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無線通信で世界を変えた「クアルコム」に学ぶ~「特許戦略セミナー」

無線通信で世界を変えた「クアルコム」に学ぶ~「特許戦略セミナー」定点観測とその反省

2013.6.11

クアルコムの知的財産の活用方法

本日、3年ほど定期的に開催しております「特許戦略セミナー」(弊社内通称、クアルコムセミナー)を実施しました。

多少のブラッシュアップを経ていますが、コンセプトは基本的に同じであるため、僕にとっては「特許戦略」に関する「定点観測」の場となっています。

 

クアルコムのビジネスモデルは、知れば知るほど秀逸です。

クアルコムは工場を持たず、直接製造を行わないファブレスメーカーであり、研究開発や製品企画のみに集中し、特にCDMA携帯電話に使うチップでは市場を独占しています。

 

この独占市場形成に欠かせないのが、特許です。

知的財産の活用法、とりわけ開放特許の活用や技術の標準化を行いながらも、チップのコア技術では特許を巧みに利用して独占市場を形成するオープンクローズ戦略においては、その秀逸さが際立っています。

「知財は交渉力」と、ある企業の方がおっしゃっていましたが、クアルコムはそれを「地道」かつ「徹底的」に実践している企業と言えます。

 

しかし、3年前に私がこのセミナーを始めたときは、「弊社はモノを作る企業ですので、お話いただいたような戦略は、一切関係ありません」

(クアルコムも無線技術と半導体チップを開発してます。ファブレスメーカーですが:注1)

※ 注1) この時代に、いまから敢えて自社ファブを構える可能性も、示唆されているぐらいです。むしろ、割と真面目なモノづくり企業、といえるのではないでしょうか。 (参考:Qualcomm、自社ファブを構える可能性を否定せず)

 

「弊社は、パテントトロールには、なれません」

(クアルコムは、いわるゆるパテントトロール=過激な交渉・訴訟を仕掛けてくるNPE、とは違うと思います)

 

というような反応が大半でした。

 

なぜそのような誤解を受けるのか?と疑問に感じつつも、話し方・取り上げ方の問題なのかなと、いくつか事例を追加して、これまで試行錯誤を繰り返していました。そのせいで、本来メインにしていた「発想法」に関する内容を、大幅に削除して現在に至っています。

なお、特許のネタの探し方、考え方のような特許情報探索や発案法については、別のセミナーでお話ししております。

発明塾 動画セミナーのご紹介

 

たった3年でクアルコムの特許戦略が注目を集めた時代背景とは

しかしながら、3年という月日で日本企業の知財戦略への意識は大きく変化し、最近では前述のような発言をされていた方々からも、

  • ようやく意味が理解できました
  • 一つの究極の戦略ですよね

というご連絡をいただくようになり、大変嬉しく思っています。

 

中国を代表とするアジア企業が安価で大量生産を行い、世界の工場と化してきた近年においては、もはやコストカットによる業績の上向きはあまり期待できず、研究開発を行っている企業であれば、技術を売る知財戦略は避けては通れない課題です。

いまだに日本企業では特許を「技術の保護」に使用するもの、という認識が強く、特許を使い倒す活用法の実践は行われていない印象を受けます。

特許は、持っている技術の保護だけでなく、新しい用途探索や有利な業務提携(アライアンス)の締結、マーケットの分析、さらには新しい技術の創出にまで活用することが可能であり、欧米ではそうした特許の活用を行って成功している企業が多く存在します。

日本においても特許庁ではこうした活動の支援も行われています。


知的財産権活用事例 | 経済産業省 特許庁

 

特許は分析しても意味がない?実際に成功事例を出したからこそ言えること

「特許情報分析を用いた技術マーケティング」の発表をした際も、当時の反応はあまり良いものではありませんでした。

今では当たり前のこの考え方ですが、当時は「特許情報なんて嘘ばっかり書いてあるんだから、分析しても何もわからないんじゃないの?」 というご意見を大変多く頂戴しました(その企業の方々は、特許に嘘ばっかり書いておられるのでしょうか?笑)。

 

そこで、セミナーは基本的に「私は特許を活用して、ヒアリングに行って、裏をとって、新規事業を決断しました」「特許において市場調査や用途探索を行い、数億単位の資金調達を受けた」「最終的に、技術の事業売却にも成功した」という、自身の成功事例をおりまぜてご紹介しています。

その話については、楠浦の経歴のページにて、簡単にご紹介しております。私が知財の活用法について出会い、ベンチャー企業を企業して事業を成功させた経緯もまとめておりますので、ぜひご覧ください。

 

今では、こうした手法もセミナーを色々な方が実施されるほど、ありきたりな手法/コンセプトになってきました。当時はまだまだ知財業界の新参者でしたから、業界の発展に貢献できましたこと、大変光栄に存じます(笑 (注3)。

※ 注3) 念のため申し添えておくと、この考え方(特許情報分析で、技術の用途が見つかるのではないか)自体は、古くから言われていることだと思います。
また、私の事例では、この手法を実施してみようと具体的なサジェスチョンをくれたのは、当時一緒に事業を行なっていた、非常に優秀な後輩です。私一人では、到底たどり着かなかったでしょう。

 

クアルコムの特許戦略を自社で行うために必要なこと

脱線失礼。つい熱くなりました。クアルコムの特許戦略の話に戻りましょう。

さて、今後は「ではその知財戦略を、具体的にどう実行するのか」という話題になれば良いなと、個人的には思っています。これまでに得た「気付き」を糧に、そろそろ国内の企業の意識を次のステップに移行させたいところです。

いかにして特許を活用して、事業を主導するのか、できるのか、という具体的な方法をスキルとして身につけた方が、多くの企業を救ってくれることを願っています。

「日本には技術力がある」という話をよく耳にしますが、技術力があっても、必要とする企業や人がいない、または技術が一般化されすぎてしまえば、事業の存続は危うくなります。

まずは今ある技術の用途を広げることだけでも、早急に対応する必要があります。

 

ぜひクアルコムの特許戦略についてセミナーをご活用ください

これまで、多くの方や多くの企業で行ってきた、クアルコムセミナーですが、なかなか日程が合わない、という方のために動画講座としてリリース致しました。

発明塾 動画セミナー 「優れた知財戦略で世界を変えた クアルコムに学ぶ”知財戦略” の基礎」

サンプル動画として、内容の一部をご覧いただけますので、クアルコムがなぜ成功したのか、またどうやって自社で行うか、ご興味のある方はどうぞご利用ください。

 

楠浦 拝

 

 

★関連書籍

◇本コラムの内容にご興味をお持ちいただけましたら、関連する幅広い情報を盛り込んだ弊社の新刊書籍もぜひチェックしてみてください。本書籍特設サイトはこちら

 

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