TechnoProducer株式会社CEO/発明塾塾長 の 楠浦(くすうら) です。
今回は、新規事業企画・研究開発テーマの創出、知財開発の実働支援サービス「企業内発明塾」の教材から、一部を抜粋して、皆様の日々の仕事が「劇的に変わる」お話をしましょう。
ちなみに僕は、今から紹介する「ある社長」の言葉で、仕事に対する考え方が大きく変わりました。
文字通り「雷に打たれた」感じで、しばらく唖然としていました。
30歳ぐらいのときですから、若かったんですね(笑
前職のナノテクスタートアップ創業時の話です。
CTO 兼 事業責任者時代ですね。
いくつかは、就任する前に言われたことです。
この記事の内容
「仮に、ナノインプリントの時代が来るとして、何ができれば勝てて、それにいくら必要なの?」
これは、前職のナノテクスタートアップを立ち上げてしばらくして、当時の社長から聞かれたことです。
楠浦は立ち上げ当初は技術開発担当で、その後すぐにCTOになったのですが、たしか、CTOになる前だったでしょうか。
新規事業の実績がコマツでの2年しかなかったので、当初のポジションが担当者であったのは、やむを得なかったと思います。
三井物産で数々のビッグプロジェクトを手掛け、最年少で課長になり社長の座を狙う勢いだった社長からすれば、その経歴では頼りなかったんでしょうね。
ただ、その後すぐに実力を認めていただき、抜擢されました。
とても可愛がっていただきました。
よく飲みに連れて行っていただき、月に一回は「サシ」で食事に行っていました。
その席上での、ひとことです。
要するにこういうことを考えないといけないのか、と衝撃を受けました。
ナノインプリントの時代が来るかどうか、ということは聞かれないんですよね。
それは投資家や社長が決断することだ、ということです。
お前には聞いていないと(笑
そもそも、来るか来ないか、その時点では誰にもわからない(理由は後述)から、議論しても時間の無駄だ、ということもあるようです。
この思考回路は、30そこそこの僕にはなかったので、新鮮を通り越して衝撃でしたね。
「仮に来たとして」が大事で、仮に来ても勝てないことをやっていたらダメなので、まず「仮に来たとして勝てるの?」に、端的かつ明確に答えないとダメなわけです。
その後に、それって実際に来るのか、つまり、自分たちがブレークスルーしたら飛躍的に実現性が高まるのか、を考えるんですね。
これを、「巻き取る」と言います。
自分たちがブレークスルーしたら、巻き取れて時代が加速するのか、変化が起きるのか、ということです。
基本的にスタートアップ企業のアプローチは大半がこれで、きちんと考えていればそうなるはずなんですよね。
できないから(やってないから)来ないだけ、というのが基本的な企業家・起業家・一部投資家の考え方です。
そもそも全く求められそうにない、時代精神や流れを掴んでない、というものは別なのですが、そもそもそういうネタには社長(経営者)や投資家は興味を持たない。
だから、無視されて何も聞かれません。
沈黙すら起きず、何もなかったかのように、表情を全く変えず、きれいにスルーされます(笑
この辺は、芸術的な方が多数いらっしゃいまして(笑)、いちいちピクリと反応してしまう僕は社長失格だなと思います。
当時まだ僕は、CTOとして何をすべきか全くわかっていなかったので、社長に「どうなってる」と聞かれると、「XXXなんですけど、技術的に難しいんです」みたいなことを答えていました。
でも、彼はそういうことを言われてもわからないし、たぶん、そもそも興味がないんですね。
なので、「じゃあ、いくらかかるの?」と聞かれるわけです。
つまり、「できるか、できないか」ではなく、「できるとしたら、いくらかかるのか」を答えないといけないんだな、と理解しました。
「できるか、できないか」という議論は、そもそも無駄なんですよね。
物理法則に反していない限りできるので、まぁ、思いつく大抵のことは、できるわけです。
前著「新規事業を量産する知財戦略」に出てくる後輩の言葉を借りれば、「それは楠浦さんにはできないだけで、原理的にできることは誰かが必ずやります」ということです。
はい、スミマセン(笑
そうすると、後はお金の問題になるわけですね。
時間がかかる、という人もいますが、スタートアップは「時間」も「お金」で買うので、つまるところ、原理的に可能なら、すべてが「お金」の問題になります。
わかりやすいんですよ(笑
面倒だとか、難しいとか、そういう言い訳は通用しないんですね。
理屈上できるよね、じゃあ、できるってことよね、じゃあ、いくらかかるのか教えて、という話になる。
社長と話すと、すごく議論はシンプルで、最終的に「いくらかかるか、教えてくれたら、その分の資金は調達すればいいから」という結論になりました。
まぁ、その調達も、後で僕がやるんですけどね(笑
実際、創業から4年間で5億円を2回調達しています。
(その後、10億円調達しているようですので、同じ企画で合計20億円ですね)
大口の資金調達を通じて、できることで、やる価値があるなら、お金は集まることを実感しました。
要するに「いくらかかるか」を示し、お金をもらって、後はやるだけ、にするのが仕事だ、ということです。
やるだけになったら、やるだけですからね(笑
この思考回路が、「コマツ時代」(担当者)の僕と、「ナノインプリント時代」(責任者)の僕の、決定的な違いだったんでしょうね。
これは、突き詰めれば、事業経営であればなんであっても同じだと思います。
理屈上できることは必ずできるし、自分たちがやらなければ誰かがやる。
それが、生死を決するものであれば、やるしかない。
「これをやれば勝てる」もの、とはそういうことなんですよね。
やられて負けたくなければ、先んじてやるしかない。
言葉で書くとアタリマエな気がしますが、自己責任で、会社として資金調達前提で研究開発をしながら事業をして、もがき苦しんでいた時であったからか、かなり刺さったし、雷に打たれた感がありました。
あーなるほど、そういうことかと。
先に紹介した後輩は、「理屈上できることは必ず誰かがやっている、やってないのには必ず理由がある、それが分かれば勝ち、後はとにかくやるだけですから」と言っていたのですが、社長との一連のやり取りで、その意味が良く分かったんですよね。
実際に事業を運営しながら、もがき苦しんで雷に打たれないと、「ホントのところ」はなかなか分からないのかもしれませんが、リアルなエピソードをお伝えすることで、少しでも雰囲気を感じていただければ幸いです。
こういう経験を積んで、リーダーは育っていくのだろうと、僕は考えています。
「企業内発明塾」は、その入口に過ぎないのですが、全員にスタートラインに立っていただき、また、スタートしていただくことで、「雷に打たれる」チャンスを増やし、良きリーダーを一人でも多く世に送り出せればと考えています。
あるいは、そのまた入口として「月額顧問サービス」をうまく活用いただき、まずは「スタートラインを目指して」いただければと考えています。
楠浦 拝
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