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特許出願の審査請求はどのタイミングで行ったらよい?  ~早期権利化するオプティム、審査期間を20年延ばすスリーエムの事例~

審査請求のタイミングによるメリット・デメリット、戦略はあるのか

発明を権利化したい場合、特許出願後に「出願審査請求書」を提出して審査請求を行います。審査請求ができる期間は出願後3年以内。期間中であればいつでもよくて、それぞれのタイミングで行えばOKとなっています。

この3年という期間ですが、実は少しでも早く審査請求して権利化した方がいい場合や、逆に急がなくてもいい場合があること、またはこの制度を戦略として上手に利用している企業もあるということをご存知でしょうか? 
発明の内容によってどのタイミングで行うとよいのか、企業の事例を交えてお話します。

 

アライアンスに向けて、特許を早いタイミングで権利化するオプティムの事例

まず、早く審査請求をして早期に特許の成立を目指すべき発明の例として、「仲間づくり」のために使うような発明があります。参考になるのは、AIカメラや、IoT、ビッグデータを活用したプラットフォームサービスを提供しているスタートアップのオプティム(OPTiM)ですね。

彼らの特許を見ると、コア技術のほかに例えば、天候予測のプログラムの特許や、天気に合わせた服装のコーディネート、その日のメイクを奨励するプログラムの特許など、いったいどこの会社と組んでやるつもりなんや、と思うくらい、いろいろなアプリケーションの特許を片端から出しています。多い時では、1人の発明者が1週間に10件出すような、とんでもない数の出願です。しかも、出願と同時にすべて審査請求しているので、どれも本気で特許を取ろうとしているんですよね。
まあよく見ると、確かに将来必要とされそうな、なるほど!と思うアイデアが多いことに気づかされますが、それにしてもものすごいスピード感です。

こういった発明の場合、まずは中身よりも、特許がすでにが取得できている、ということが大事です。実際に将来事業化するかどうかわからなくても、アライアンスを組む相手が決まっていなくてもいいんです。とにかく早く権利化し、その後から相手を探せばいいんですね。将来実現できそうな段階になった時に、自分たちが何かの形で市場に食い込めるようにしておくわけです。なので、すぐに権利化した方がいいのは、オプティムのようなIT企業やスタートアップなどがそうでしょう。

 

資金調達や投資家へのアピールが必要な事業も、早期権利化にメリットがある

また、起業する人やスタートアップにとっては、特許の早期審査、早期権利化は資金調達に繋がるというメリットもあります。「特許を取得しています、まだほかにも申請中です」と言えれば、本気で事業化するんだ、という投資家へのアピールができますね。

もちろん、すぐに事業化して、積極的に使用したいという発明も急ぎますよね。特許は出願と同時に審査請求をして、一発で特許査定がおりた場合でも1年近くかかる場合がありますが、もっと早く!という場合は早期審査制度(対象の条件あり)を利用すると、最短で3カ月ほどで権利化できます。これを利用するといいと思います。

 

特許の審査請求のタイミングをあえて遅らせたスリーエムの事例

反対に、自分たちの技術を守りたい、というだけであれば特に急いで審査請求する必要はありません。実験が必要な技術など、出願後でもデータを追加したり出願内容を補正できますので、そういう制度を利用して権利化を確固たるものにするということも可能です。

審査を意図的に引き延ばすことで競合他社をけん制する、という方法もあります。これを戦略として最大限に利用したのがスリーエム(3M)の光学フィルムに関する特許です。
もともとスリーエムは重要な特許に関しては、同じ発明を何回もしつこく出したりするので僕はよく動向をチェックしているのですが、光学フィルムに関するある特許において、1996年に出願後、長期にわたり分割出願を繰り返していたものがありました。気になって全部調べてみたら、現在までたった1件しか権利化できていなかったんです。1件を権利化した後も分割を繰り返しています。これは意図的だと思いました。

 

20年にわたり競合をけん制することに成功したスリーエムの戦略のすごさ

審査請求をすぐにはかけない。しかも分割してさらに出願し直すということを何回も繰り返すと、発明が永久に特許審査中になります。そうやって引き延ばして20年も審査中にしたんです。もともと特許は期限が切れてしまうのが出願してから20年です。なので権利化の有無に関わらずそこで自動的に終了です。わざとそこまで引っ張ったんですよ。

たぶん、彼らは、それらの発明が権利にならないことを知っていたと思うんです。もしくは権利化するつもりがなかった。それを分かっていて20年引き延ばしたんです。だって、本当に権利化したければ、権利範囲を狭めるなど方法はいくらでもありますからね。でもそうではなく、分割する際に言葉や表現を変えたりして、競合に「これならもしかしたら取れちゃうんじゃね?」と思わせるモヤっとした状態を永久に作り続けているんです。

競合からすると、新たな発明をしたくても、侵害しないようにめちゃくちゃ調べたりして慎重になるので、思い切って攻められないんですね。それも1件だけだったらまだいいけど、同じ分野で何十件もあるわけだから「もう、これから先も何を出してくるかわからないし、もう怖いからやめておこう」ってなるわけです。
この戦略によって、実際にこの分野ではスリーエムが圧倒的シェアを誇っているんですね。見事な戦略勝ちです。

 

20年も競合をけん制するという、なかなかえげつないやり方をする(笑)スリーエムのこの事例は稀かもしれませんが、このように出願から権利化までの制度を戦略に用いることも可能です。みなさんも自分たちの発明の特性と市場を見極め、タイミングをはかってください。

語り:楠浦崇央(弊社代表)
構成:鈴木素子

 

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