「発明塾」塾長の楠浦です。
AI時代に本当に必要なのは、AIを使うスキルではなく、AIが作った成果物を、自分で評価・検収し、意思決定者が何を基準に判断するのかを理解できる「意思決定力」です。
この意思決定力は、仕事の目的や判断基準、つまり「成果物の検収基準」を理解することで身につきます。
本記事では、その理由についてお話しします。
では、なぜ今、この意思決定力が求められているのでしょうか。
最近SNSなどでよく見かける「AIのアウトプットをそのまま持ってくる部下」について、少し掘り下げてみたいと思います。
発明塾が重視する「自分で考え、自分で決めて、自分で動く」人材育成とも、大いに関連します。
単純に僕の第一印象として、「誰かの意見を丸写しにする人は昔からいるけど、それが日常のあらゆる分野に入り込んできて、しかも間違いだらけだとすると、相当めんどくさいよね」という感じです。
後で言いますが、「仕事の検収基準」がまるでない、あるいは、甘すぎる人のアウトプットをチェックするのは、ホントにめんどくさいです(笑)。
弊社では、単に「AIがこう言ってます」ではなく、「だから自分はこうしたいのですが、これでOKですか?(OKですよね?)」までやっていただく、行動まで含む自己責任の仕組みにしているので、現時点ではそこまで面倒なことにはなっていません。
ただし今後、新たに誰かを採用する際は、要注意だなと思っています。
それでは、本題へ。
最近、経営者や管理職の方から、「部下がAIの回答を、そのまま持ってくる」というお話を、本当によく伺います。
一見きれいにまとまっていますが、内容がずれていたり、重要な論点が抜けていたりする。結局、上司がほとんど全部直すことになり、「AIを使って効率化したはずなのに、むしろ上司の仕事が増えている」という状態です。
これは、AIの使い方を知らないからではありません。
本人が、その仕事の評価基準や意思決定基準を持っていないことが、本当の原因です。
自分で意思決定力の土台となる判断基準を持っていなければ、AIの回答が正しいのか、何が足りないのか、自分では検収できません。
つまり、できない仕事をAIに代行させても、本人には成果物を検収する能力がない。
これが、AI時代に多くの職場で起きていることだと、僕は考えています。
では、AI時代に本当に身につけるべきことは何でしょうか。
僕は、
「一つ上のレイヤーから仕事を見る力」
だと思っています。
企画書を書くことが仕事ではありません。
企画書は、「意思決定」のための材料です。
市場調査も、特許調査も、報告書も同じです。
重要なのは、
「誰が、何のために、何を基準に、どのようなプロセスで判断するのか」
を理解することです。
誤解してほしくないのですが、これは
「あの部長は、フィジカルAI関連のネタが好きだから」
とか、
「社長は、海外展開が好きだから」
という話ではありません。
僕が伝えたいことは、Whatを「忖度する」話ではなく、Howを合わせる話です。
何を好むかではなく、
何を確認し、
どのリスクを重視し、
どんな順番で考え、
どこまで分かれば意思決定できるのか。
その意思決定基準とプロセスを理解することが、本当の提案力であり、仕事力です。
では、その意思決定力の土台となる判断基準は、どうすれば身につくのでしょうか。
僕は、説明だけでは身につかないと思っています。
実際に一度、「決める側」を経験することが重要であり、判断基準を身につける最も早い方法なんですよね。
例えば、AIに企画書や提案書、報告書を作らせることは簡単です。
しかし、
「この情報だけで投資判断できるか」
「何が不足しているのか」
「どんなリスクが残っているのか」
を考えるのは、人間の役割です。
AIの成果物を赤入れし、
「何を直したか」
「なぜ直したか」
を説明することで、初めて自分の判断基準が見えてきます。
僕は「仕事に対する上司の判断基準」を、「成果物の検収基準」と呼んでいます。
製造業出身ですので、自身が発注した部品や製品の「検収」を、よくやっていました。
また、製造現場から、「工程能力が足りなくて、指定の精度の部品が作れなかった」など、「検収基準を緩めてくれ」という依頼も、少なくとも数百件は受けました(笑)。
なので「検収基準」を明確にする、あるいは、その根拠を考える、という作業を、毎日やっていました。
そもそも「設計図」って、検収基準の塊なんですよね(笑)。
僕は「ミスター検収基準」(笑)ですね。
自分で自分の仕事を正しく(=上司と同様に)検収できるかどうかが、一人前になるための、第一関門だと思っています。
これができない人が多いから、「AIの結果をそのまま持ってくる」&「それに上司が納得しない」が起きるわけです。
だからまず、自分で自分の仕事を検収してみる。
ここが、第一歩です。
うまく検収作業ができなかった部分を振り返ると、
「自分には何の知識や経験が足りないのか」
が明確になります。
ここから初めて、本当の学習計画や成長計画が立てられるのです。
だから一度、仕事を依頼する側の立場で、仕事をしてみる。
これは、早ければ早いほど良いと、僕は思います。
人材育成の側面から見ると発明塾とは、
自分で課題を見つけ、自分で仮説を立て、自分で決めて行動し、成果につなげる経験を積ませることで、現場から変革を起こせる自律人材を育てる
取り組みだと、前回お話ししました。
そこで僕は、まず「企画」「提案」という作業について、「正しい検収基準」を皆さんに持っていただくために、
”「決めさせる企画書」ワークショップ”
を、お客様と一緒に開発しました。
そこで行っているのは、単に企画書の書き方を教えることではありません。
参加者自身に意思決定者の立場を体験していただき、
「なぜ、この企画では決められないのか」
「何があれば決められるのか」
を考えていただくワークです。
AI時代に求められるのは、AIより上手に文章を書く人ではありません。
「意思決定者の判断基準とプロセスを理解し、それに沿って提案を設計できる人」です。
そのような人材を育てることが、「決めさせる企画書」ワークショップの目的です。
意思決定プロセスを理解することは、その人がステップアップするための準備でもありますので、人材育成として必須の内容だと僕は考えています。
上司の仕事は、後任の育成ですよね。
「自分で考え、自分で提案し、動ける人」の育成が、上司の仕事だということです。
”「決めさせる企画書」ワークショップ”(サービスID: M091)
https://www.techno-producer.com/wp-content/themes/TechnoproducerTheme/pdf/tp-service-menu.pdf#page=40
(P40に記載があります)
ちなみに、検収基準は、目的や成果物のその後の使われ方が明確にわかっていれば、作業に精通していなくても作成でき、理解できるものです。
設計者は、設計図の部品や製品の製造に詳しくなくても「その部品や製品がどうあるべきか」知り尽くしているので、製造部から寸法精度について問い合わせが来ても、正しく答えられます。
だから、作り方(作業)は知らなくても、正しい検収基準は作れますし、持てます。
知っているに越したことはないが、それは検収基準とは関係ない、ということです。
アウトプットをどう使うか、何のためか、どんな基準を満たす必要があるか、を理解していることだけが問われる。
作業(製造)自体はAIに任せても問題なくて、それを検収できる知識があればよい、ということです。
もちろん、これは極論です。
実際には、AIに作業をさせる過程で、作業自体も学んでいく人が多いと思いますし、それが好ましいと思います。
楠浦 拝
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