入社一年目の研究者・技術者に向けた知財教育は、特許など業務で扱う知財を理解するために重要です。しかし、ひとくちに「知財」と言っても、特許だけでなく商標や意匠など様々な内容が含まれ、いっぺんに理解するのは大変です。
「研究するために入社したのに、法律の話ばかり聞かされるとウンザリしてしまう」という方の気持ちもよくわかります。そこで本記事では、知財の全体像を把握しつつ、研究者・技術者の方と最も関わりの深い「特許」について楽しみながら理解を深められる教育の進め方の提案します。
この記事の内容
最初に「そもそも知的財産とは何か?」という基礎知識をつかんでおくと、特許の特徴も理解しやすくなります。自社の製品や、スマートフォンなど一般的な製品を例に、それぞれの知的財産がどう関わっているかを簡単に説明すると、具体的なイメージが湧きやすくなります。
特許の役割は「技術的なアイデアの保護」ですが、例えば意匠権の役割である「デザインの保護」と対比すると位置づけが分かりやすくなります。「技術的アイデアの創出」は研究者・技術者の役割なので、自分たちの仕事と最も関わりの深い知財が特許であるということも伝わると、主体的に特許を考えるきっかけになると思います。
知的財産の基礎知識が理解出来たら、次に知財の戦略的な使い方の基礎を解説します。例えば特許権の取得にも、自社の独自技術を守るための権利取得(守り)と、他社が事業を進める障害となる権利取得(攻め)があることを解説します。
上記の「攻め」と「守り」の戦略を理解した上で、どんな権利を取るべきか考えてもらうと、実践的な知財戦略が身に付きます。
例えば、自社が強い分野では「自社技術を徹底的に守るために関連する特許を押さえる」、自社が弱い分野では「競合の事業に参入するために、まだ押さえられてない権利を取る」といった打ち手が考えられます。
特許のイメージが何となく分かっても、新人のうちは実際に読むことが難しいと考えがちです。そこで簡単な特許を研修で一緒に読むと、読んだことが無い状態から少しは読んだことがある状態に移行するので、心理的なハードルが下げられます。
自社の特許や、同じ業界の特許で分かりやすいものを選んで、1つ紹介するのが第一歩としては入りやすいです。
また、全文を読むのは大変なので、1つ目的を決めて取り組むのが効果的です。オススメは「その特許に書かれた発明が解く課題を見つけること」を目標に読み進める方法です。
特許になる発明はいずれも何らかの課題を解決しているので、課題を把握すると、その発明の目的がわかります。図などから読み取れる解決手段と合わせて解釈すると、その特許の構造(課題ー解決)が読みとれるようになってきます。
ここまで、研究者・技術者向けの知財教育の進め方として、まず知的財産の基礎知識と特許の役割を把握すること、次に「攻めと守りの特許」など知財の活用方法を解説し、知財戦略の基礎を身につけてもらうこと、最後に簡単な特許を一緒に読み、特許の構造をつかむことを提案しました。
もちろん特許以外の知的財産も重要ですが、研究者・技術者向けの研修では、特許にフォーカスするのは一つの良い方法だと思います。特に、特許のもつ「課題ー解決」の構造が読めるようになると、特許を書くイメージもしやすくなり、特許の出せる人材育成に向けてよいスタートを切ることができます。
弊社の教材では、知的財産の概要についてe発明塾「知的財産入門」で解説しています。知的財産の概要をつかむ教材としてご活用頂けます。
また、特許の構造を読み取り、そこから新たな特許発明を出す方法についても教材化しています。自社技術の新たな用途となる発明の創出法はe発明塾「課題解決思考(1)」で、未来に生じる課題を解決する発明の創出法はe発明塾「課題解決思考(2)」で解説しています。「特許を出してみたい!」というやる気のある若手社員の方はぜひご活用下さい。
その他、弊社の教材に関する資料は資料ダウンロードページより無料でご提供しております。ご興味のある方はぜひご参照ください。また、知財研修に関するお問合せがあれば、お問合せフォームよりご連絡ください。
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