」「先行技術との違いが生み出す効果」などのポイントを発明提案書に記載することで、知財担当者による出願書類作成も効率よく進むことを解説しました。
また、これらのプロセスを通じて自身の研究開発成果に対する理解も深まり、次の成果につながります。ぜひ、発明提案書作成のコツを身につけ、優れた特許を次々に生み出せる研究開発者を目指して頂きたいです。
また、弊社の教材・e発明塾「発明提案書のための発明の把握法」でも、発明提案書のポイントを押さえる具体的な手法や、発明提案書をさらにブラッシュアップする方法を解説しています。教材の最後では、実際に発明提案書を作成して頂くので、学習からアウトプットまで一気に進めることができます。特許を取得し、ご自身の成果を積み上げたい研究開発者の方は是非ご活用ください。
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