本記事では、「新規事業の支援者のあり方」について、よく寄せられる質問とその回答を紹介します。
「支援者はどこまで踏み込むべきか」「知財調査との関係は?」「提案者が暴走したらどうする?」――現場で直面しがちな疑問に対して、実践的かつリアルなヒントをまとめました。
新規事業に関わるすべての方にとって、日々の対話や判断を振り返るきっかけになれば幸いです。
1)新規事業の支援者に求められる役割に関する質問
Q. 支援者は提案者に対し、基本的に事実を伝え、判断は本人に任せるという理解でよいでしょうか?
A:
- はい、事実を示せば、基本的には本人が判断できます
- 明らかに勘違いがある場合は、反証となる事実を示した方がよい場合もありますが、これも事実の出し方の一つです
Q. 支援者の役割と、知財調査とはどのように関係しますか?
A:
- 特許情報は新規事業の支援において非常に有用です
- 知財部の方が活躍できるところですが、大事なのは「最初からリストやマップにまとめて送ろうとしない」ことです
- 携帯電話でGoogle PatentsやAIを使ってささっと調べた情報を早く提供するのが、タイムリーな情報提供のコツです。
- プロ意識のある知財部の方は最初から完成度の高い情報を出そうとしてしまいますが、まずは軽く調べて、提案者が詳しく知りたい内容は後から詳細を提供するのが良いと思います
2)新規事業の支援におけるトラブル対応に関する質問
Q. 情報を出しすぎて提案者がパンクすることはありますか?
A:
- はい、多くの方が企画の段階で情報過多におちいります
- そのため、企画書にまとめてもらい、企画書に含まれる範囲で議論を進めます
- 「本人がピンときている部分」に集中することが重要です。提案者のキャパに合わせて進めることになります。本人がピンと来てない方向に無理やり誘導しても進みません
Q. 提案者が技術的に実現不可能な方向に進もうとした場合、支援者は止めてもよいですか?
A:
- 「できない」という証拠を示し、判断は提案者本人に任せるのが良いと考えます
- 「実現が難しことを裏付ける情報」を事実として提供するのは良いと思います
- それでも本人が「自分でもできる」と言うなら、実際にやらせてみるのが良いと思います。弊社代表の楠浦も、スタートアップ在籍時に、提案者側としてそのように進めたことがあります
- 支援者が複数いて、一方が後ろ向きな場合はどうすればよいですか?
A:
- 前向きな支援者が前向きな情報をどんどん出して、引っ張れば大丈夫です
- 前向きな方向に向かうような「事実」をどんどん提供するのがポイントです。「意見」の対立にもなりませんし、パワハラなどの問題が生じるリスクも回避できます
3)新規事業のコツに関する質問
Q.どこかでピボットが必要な場合、どのようなことを意識すべき、もしくはどのような点に注目すべきでしょうか?
A:
- ピボットが必要になる場面では、基本的に「お客さんを変える」か「ソリューションを変える」かのどちらかを検討します
- 例えばコア技術を使うという縛りがある場合は、お客さんを変えるしかありません
- ピボットが必要になると、皆さん慌ててしまいますが、過去の調査の中にヒントがある場合も多いので、落ち着いて対応するのが重要です
Q.企業の強みを活かしつつ儲かる事業アイデアを出す工夫はありますか?
A:
- 強みによって解決できる課題のアイデアを出して、独占的に解決できる課題に絞り込むのがコツです
- 必要な考え方や、ロジックツリーなどのテクニックについて弊社の教材 e発明塾「課題解決思考1」で詳しく解説しております
Q.時間が無ければ原価計算は後回しにしてもよいという話をセミナーで伺ったが、原価を気にする決裁者への対応は?
A:
- そもそも、「箸にも棒にも掛からない企画」は原価の話もされないので、原価を聞かれるくらいの話になるのであれば、「もっと細かく計算するので時間をください」と言えます
- 原価など細かいところばかりを気にした結果、肝心の企画書の内容が磨かれていない、といった失敗がありがちです
- そういった失敗をするよりは、原価計算などはいったん簡易的に済ませて、企画書の内容を仕上げることに集中した方が成功につながります
4)弊社の支援者向け発明塾・企業内発明塾の進め方に関する質問
Q.企業内発明塾を開催する際に、支援者の参加は必要でしょうか?
A:
- 提案者のみで開催したケースもございますので、支援者は必須ではありません。ただ、ご参加いただいた方が望ましいとは考えております。
- より細かい仕様はお問い合わせいただけましたら、詳細が記載された提案書をご提供いたします
まとめ
以上、「新規事業の支援者のあり方」に関するQ&Aをまとめました。
支援者の役割は、提案者の判断を奪うことではなく、判断に必要な「事実」を見せることです。
新規事業の現場では、状況も人も常に変化します。その中で、支援者自身が「どうすれば提案者が自ら動けるか」を考え続けることこそが、真の伴走だと言えるでしょう。
弊社・TechnoProducer株式会社では、こうした支援者の在り方を体系的に学び、実践できるプログラム「支援者向け発明塾(新規事業プロデューサー養成講座)」を提供しています。このQ&Aは、関連するセミナーで寄せられたご質問をもとに作成しております。
現場で迷ったとき、今回のQ&Aが一つの指針となれば幸いです。